卑劣様IN宮藤芳佳   作:古古兄(旧:フルフルニー)

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短め申し訳なく。どうしても最後の一文で締めたかったのです。
感想頂きありがとうございます。大変励みになります。



第五話

忍という存在は魔力に似た力『チャクラ』を使うことで

ウィッチの固有魔法に似た現象を発動させることが出来る。

発動された術は様々な結果を生み出すが、その事象には性質が伴う。

 

即ち、火・水・雷・土・風の五種類である。

これらは五大性質変化と呼ばれ、

基本的に忍はこれらの内先天的に合う属性を主に使いこなす。

 

より強力な忍になると複数の性質変化を用いることが出来るが、

扉間は五大全てに通じる忍だった。

 

その五大性質の中、扉間が好んで使用する術が水遁である。

文字通り水を用いる水遁は、水場であれば無類の強さを誇る。

奇しくも現在いる場所は空母の上であり、四方は見渡す限りの大海原。

つまり、水遁を最大限に発揮できる場所である。

 

 

―――― 水遁・水陣壁。

 

 

両手で組まれた印により、その術は発動した。

空母赤城を守るように海水が間欠泉のように噴出する。

ネウロイから放たれたレーザーは海水の壁に激突するが、

赤城に損傷を与えるまでには至らない。

 

『い、今の扉間さんが!?』

 

「ワシの術だ。お前に忍術を見せてやるのはこれが初めてだったな」

 

宮藤が驚愕の声をあげると同時、再度ネウロイの砲撃が迫る。

しかし破ろうにも、盾に使うのは所詮海水である。

いくら閃光を放とうとも、無尽蔵に競り上がる水の壁を超えることはできない。

 

「何度放とうと無駄よ、何せ海水は無限にある。

水上で水遁使いを相手取るのは下策の中の下策だ」

 

迫り上がる海水の壁に、いつも通りの静かな口調。

三度閃光が放たれる。数は増え、計四度の赤い閃光。

しかし、それでも水の壁を穿つには至らない。

 

甲高い音が、ネウロイから響く。

それは感情があるのならば憤怒の表れなのだろう。

ついには暴風雨のように乱射されたレーザーを、扉間は事も無げに防いでいく。

 

「他里のワシがあえて言おう。地の利を得た霧隠れの十八番、そう易々と破れると思うな」

 

上空を飛ぶ坂本はこちらが安全であると悟ったのか、

空母赤城へ向かう進路を変更し、弧を描いてネウロイの攻撃へ転じた。

 

坂本の動きが明らかに変わった。

先ほどまでの赤城を守る動きから、敵を倒す攻撃の姿勢に。

 

閃光を避け、あるいはシールドで防ぎながら

ネウロイの外殻を破壊していく。

 

―――判断は的確かつ迅速。

成る程、扶桑有数の空戦ウィッチに偽り無しか。

 

しかし、それでも倒すには至らない。

破壊された黒色の外殻は、時間と共に修復されていく。

顰め面を崩さずに舌打ちを一つ。

 

――――止めを刺すには手数が足らんか。……それにしても厄介だな。

地に足を着けぬ敵というのは。

 

世界が違えば戦いも違う。

当然ながらと理解していた扉間だったが、実際に目の当たりにすると非常に厄介だった。

長距離攻撃は嘗ても経験していたが、雲の上程の高さからの長距離は

さすがの扉間も過去経験が無い。

 

忍が相手ならば規格は違えど、相手は人間。

どれほど巨大な口寄せを使おうとも、距離を詰める事は難しいことではなかった。

 

――― 海水を空中に固定して進むか? いや、それでは時間が掛かりすぎるか。

 

戦術を練る思考の中、ネウロイの砲撃が突然止んだ。

否、他の船へと狙いを変えたのだ。

赤い閃光が護衛艦に直撃し、爆音と共に煙を上げる。

 

「奴め。この船を破壊できんと踏んで他を狙い始めたか。

 ……フン。考える知性はあると見える」

 

『ど、どうするの、扉間さん!』

 

「現状、問題点は3つだ。

 一つ、敵は高所かつ遠方にいる為有効な攻撃手段が今のワシには無い。

 二つ、この船の軍人たちを逃がそうにも水陣壁で壁が出来ている為、奴らの逃げ場がない。

 三つ、この船は守れているが他の船までは守りきれん。

これら三つの共通点として、解決するには水陣壁を解く必要がある」

 

『それで、対策は!?』

 

「消極的な手段になるが、このまま赤城だけを守りきることだ。

こちらに気を遣わないならば坂本美緒はやられはせん。

ブリタニアにも既に襲撃報告は出ているから、援軍が来るまでもう少しだろう」

 

すなわち、持久戦。

味方救援まで水陣壁を張り続け、空母赤城を守り抜く事である。

扉間は自分の術と相手の攻撃手段から、守り切ることは十分可能だと判断する。

……だが。

 

『でも、それじゃあっ』

 

「ああ。赤城以外の船を見捨てることになる。故にこの手は使えん。

いくら美緒が強くとも、攻撃手段を持つウィッチが守りに回っては返って不利になる。

状況を打開するには此方から攻めねばならん」

 

攻勢へ転じる手段に扉間は心当たりがあった。

しかしそれは水陣壁を解く事であり、空母赤城の軍人たちを守る選択を捨てる事になる。

自分一人であったなら扉間は迷う事なく選択していた外的排除優先という判断を、

今の扉間は取らなかった。

 

―――何故ならば、それは最悪の選択だからだ。

他でもない自分の宿主にとって。

今生、自分が現世にいる間は宮藤の意思を第一とする。

それが扉間が己に課した制約だった。

 

故に扉間は手段を模索する。

軍人たちの命を優先に手段を取るにはどうするべきかと。

 

宮藤は考える。自分に何ができるか。何をするべきなのか。

あたりを見渡し、ふと昇降口の穴を覗きこんだ。

 

『あれは……ストライカーユニット?』

 

そこには先程見た、機械が一つ配置されていた。

恐らく宮藤用に用意されたものだろう。

 

思い浮かぶのは父の顔。

優しく大きな手のひらは、日向を浴びる樹木のよう。

……考える時間は1分にも満たなかった。

 

『……扉間さん。もしネウロイに攻撃を仕掛けるウィッチが増えたら

攻撃が船に向かう事はない筈だよね?』

 

その言葉の真意を、聴き違える扉間ではない。

 

「飛ぶ気か、芳佳よ」

 

声は冷静そのものだった。

いつも通りの扉間の声。

焦りも驚きもなく、淡々と確認事項を述べる声。

それが返って宮藤の心に安心感を生み出していた。

 

「理解しているな。飛ぶということは『戦う』ということだ。

お前の大嫌いな『戦争』に身を投じるということだ」

 

『戦うことは嫌ですよ。

だって死ぬかもしれないし、死ななくても怪我をするかもしれない

……けれど、何もしなかったら誰かが死んじゃうかもしれない。

ううん。こうしている間にも皆が傷ついている』

 

握る拳に力が入る。

そうして少女は、男に決意を伝える。

それはきっと、悲しい決意なのだろう。

 

『覚悟なら部屋を出るときにもう決めたの。

扉間さん、私戦うよ。私にしか出来ないことをする為に』

 

声に震えはない。成すことを決めた者の声と、決意を秘めた瞳。

彼女の父が出ていくときに宿していた瞳だ。

それが少し、扉間の感情を揺さぶる。

 

「私にできること、か」

 

かつて宮藤博士が贈った言葉。

宮藤博士が家を出る最後の瞬間を、扉間も居合わせていた。

泣きじゃくる宮藤を困った顔で宥める姿は戦いとは程遠い、

戦争とは無縁であろう男だった。

 

力が強いわけでもなく特別な力を持っているわけでもなかった。

しかし、人の為に何かを成す意思を持った父親だった。

扉間をして尊敬に値すると言える男だった。

 

―――やはり血は争えんな。芳佳よ。

 

扉間は甲板から中央エレベーターの穴から飛び降りる。

高さは優に五メートル以上。しかし難なく着地し、立てかけられた銃を背負い

設置されているストライカーユニットに両足を通す。

 

そうして身体の操作を宮藤に返した。

ストライカーユニットを履いた宮藤の頭に動物の耳が、お尻に尾が出現する。

扉間には現れない身体変化。

ウィッチが力を使うときに起きる現象だ。

 

瞳には決意。

戦うと決めた意思がある。

 

甲板へ上がり、ストライカーユニットに魔力を回す。

宮藤を中心に出現したサークルは、赤城の幅を覆う程巨大である。

それは保有魔力に比例する。

ウィッチとしての宮藤の才能を表すものであり、坂本の見立ては間違っていなかったのだ。

 

『芳佳。ワシはネウロイとの戦いは素人だ。

奴の攻撃パターンは今ので解ったが、それ以外は何も知らん。

まずは先に飛んだ美緒と合流しろ。奴はワシとは違い玄人だ』

 

「はいっ」

 

『合流したら奴に指示を仰げ。『何をすれば良いのか』。

 出来ることをやり遂げ、出来ないことはするな』

 

「はい!」

 

『よし、行け!』

 

「行きます!」

 

水の壁が消えると同時、大空を駆るウィッチが征く。

内には決意。守護するは2代目火影。

 

―――宮藤芳佳、初陣である。

 

 

 




卑劣様が表に出ているときもCVは同じく福圓さんの設定です。
……なのですが、どうしても堀内さんがでてきてしまう。


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