マルチバース スパイダーマン from 国立魔法大学付属第一高校 作:葱山嵐
風紀委員会に入る事が決まった僕は、何とか学校を終える事が出来、今日もまたスパイダーマンとしての活動を開始した。
この夜の街をスイングで風を切り裂いてゆけるのは僕だけの特権。
街灯とビルの明りだけを頼りにパトロールをするが、今日は早めに切り上げる予定だ。
理由は昨日正体が判明した宝石、アンティナイトを取引していた奴らを調べるためだ。
アンティナイトなんていう軍事物資を裏取引していた、これは面倒事になると確定したんだけど、非常に大きな面倒事になる、ていうか既になってる気がする。
「あの時運んでいた数は6つ。
もし、何か事件を起こそうってならその数でも問題ないかもしれないけれど、大きな事件を起こそうって場合ならあの数じゃ足りないと思う。
既に何回か取引しているならまだしも・・・」
僕は大きくスイングして、どのビルよりも高く飛び上がりこの辺で一番大きいビルの上に着地をして、携帯を取り出す。
「あれが、最後の取引だとしたらちょっとまずいね」
僕はスパイディ専用の携帯でアンティナイトについて、調べなおす。
あ、よく見たらこれ宝石というより金属だった。
まぁ、そこはいいんだ。
何より重要なのは、これを使われると魔法の発動が阻害されてしまうんだよね。
つまりこれは魔法師に対して使う、或いは、これがなければいけないと思うから、取り寄せてるんだよね。
さてさて、もう少し調べてみないと何にもできないけれど、とりあえずはこれの供給源を教えてもらえるか明日にでも寿和警部に聞いてみよう。
僕はビルから飛び降りる。
30階建てビルの7階程まで落ちたら、蜘蛛糸を近くの別のビルに向けて出す。
蜘蛛糸がビルにくっつくと僕は上に引っ張られる感覚を覚えながら、それに対して振り子の様にスイングする。
歩道の近くにいた人達が僕の姿を見つけて、携帯や指を向けてくれるので僕は空中で蜘蛛糸を離して、皆にピースサインを向ける。
「さて、お家に帰りますか」
僕は蜘蛛糸を出してスイングし直す。
次の日僕は学校に事前に連絡していた通り、学校を休んで東北まで来ていた。
僕が東北に来ている理由は、今日という日付が関係している。
4月の中旬、5年前この日は僕にとってはとても重要な日だ。
この日は僕の両親の命日。
東北は僕の両親の生まれた土地で、両親は仕事の関係により東京に住み、僕を生んだ。
それからはずっと東京に住んでいたが、両親の墓は生まれ故郷である東北に埋葬する事にした。
だから、僕は毎年この日には学校を休んででも東北へ行く。
2年前には祖父達も他界してしまい、僕は天涯孤独の身になったけどいつまでもしょげてはいられなかった。
人生はいつだって、何が起きるか分からない。
僕が日比田葉茅として生きているのも、本来ならありえなかった筈なんだ。
でも、僕はこの世界で生を受けて家族を得たんだ。
この人生をちゃんと全うしないとね。
東北についた僕は軽くご飯を食べて、お花とお供え物を買って父さん達のお墓まで歩いて向かう。
本当ならキャビネットにでも乗ればいいんだけど、何となく歩いて向かってしまう。
現在の位置から歩いていけば2時間程で着く場所に墓所があり、もはやお寺のお坊さんとも顔見知りになっていて、去年も毎年お疲れ様ですと言われた。
そんな事を考えながら、僕は歩いていく。
きっかり2時間で僕は墓所につき、お坊さんに挨拶をして父さん達の所へ向かった。
「父さん、母さん、お久しぶりです。
今年は魔法科高校に入学しました」
お花とお菓子を添え、お線香をたき手を合わせて、今年の報告をする。
僕は毎日家の祭壇、といっても小さなものなんだけど、毎日報告をしているから、お墓にも報告するとなると二度手間になるんだけどね。
でも、こういった事には「やるという事」にこそ意味があるんだろうから、絶対に欠かさない。
だから、僕は返事が決して来ない父さん達に一年の報告をする。
「さてと、それじゃぁ、そろそろ行くね。
また来年来るよ、じゃあね」
僕は父さん達にお別れを告げてお墓から離れる。
あぁ、でもやっぱり、少し寂しいな。
その後、僕はお坊さんにもまた挨拶をして墓所を出た。
今僕は墓所を出て、適当な所でご飯を食べて少し街を歩いている。
ここは東京と違いとても静かで落ち着ける街だ。
いや、東京を悪く言っているわけでも、東北を田舎だと言いたいわけではないんだけどね。
ブラブラと歩いていると、この街の面白い所を発見できる。
あのお店はいつも元気だなぁとか、こっちのお店の人は声が大きいなぁとか、僕が住んでいる所が関係しているのかもしれないけれど、東京ではあまり見ない光景だ。
それ以外にも、このお店閉店しちゃったのかとか、あの店員は初めて見たなとかちょっとセンチメンタルになりそうな時もあるから、つい観察したくなってしまう。
でも、そんな街にも東京都は変わらないものがあるらしい。
路地裏に複数の男に連れてゆかれる男の子がいた。
今の時間だと学校だと思うんだけど、創立記念日とかかもしれない。
だけど、問題はそこではなく、その男の子が恐怖の表情をしていた事だ。
「・・・行ってみるかな」
僕は早歩きで、人目のない所に行き、透明になり壁を這って隠れて男の子の様子を見る。
男の子は背が低く、いかにもひ弱って感じがしてしまう。
そんな彼を壁際に追いやり、取り囲む様にいかにも不良ですって感じの男達は彼に何かを言っている。
「てめぇよぉ・・・ヘロヘロしてて目障りだから外に出んなって言ってるだろうがよぉ・・・」
「そ、そんな事言われても・・・」
男の子は不良達に言い返すが、彼らにはそれが気にくわない様で、男の子の服の襟元を掴み上げる。
「口答えしてんじゃねぇよ!
魔法が使えっかっらてよぉ!
あぁ、使ってみろよ、てめぇみてーなクズに使えんならよぉ!」
男の子は口をつぐみ今にも泣きそうになりながら耐えている。
不味いな、はやくしないと。
街路カメラの有無を確認して、僕は気づかれない様に姿を現して彼らに声をかける。
流石に、スパイディスーツは持ってきてないんだよね。
東北にスパイダーマンが現れたってなっても僕個人困るし。
「ちょっと君達、そういった事は感心しないよ」
急にぼくが声をかけたからか、彼らは僕の方に急いで振り向いて驚く。
いつの間に、とか、なんだこいつとか、見た事ねぇなとか言ってるけど、僕は続ける。
「君達、多分中学生でしょ?
そういった事はしちゃいけませんって習わない?」
「ハッ、うるせぇんだよ、クソが!
他人には関係ねぇだろうが、すっこんでろ!」
リーダーらしき人が叫んで僕に言うけど、正直怖くない。
多分あれだ。
度胸はあるけれど、ファッションヤンキーだと思う、思いたい。
ヤンキーとか見た事ないし。
「そういうわけにはいかないよ。
見たところ、一方的にイジメてる様に見えるよ」
僕がそういうと、周りの男の一人が僕に殴りかかってきた、アブナ!
もう少し話し合いの余地を持とうよ。
いや、こういった輩って話しても通じない様にも思えるけど。
「避けんな!」
「いや、避けるよ!?」
日頃悪党を殴ってる僕が言うのも、どうなんだろうとは思うけど。
それから彼らは男の子を放置して、僕に殴りかかってきた。
数は6人、今は「スパイダーマン」じゃなくて「日比田葉茅」だから蜘蛛糸は出せないんだよね。
僕は極力、スパイダーマンとしてのアクロバットな戦い方を封印して、彼らの攻撃を避ける。
彼らもしばらく蹴りや拳を突き出しすぎたせいか、疲れてきたようだ。
「クソが・・・何で当たんねぇんだよ!」
「鍛えてますから」
スパイダーマンとしての活動するなら、筋力や体力トレーニングは絶対に必要だ。
知識を増やす事も重要だけど、資本は体だからね。
給料は出ないけど・・・
そんな事を考えていると、彼らは疲れ果ててきた様なので、彼らが自滅する様に一人が攻撃してきたら、僕はクルッと半回転だけして、僕の後ろの奴に当たる様に少しだけ背中を押す。
「ウワッ!?」
「おまっ!?」
「はい、具無しサンドイッチの出来上がり」
こけた二人を見て、僕は彼らにジョークを言い、他の男にも言う。
「おかわりはいるかい?」
僕の言葉に男達は舌打ちをして、去っていった。
僕は被害を受けた男の子を立ち上がらせて、埃を払う。
「大丈夫かい?
いつもあんな感じなの?」
「え、あ、はい。
そうです、えと、助けてくれてありがとうございます」
男の子はお礼を言い、頭を下げてくる。
僕はいいよ、とだけ返す。
「何で、君はいじめられていたの?」
「それは・・・」
僕の問いに彼は答えてくれた。
簡潔に言うと、さっきの男達は魔法が使えないけど、彼は魔法が使える。
なんで、こんなひ弱な奴がって事で、彼を敵視してイジメになったらしい。
「なるほどね・・・
やり返そうとか思わなかったの?」
「僕・・・魔法は自信があるんですけど、格闘は自信がなくて・・・」
「なるほど」
確かにそういった魔法師もいるらしい。
でも、体力は日常生活においても重要だ。
彼の場合は、格闘自体にも自信がないという。
「魔法を使うと補導される可能性はあるけど、魔法で撃退しようとは思ったりし無かったの?」
僕のこの質問には意味がない。
けれど、これを聞いてみないと彼はきっとこれからもいじめられる。
おせっかいかもしれないけれど、見逃せない。
僕の問いに対して、彼は怯えながら答えた。
「・・・魔法はこの国の防衛力で、僕個人の為には・・・使えません。
だから、考えはしましたけど、やりません。
魔法は、社会と誰かの為のものだと・・・思ってます」
僕は彼の答えを聞いて、素晴らしいと思った。
彼は魔法を誰かの為に使うと決めているようだ。
自分の為に使う犯罪者や、傲慢な奴らとは違い、彼には彼の魔法を使うルールがあるようだ。
だから、僕は彼に聞いた。
強くなりたくないか、と。
彼は強い目でハイと答えた。
だから僕は彼に体力トレーニングの簡単なメニューと、いざって時に悪漢撃退方法を教えた。
簡単なカウンターパンチなんだけどね。
彼はいままでやってこなかっただけで、理論を立ててすぐに物事を覚えれる様だ。
彼はそれを振るう事を躊躇っていたけど、誰かを守るなら自分を守れるようにもならなくてはと教えた。
その後、僕と彼は連絡先を交換して友達になった。
ね、言ったとおりだろ?
この街なら面白いものを発見できるってね。
今回は日比田君オンリーです。