マルチバース スパイダーマン from 国立魔法大学付属第一高校 作:葱山嵐
先日、僕は麻薬取引をしていた犯罪者を捕まえて、彼らが取引していた物の中に混じっていた宝石の様な物を調べてみた。
実の所を言うと、僕の父はCADエンジニアだったので、家には地下室があり、研究や調べ事にもってこいなんだ。
でも、調べたくなかったかも・・・
宝石の様な物がなんであったかが分かった。
というか、試しにサイオンを流した時に、もろに僕の方に当たってしまったからそれが何であるか分かってしまった。
アンティナイト
高山型古代文明の栄えた土地だけに出てくるオーパーツ。
簡単に言ってしまうと、これにサイオンを流すと、サイオンノイズというものが流れてそのノイズに晒されていると、魔法の発動が困難になるというものだ。
その特性からアンティナイトは、超高価の軍事物質となり、一般人には入手不可能。
だけど、昨日の奴らがこれを麻薬に隠して取引していた。
はぁ、面倒事確定。
今日明日からは、これを取引している奴らについて調べないといけないなぁ・・・
僕は通学の為、キャビネットに乗り昨日のニュースを見る。
たまにスパイダーマンの活躍が新聞やニュースになるんだけど、昨日のは物が物だけにニュースになる事は無かった。
確かに、これがニュースになるとまずい、僕自身も行動が難しくなるし、相手もより慎重になり身を隠すだろうから、調査がむずかしくなる。
本当なら、ただの麻薬取引だったらまだこんな事にはならなかったんだろうけど、今回はかなり大きなものが後ろにいる気がする。
軍事物質を隠して取引するような奴らだ。
確信した、今回は面倒になるぞ。
第一高校最寄りの駅に着いた僕はキャビネットを降りて、学校へ歩く。
駅を出て歩いていると、前方に雫とほのかを除く達也達が歩いているのが見えた。
何故か、生徒会長と一緒に。
僕は達也達の所へ急ぎ足で歩き、声をかける。
「皆おはよう」
「葉茅、おはよう」
「おはようございます、葉茅君」
「葉茅君、おはよう」
達也、深雪さん、会長と順に、他の皆も挨拶を返してきて、僕は皆に一つ質問する。
「皆、いつの間に生徒会長と仲良くなったの?」
僕の問いに、達也達は一昨日が初対面なんだがな、と呟き、会長が話し始めた。
「葉茅君は今日はお昼どうする予定ですか?
達也君と深雪さんも誘っているので、ランチボックスでよければ自配機がありますので、よろしければ生徒会室でご一緒しませんか?
一度、しっかりお話したい事もありますので」
別段断る理由がなかったので、僕は承諾する。
「構いませんよ、エリカ達は?」
「アタシ達はもう断ってるわ」
どうやら、お話は既に終わりかけだったようで、結論は出ていたらしい。
会長はそれでは、お昼休みに生徒会室で待ってますね、と言い手を振りながら去っていった。
その後、昼休みまで何事もなく、授業を終えた。
いや、何事はあったかもしれない。
僕としてはそんなに大ごとではなかったんだけど。
先日のトラブルでAクラスの何人かが謹慎処分を受けて、2週間は学校にいない。
渡辺委員長にもこういう事があったら、風紀委員を呼ぶようにと言われた。
その事が噂になり、僕や雫やほのかに来る視線が少し怖いものを見る目になっている気がする。
「ふぅ、針の筵ってこういう事なのかなぁ・・・」
「本当に申し訳ありません、ほのか達にも言ったのですが、気にしないでいいの一点張り、話した後は、周りに目を向けてこっちを見るなって感じの雰囲気を出しているので、あの二人は一応大丈夫だとは思うのですが・・・」
「まぁ、今更どうこう言っても仕方ない、人の噂も七十五日と言うだろう」
「て事は、七十五日は針の筵って事なんだよね・・・」
達也が簡潔にまとめてくれたけれど、僕には七十五個の針の穴が開く事が確定した。
生徒会室前に着いた俺達は、深雪、俺、葉茅の順でならんで、深雪がドアホンを鳴らす。
ドアホン越しに入室の許可が出て、俺は扉を開ける。
扉の先には四人の女生徒が既にいた。
「いらっしゃい、さぁ、遠慮せずに入って入って」
入室した俺達は深雪が礼儀正しくまるで、一枚の絵画の様に奇麗な礼をし、俺と葉茅も続いて礼をする。
礼を終えた後、生徒会長は席に座る様に促し、それに従い生徒会長側から、生徒会室前に着いた時と、同じ順に座る。
「お話は食事をしながらしましょう。
お肉、お魚、精進とありますが、どれにしますか?」
自配機にメニューがあるのかと思いながら、俺と深雪は精進を選び、葉茅は魚を選ぶ。
どうでもいい事なのだが、葉茅は魚料理が好きなのだろうか、まぁ、聞いた所で意味はないので口に出さない。
確か、書記の中条という先輩が壁に備えられている、機械を操作し、席へ戻り、それを生徒会長が確認して、口を開く。
「入学式で紹介しましてけど、もう一度紹介させてもらいますね。
私の隣が会計の市原鈴音、通称リンちゃん」
生徒会長の紹介に、市原先輩はクールに返す。
「私の事をそう呼ぶのは、生徒会長だけです」
その言葉にも、動じず生徒会長は続けて紹介をする。
「その隣は既に、知ってますよね?
風紀委員の渡辺摩利。
通称マリリン」
「待て、その通称初めて聞いたぞ!?」
続いた紹介にはクールに返せず、渡辺委員長は動揺していた。
生徒会長は冗談冗談、ごめんねと謝っていた。
どうやら、場を和やかにしようとしたようだ。
「それから、書記の中条梓。
通称あーちゃん」
「会長!
私にも立場というものあるんですから、下級生の前で「あーちゃん」は辞めてください、本当お願いですから!」
中条先輩は懇願する様に、生徒会長に呼び方の撤回を求めていた。
隣で、葉茅が少し噴き出しているのが分かったが、口には出さない方がいいだろう。
「最後に、もう一人。
副会長の服部刑部少丞範蔵副会長」
あの人そんなに長い名前だったのか。
横で葉茅が完全に噴き出して、プルプルと震えているが触れないでおこう。
生徒会長と葉茅の目の前の中条先輩が葉茅が噴き出したのを理解していたが、そのまま続けた。
「通称はんぞーくんを加えた計4人が、今期の生徒会役員です」
「私は違うんだがな」
「フフッ、そうね。
摩利だけは別ね」
その言葉の終わりと同時に、自配機が料理を作り終えて奇麗に並んだプレートが出てきた。
だが、出てきた料理は合計6つ。
一つ足りないのでは、と思ったが、そう思っていると、渡辺委員長は自分の弁当箱を取り出した。
中条会長と、深雪と葉茅がプレートを取りに行き、深雪が俺と自分のを、中条先輩が自分のと生徒会長のを。
葉茅は中条先輩に手伝いますよと言い、自分のと市原先輩のを持って運んだ。
全員のプレートがそれぞれ自分の所に並び終えて、昼食が始まった。
生徒会室での昼食が始まり、僕達は軽い雑談から親睦を深める事にした。
「そのお弁当は、渡辺先輩がご自身でお作りになられたのですか?」
深雪さんの何気ない質問に、渡辺委員長はニヤッとして答える。
「そうだが、意外かい?」
何というか、口調も仕草も色々と男らしいというか、さまになると言えばいいのか。
もしかしたら、僕なんかよりも男らしいのでは、と思えてしまう。
「いえ、少しも」
達也が深雪さんの代わりに返答して、渡辺委員長の指を見る。
僕も達也の視線の先を見ると、あぁ、なるほどと理解した。
渡辺委員長の指先には3枚の絆創膏が貼ってあり、それが何の怪我なのかを物語っている。
それを恥ずかしいと思ったのか、渡辺委員長は指を隠す。
その仕草についつい、クツクツと笑い声が漏れてしまう。
渡辺委員長に少し、睨まれるが何とも乙女らしいなと思い、僕は息を整える。
「お兄様、私達も明日からお弁当に致しましょうか」
「それはとても魅力的な提案だけど、まずは食べる場所を探さないとね」
深雪さんと達也の会話を見ていると、何故だか。
「兄弟というより、寧ろ、恋人同士の会話ですね」
市原先輩が僕の言いたい事を代弁してくれた。
だけど、それに対する達也の言葉は。
「そうですか?
まぁ、確かに考えた事はありますね。
血の繋がりがなければ、是非とも恋人にしたいと」
「ブッフォォ!」
僕は遂に耐え切れず、咄嗟に右を向いて吹いてしまった。
あぁ、やっちゃったよ、汚い。
でも、何も口に含んでなくてよかった。
ただでさえ、この前は毒蜘蛛扱いされたんだから、毒と糸以外の物を吐き出すつもりはないから、本当によかった。
「・・・葉茅、当然冗談だからな?」
達也と他の人の視線が痛いけど、僕は息を整えて返す。
「わ、わかってるよ!
達也って本当に冗談なのか、本音なのか分かりづらい事言うよね・・・」
僕の言葉に皆少し、笑いながら話を戻して、会長が話をする。
「さて、そろそろ本題に入りましょう」
会長が一口お茶を飲み、口を開く。
「まず、当校は生徒の自治を重視しており、生徒会には学内で大きな権限が与えられています」
これは公立高校では一般的ですねと言い、続ける。
「登校の生徒会は伝統的に生徒会長に権限が集められていて、生徒会長は選挙で選ばれます」
それからは長く、生徒会のシステムを説明される。
風紀委員長には生徒会長と同等の権限があるらしい。
そして話の結論は、深雪さんに生徒会に入って欲しいらしい。
「深雪さん、葉茅君、私は貴方達に生徒会に入ってくださる事を希望します。
葉茅君は、既に断りの答えをいただきましたが、もしよろしければ再考していただけたらと思っております。
引き受けていただませんか?」
あれ?
もしかして僕まだ諦められてない感じかな。
でも、流石に今の時点でも一日のスケジュールがパンパンすぎる。
「会長は兄の成績をご存知でしょうか?」
ん?
達也の成績?
深雪さんの発言に達也は少し驚いた様に深雪さんを見る。
「えぇ、知っています。
正直、達也君の回答を見せてもらった時は、私は少し自信を無くしましたね」
「成績優秀者、有能な人材を生徒会に迎え入れるのならば、私よりも兄の方が相応しいと思います!」
「み、深雪」
深雪さんの熱弁に拍車がかかるが、それに市原先輩がストップをかける。
「それは不可能です。
生徒会の役員は第一科の生徒から選ばれます、これは規則であり、この規則を覆すには、全生徒の3分の2以上の生徒からの投票が必要になります。
現状の第一科と第二科の生徒数からすれば、事実上不可能です」
市原先輩の説明を聞いて、深雪さんは落ち着きを取り戻したのか、一つ呼吸する。
「申し訳ありませんでした、分を弁えぬ差し出口、お許しください・・・」
深雪さんの謝罪を咎める人はいない。
七草会長はその後、深雪さんを生徒会に迎え入れた。
「さて、葉茅君。
先ほども言いました通り、既に答えは受け取ってはいますが、もしよろしければ再考してはいただけませんか?」
七草会長はやはり諦めてなかった。
う~ん・・・生徒会のお仕事は確かに楽しそうだ。
でも、楽しそうという理由で引き受けるのも気が引けるし、生憎と、僕は役員とかそういった事には抵抗がある。
仮に、引き受けたとしても、スケジュールを見直さなきゃいけない。
いや、それとこれは関係ないな、僕自身の問題だし。
「出来れば、入試1位の人には受けて欲しいのです。
返答は明日の放課後まで待たせてもらいますから、再考願います」
困った、困っている人が目の前にいるのだが、正直、日比田葉茅としては非常に困る。
「入試1位?」
達也がふと口に出した言葉が僕に向いた。
「あぁ、うん。
実を言うと、僕が入試1位だったらしいんだよね」
「え、それでは、どうして、総代の挨拶をしなかったのですか?」
まぁ、これは当然の疑問だよね、知ってる人は何も言わないけれど、知らない人は、目線で教えてと訴えている。
僕はそれから生徒会のへ答えはまた後日言うと伝えて、総代を断った理由を話した。
今回から、「side」表記を抜きました。
もし、わかりにくければ元に戻すか、もう少し表現方法を考えます。