マルチバース スパイダーマン from 国立魔法大学付属第一高校 作:葱山嵐
僕が総代を断った理由は、非常に単純明快だった。
新入生総代の人が生徒会に入る事はメールで事細かに説明されていて、入って欲しいという旨は伝えられていた。
それに対して僕は受けるか受けないかを考えたけど、これから高校生として新しいスケジュールを作らなければならない。
でも、そこに生徒会役員としてもスケジュールが入ってしまえば、今まで続けていた事にどれだけ時間を裂けれるか分からない。
そういった、理由から僕は総代の地位を辞退する旨を伝えた。
それに、僕はそういった役員とかみたいな固い事は少し苦手だ。
中学生の時に役員になった事があったけど、とても息苦しかったし、僕はあんまり役に立たなかった。
だから、僕は生徒会とか、クラスの委員とかそういった事にはならない様にしていた。
「・・・と言うわけで、僕は生徒会とか、放課後遅くまで残る事が多い仕事は出来ないんです」
僕は出来るだけまとめて、簡潔に総代と生徒会に入るのを断った理由を話した。
一応は皆分かってくれたようだが、七草会長の顔には残念と大きく書いてある。
その隣で渡辺委員長がニヤッとしていた。
「それなら、日比田君。
風紀委員はどうかな?」
「は、風紀委員ですか?」
渡辺委員長は僕を風紀委員に誘い始めた。
「そう、風紀委員だ。
風紀委員は校内の風紀を維持する委員だ。
これ自体は普通科の学校と同じだが、魔法科高校の場合は魔法の不適正使用や、魔法を使用した騒乱行為等の取り締まりを行う委員会だ。
それ以外だと、イベントが開催される際の警護等もあたし達の仕事になる」
風紀委員の仕事内容を簡単に説明した渡辺委員長は一度、お茶を飲み続いて話す。
「違反者がいた場合、その者を懲罰委員会という別の委員会に引き渡し、罰則の内容の決定を生徒会長と共に、懲罰委員会に出席して意見を言う。
他には、風紀委員での書類の作成とかだな」
これが風紀委員の仕事だ、と説明し終え渡辺委員長はこちらを見ながら言う。
「それと、スケジュールの事を気にしていたようだが、風紀委員は当番の者がその日の学内の見回りを行い、その日の活動報告を書く。
・・・活動報告書はフォーマットが作成されているので、そんなに時間はかからないだろう」
どうだい、やってみないか?という言葉で締めくくり、渡辺委員長は話し終える。
「ちょっと、摩利。
言い方が悪いのだけれど、先に声をかけたのは生徒会よ」
七草会長がまるでハムスターの様に、頬を膨らませながら渡辺委員長にブーブーと文句を言う。
それに対して渡辺委員長は、スマンと謝りながら口を開く。
「しかし、彼ほどの成績の持ち主だ。
もう少ししたら、クラブ勧誘の時期になる。
スケジュールが理由で生徒会に入らないとなると、恐らくクラブにも入らないんじゃいか?」
「はい、クラブ活動にも入る予定はないです」
「となると、是が非でも入れようとする輩が出てくる可能性がある」
ん?
どういう事だろう、七草会長もそうなのよね、とため息つく。
「実はこの学校のクラブ勧誘期間は学校自体にも意味がある事なんだ」
意味のある事、なんだろう?
と、丁度その時、昼休み終了の予鈴がなり話の続きは、放課後時間をくれないかい、と聞かれて、話を聞くだけなら時間はかからないだろうと、思い承諾して僕達は生徒会室を後にした。
授業の時間になり、Aクラスは魔法の実習授業を受けている。
先生の監督の下で魔法を発動して魔法の発動速度を計測。
全員がそれを終えた後、先生からアドバイスを受けてそれを踏まえてもう一度やるといった反復をして、魔法をより速く発動させる事を目的とした授業だ。
現代の魔法は速さを重視していて、より速く事象を改変。
言ってしまえば、敵を速く倒す為にこれを強化する。
「次、司波深雪」
「はい」
よって、この授業は現時点で速く魔法を発動できる人からすれば、より苦しい授業に思えるかもしれない。
短距離走で自分のタイムを縮めようとすれば、相当の修練が必要になる。
スタミナを増やしたり、足の運び方を考えたり、意識する事を忘れないようにしたり、何より本番で練習の成果を出せるようにしないといけないから、正しく、血の滲む様な努力が必要になる。
深雪さんが魔法を発動させ、周りを驚かせている。
彼女の魔法発動速度はとても速い。
もしかしたら、僕のウェブより速いんじゃないかな?
周りがすごいと褒め称えている中、ほのか、その次に雫の番になる。
二人の成績も周りを驚かせる結果となった。
「次、日比田葉茅」
「あ、はい」
おっと、そんな事を考えている間に僕の番になった。
だけど、正直こういった場は不安になる。
入試の日は正直言うと、かなり機嫌が良かった。
あと、運も。
入試の日に僕はいつも通りに起きたんだけど、なんとなく星座占いを見た。
6月6日、つまりは双子座なわけなんだけど、その日の双子座は1位でいい日になると言われた。
気休めとはいえ気分よく入試会場に向かった時、飲み物を自動販売機で買ったら、もう一本当たるという事が起きた。
それだけでなく、何となくコンビニに言ったらくじ引きがやっていて、そのくじ引きを引いたら、一等賞が当たった。
流石に僕も楽観的には考えられなくなり、もしかして入試落とすのではと考えてしまった。
だけど、そんな事は無く入試会場でも精神面も良好、その日は事件もなく、問題もなく、入試を終える事が出来た。
言ってしまえば、運が良かっただけなのかもしれない。
まぁ、帰りに盛大にすっころんだけど・・・
そんな事を思い出しながら、魔法を発動させる。
ランキングで言うと、2位でした。
例のごとく周りにも驚かれたけど、ほのか達のとは違い何であいつが、って感じの目だったのが非常に心苦しい・・・
放課後になり、あたしは風紀委員室に日比田君を連れてきた。
昼休みは時間がなくて話せなかったが、彼がどの委員やクラブ活動にも入らないとなるとどうなるかを説明しなければならないからだ。
あたし達は風紀委員室に入る。
「さ、入ってくれ少しばかり散らかっているが、適当に掛けてくれ」
「うわぁ・・・・・・・・・」
「おい、なんだその嫌そうな顔は」
日比田君は如何にも、ナニコレといった感じの顔をして、それに気づいたのかすぐに口を隠した。
あたしはコホンと咳を彼に言う。
「風紀委員は男所帯でね、整理整頓をしろと言っているのだが・・・」
「い、いえ、こちらこそすいません。
ていうか、僕も人の事言えませんし・・・」
個人的に気になる事を彼は言い、謝ってきたがこちらに非があるのだから、謝る必要はないと言い、本題に入る。
「さて、本題に入ろうか。
クラブ活動の勧誘が学校に意味のある、からだったね」
「は、はい、そこからでした」
あたしは近くに置いていた風紀委員用のタブレットを使いながら、説明をする。
「まず、君は九校戦というものを知っているかい?
毎年、テレビ中継もされている、野球でいう所の甲子園みたいなものだ」
「はい、僕は見ていませんけど、名前は聞いた事あります」
「なら、話が早いな」
彼に質問をしながら、九校戦のサイトを見せる。
「まず、九校戦は全国の魔法科高校の生徒が修練の成果を見せる親善大会。
正式名称は全国魔法科高校親善魔法競技大会、これの通称が九校戦だ。
九校戦で活躍した生徒は将来的に軍に進む事が多い。
魔法科高校も言っては何だが、将来のこの国の防衛力を強化する為に作られた国立機関だ。
ここまではいいか?」
あたしは少し区切り理解しているかを聞くと、日比田君ははい、と短く返し説明を続ける。
「九校戦での成績がそれぞれの学校の評価にも繋がっている事から、教員もそれぞれの授業や受け持つ魔法系クラブ活動において、必死になるわけだ。
そこで問題になるのが、クラブ活動の勧誘期間というわけだ。
これが何故問題になるのか、それはその期間中に皆必死になって新入部員を入れようとするからなんだ・・・」
「え、それ自体は問題ないのでは?」
日比田君はそう返すが、一番重要なのはそこではないと返す。
「このクラブ活動勧誘期間中は、魔法競技系クラブはデモンストレーションの為にCADの所持を許されている」
「・・・・・・・・・あ」
「気が付いたかね」
彼はどうやら頭の回転が速いようで、勧誘期間の問題ついて理解したようだ。
「魔法の不正使用が行われる、ですか?」
「正解だ。
特に、最近は血の気の多い者が多くてね。
この期間中は風紀委員の仕事が増える」
私はため息をつきながら答えて、続きを言う。
「お気づきの通り、魔法の不適正使用。
より正確に言うならば、クラブ間での新入生争奪戦の為に魔法が不正に使われてしまう。
あたし達も口を酸っぱくして言っているのだがね・・・」
「心中お察しします・・・」
同情されてしまったが、あたしは話を続ける。
「本来であれば、それならばCADを持たせなければいい、となるのだが、学校側も有力な生徒は部活動に入れて、九校戦で良い成績を残したいから、黙認状態になってしまっている。
ここでさらに問題が発生する」
「うげぇ・・・」
彼はまたあからさまに嫌な顔をする。
「教師陣が自分の受け持つクラブに入試の成績をリークして、この生徒を絶対にクラブに入れろとするんだ。
これは、まだ確証を得ていないのだがね」
「・・・へ?」
彼は間抜けな顔をして、考え始めた。
そう、これは彼自身にかかわる問題なのだ。
彼がどのクラブ活動、委員会にも入らないとなると、クラブ活動の人間は彼は放課後は暇になるだろうと、勝手に考えたりして、自分のクラブに入れてそのクラブを強化しようとする。
総代でなかったあたしも、風紀委員にならなければ1年の時はこの洗礼を受ける事になっていたらしい。
そして、今年の入試成績1位の彼。
こんな逸材をクラブ活動の奴らがみすみす逃がすとは思えない。
「マジですか?」
「マジだ」
「・・・はぁ~・・・」
彼は見るからにうなだれてしまったがこれは事実なので仕方ない。
「もう分かっただろう。
君が総代を断っても、一度記録された成績は変わらないからね。
確実に君にも勧誘の波がやってくる、例え君が断っても、一度だけでいいからとか、体験だけでいいからとか、言ってきてな」
「そこで、委員会に所属って事ですか・・・」
「そういう事だ。
無論これは期間さえ過ぎてしまえば問題ないかもしれないが、勧誘期間後に個人が隠れて勧誘するという手もあるので、この問題はしばらくついてくるだろう。
だが、事前に委員会に入ってしまえば、委員会に入っているからという理由が出来る。
風紀委員なら当番制なので、残らなければいけない日もあるが、毎日残るというわけではない。
どうかな、答えは、勧誘期間前までに聞かせてくれればありがたいのだが」
彼は少し考えこみ、すいませんと一言いい、携帯を取り出した。
恐らく、スケジュールの確認だろう。
非常に細かい性格なのかもしれないな。
その後、携帯をしまって一つため息をつきながら彼は口を開く。
「渡辺委員長、風紀委員の件。
よろしくお願いします」
風紀委員ゲット。
風紀委員になってしまいました。