卑劣様IN宮藤芳佳   作:古古兄(旧:フルフルニー)

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マイペース投稿。


第六話

ストライカーユニットに魔力を回し、宮藤は大空へ飛び立った。

風を受け、重力に逆らいながら自由に触れる感動がここには在り、

その感動を、宮藤はあますことなく同居人に伝えた。

 

「と、飛べた! 扉間さん、私飛べたよ!」

 

思わず後ろを振り返ってしまうのは内から聴こえる扉間の声が、

後ろから聴こえるように感じるからなのだろう。

 

『馬鹿者、前だ! 前を見ろ!』

 

へ、と気の抜けた声を出した次の瞬間、

ネウロイから多数の光線が宮藤に向かって放たれていた。

宮藤はとっさに正面へ両手を突き出し、シールドを発生させる。

 

青白く光る円のサークルは通常のウィッチと比べて二回り以上に巨大だ。

それは宮藤の潜在能力を表していた。

 

「うひゃぁ!」

 

『自分が飛べば的になるとお前自身が言ったであろうが!

まったく、ぶっつけ本番で大成功したことを誉めてやろうと思えばこれだ』

 

宮藤と共に初めて出る戦場で、まさか最初に肝を冷やす理由が

ネウロイからの攻撃ではなく宮藤からとは思わなかった。

扉間は盛大にため息を吐き、しかし内心で宮藤の成果に笑みを浮かべる。

 

―――訓練も無しに良くやるものよ。お陰で練ったチャクラが無駄になったわ。

 

もし宮藤が飛ぶことができず海に落ちるようなら、扉間は水遁でフォローをするつもりだった。

魔力を動力にストライカーユニットのプロペラは力強く回転し、身体を上へ上へと押し上げていく。

 

『まずはストライカーユニットに魔力を回す事に集中するのだ。

敵の攻撃が飛んでくる瞬間だけシールドを張れば良い』

 

「そ、そんな器用な事っ」

 

『奴の攻撃には予備動作として身体の赤いラインが光る。

それをワシが見て攻撃が来る前にお前に伝える。それならばできるだろう?』

 

「それなら……うん、それなら多分大丈夫!」

 

シールドを解除し宮藤は坂本と合流する為に魔力の出力をさらに上げた。

空でネウロイに切りかかっていた坂本もこちらの動きに気が付き宮藤へ近づこうとするが、

妨害せんとネウロイの身体が淡く光り始める。

 

『来るぞ、芳佳!』

 

「っ!」

 

扉間の声から宮藤がシールドを張るまで1秒も要らなかった。

赤く細い幾つもの閃光が、青く巨大な円を撃ち抜くために殺到する。

その手数のあまりの多さに宮藤はたたらを踏むように押し下げられた。

……しかし、シールドを貫くには至らない。

 

『己の魔力に自信を持て!

海水程度で防げたのだ、お前のシールドのほうが硬い!

ならば、防げぬはずがない!』

 

「はい!」

 

扉間の激励に力が籠る。

事実を並べただけの言葉だが、それは宮藤にとって何よりも勇気が出る言葉だ。

希望的や楽観的とは無縁である扉間であることを宮藤は知っている。

 

―――なら、絶対に防げる! 怖いけれど、逃げる必要なんかない!

 

宮藤がネウロイの攻撃を凌ぎ切る姿を、坂本は見た。

凄まじい。坂本の感想はそれに尽きる。

訓練も無しにストライカーユニットで空を飛ぶなど前代未聞。

あの強大な魔力だ。固有魔法を抜いても今後が十分に期待できる。

 

しかし坂本は気になることがあった。

先ほどの水を操る魔法は十中八九、宮藤の魔法だろう。

 

―――あいつの魔法は治癒魔法と身体強化だったはずだが……

 

不思議な奴だ、と坂本は笑みを浮かべる。

扉間が危惧していた宮藤への嫌悪感を、坂本は全く有していなかった。

たとえ能力が不明でもウィッチとして将来有望。

性格は天真爛漫で料理炊事洗濯を好み、しかし自分の意志を確りと持つ。

坂本が気に入らないはずがなく、むしろ宮藤が周囲から嫌悪の対象になるようならば

自ら盾になる事も厭わないつもりでいた。

 

……そして、それを見越して扉間が本格的に行動をするようになったことを、坂本は知らない。

言わぬが花だろう。

 

「坂本さん、私も手伝います!」

 

合流するなり告げた宮藤の言葉に、坂本はきょとん、と一瞬目を丸くした。

先ほどまで水の壁で空母一隻を守り抜いていた者には見えない。

この、あどけなさの残る少女にいったいどれだけの秘密が隠されているのか。

 

「先ほどの水の壁はお前の能力か?」

 

「へ? あ、えっと……」

 

「いや、今は良い。先にあいつを片付けるぞ」

 

坂本は刀の切っ先をネウロイに向けた。

ネウロイはエイのような形をしており、切っ先は尾の付け根当たりを指している。

宮藤は扉間の術を追及されなかったことに、ほっと胸を撫でおろした。

だが自分は今戦場にいることを思い出し、真剣に坂本の言葉に耳を傾ける。

 

「先ほどから見ていたと思うが、ネウロイを倒すには外殻をいくら攻撃しようが無駄だ。

コアがある限り外殻は直ぐに修復されてしまう。……逆に言えば、コアを破壊すれば

どの様な巨大なネウロイでも一撃で破壊することができる」

 

ウィッチがロッテ……二人組を組む時に使う戦法はいくつかある。

宮藤が初の実戦だという事を考慮し、坂本が選んだ戦法は一人が囮に、

もう一人が止めを刺すオーソドックスなものだった。

自分が囮になることで、宮藤の負担が少なくすることが理由である。

 

彼女が身を呈しウィッチとして空に上がったため、軍艦を狙ったネウロイの攻撃は

完全に停止し、坂本と宮藤を狙った攻撃が主体になっていた。

 

坂本が所属する第501統合戦闘航空団はブリタニアの最前線だ。

既に援軍要請も出しているため、到着までもう少しのはずと坂本は踏んでいた。

そこまで持ちこたえられるかがカギだったが、それも宮藤がいるお陰でかなり余裕が持てる。

 

だが、どちらかといえば好戦的な部類に入る坂本である。

攻勢を続けることで軍艦から遠ざける狙いも もちろんあったが、

可能であるならばここでネウロイを破壊したいとも考えていた。

 

「了解です。……あ、坂本さんこれ、予備の銃です」

 

「ありがとう。だが私にはコレがある。銃はお前が使え」

 

既に弾切れを起こしていて銃は無いが、坂本は戦闘継続が可能だった。

それは坂本の基本戦闘スタイルが銃と刀を使用した独特な形だからである。

 

「では、行くぞ!」

 

「はい!」

 

ストライカーユニットへ通った魔力が激しくうねり、坂本はネウロイを肉薄する。

閃光を避け、あるいは防ぐその姿は空戦ウィッチの理想の動きだ。

 

刀の切っ先を撫でるようにネウロイに当てる。

互いの速度が乗ればそれは腕を振るわなくても十分な威力になる。

そして削るように砕けた外殻からネウロイのコアが現れた。

 

赤く淡い光を帯びた、宝石のような物体。

宮藤はどこか人を魅了するような、不気味な印象をコアに持った。

 

「―――っ!」

 

呼吸を止め、狙いを定めて宮藤は引き金を引く。

乾いた音が連続して生まれ、弾丸はネウロイに向かって進んでいく。

それは外殻にいくつも当たり、新たな破片が生み出される。

 

コアに当たらないことに宮藤の顔に焦りが浮かぶが、

対して坂本は穏やかな表情だった。

 

「いいぞ、良い腕だ。……宮藤、焦るな! 標的に当たっている!」

 

それは鼓舞の為でも慰めの為でもなく、坂本の賞賛だった。

身体が不安定なストライカーユニットで照準を付けて狙うのは難しい。

ストライカーユニットで空を飛ぶことはおろか、銃すら撃ったことが無い

ウィッチとしては上出来な成果だった。

 

―――宮藤をスカウトしたのは大正解だ。ミーナ、これはとんだ拾い物だぞっ。

 

同僚のウィッチに早く伝えてやりたい。

今だネウロイとは戦闘中であり、劣勢であることには変わりがないとしても

これから宮藤がどれほど活躍してくれるのかに思いを馳せる坂本だった。

 

 

口口――――――――――口口

 

 

「どうしよう扉間さん、全然当たらないよ!」

 

『落ち着け。坂本が言った通り、初めてにしては上出来だ』

 

坂本が外殻を削り、宮藤が狙う。しかし、弾丸はコアの周囲の外殻へ逸れていく。

焦りが焦りを生む。坂本の言う通り、腕は悪くないのだ。

ストライカーユニットの操作も、魔力保有量も並みのウィッチの比ではない。

宮藤が将来、トップエースの一人に数えられることは間違いないのだろう。

 

だが往々にして、能力向上が現実に追いつけない例は存在する。

戦場などがその典型的だ。

将来有望な若者が芽吹く前に消える姿を扉間は何人も目にしている。

 

空戦ウィッチとしての時間。

宮藤に足りないのはただそれだけだった。

 

―――坂本さんに手伝ってもらってるのに、扉間さんに助けてもらってるのにっ。

 

自分のふがいなさに思わず下唇を噛み締める。

そんな宮藤の心に、さらに負担となる出来事が生じる。

赤い閃光が、坂本に直撃したのだ。

 

「坂本さん!」

 

『いや、大丈夫だ。シールドで防いでいる』

 

悲鳴のような呼び声が、宮藤から漏れた。

安心するよう伝える扉間だったが、坂本の状態が決してよくない事は直ぐに解った。

 

―――まずいな。美緒に疲弊の色が見えてきている。

 

坂本はここまで友軍機部隊と発艦してから戦闘状態が続いている。

普段ならば坂本にこれほど疲れが見えることはない。

しかし今回は単独のウィッチで戦闘を行い、墜落する戦闘機の追撃防止、

軍艦の防衛に囮としての行動と、ウィッチ一人が行うには明らかにオーバーワークである。

 

特にシールドの連続使用が坂本の魔力消費に拍車をかけていた。

遠因の一つは、扉間が空母を水陣壁で守り抜いた事だった。

攻撃が空母赤城に集中した結果、護衛艦への被害は数隻で済んでおり、

その大半は未だネウロイへの攻撃を中止し撤退行動に移っている。

 

残存する艦隊が多い為、坂本は護衛艦へ向かう攻撃を防いでいた。

そう、防いでしまっていた。

 

もし、軍艦の数が少なければ坂本も最低限のシールドで済ますことができただろう。

しかし、坂本は全艦の被弾軽減を選択した結果、魔力限界が近くなっていたのだ。

 

その判断を扉間は愚かと断じることはない。

 

確かに場合によっては仲間を切り捨てる覚悟が必要になる場合はある。

小を切り捨て大を助ける選択。

何かを犠牲にしなければ事をなすことが出来ない状況。

戦時ではよくある話だ。

宮藤は知らないが、扉間はかつて自ら『切り捨てられる側』に立つことを選んだ男だった。

 

その扉間が思うのは、『今ではない』という考え。

坂本の消費は激しいが、それは援軍が確実視されているという状況からの判断。

たとえ自分が力尽きたとしても仲間が必ず駆けつけてくれるという確信からだ。

かつて扉間が生きた時代を考えればこの程度の劣勢、幾度となく経験済みである。

 

『芳佳よ、ワシに一つ案がある』

 

 

口口――――――――――口口

 

 

眩い赤い閃光を、青いシールドが防ぐ。

坂本の身体は流れるようにネウロイの攻撃から身を守る。

幾百幾千と繰り返した行動だ。頭で考える前に体が動く。

 

「―――っ、さあて、どうしたものかな」

 

汗を拭いながら苦笑いを浮かべ、坂本は次の一手を考える。

 

宮藤の攻撃がコアに直撃しないのは、外殻が破壊されコアが露出すると

ネウロイが身体をひねる事も理由の一つだった。

 

ネウロイは無機物だが、学習能力はある。

パブロフの犬のように同じパターンの攻撃を繰り返した結果の条件反射だ。

これ以上は同じ結果しか得られないと判断し、仲間の救援を待つ形へと作戦を切り替えていた。

 

幸い、扶桑の軍艦は撤退が完了している。

これならば最悪被害は最小限に止めることができる。

その最小限の被害に、坂本は自身を含めていた。

そうなると問題は宮藤をどう説得するかだ。

 

―――あいつのことだ。一人で逃げろと言って聞きそうにないな

 

その考えは正解である。

宮藤芳佳は一度言い出したことを簡単に撤回するような人間ではない。

それは扉間相手でも同じであることが、いかに頑固であるかが伺える。

 

そしてふと気が付いた。

 

「宮藤?」

 

宮藤がいない。

つい先ほどまでは飛んでいたはずだ。

シールド防御と周囲確認に一度視界から外した程度の時間。

 

流れ出る汗が、急激に冷えていく。

嫌な考えが頭によぎる。まさか、目を離した隙に撃墜されたのか。

 

耳につけたインカムで宮藤に連絡を取ろうとして、思い出す。

宮藤にインカムは渡していないのだ。

ネウロイの閃光を避けつつ空を、海を見渡し宮藤の姿を探すが見当たらない。

 

「宮藤、どこだ……宮藤ィ!」

 

大声を上げて空を見上げる先に、ネウロイの姿があった。

外殻の赤いラインが淡く光る。それは攻撃のサインである。

だが坂本が眉をひそめたのは、それが理由ではなかった。

 

「なんだ……?」

 

ネウロイの背後。太陽の横にキラリと光る物体がある。

それは徐々に大きくなっていき、落下してきていることが良くわかった。

轟音が発生したのはその次の瞬間である。

 

――――――隕石が、ネウロイに直撃した。

 

「なぁ!?」

 

らしからぬ素っ頓狂な声が、坂本から漏れた。

それは隕石だと思った物体が、先ほどまで探していた人物だったからである。

 

隕石などではない。

シールドを張った宮藤が、上空からネウロイに向かって一直線に突撃したのだ。

坂本が間違うのも無理はない。

彗星が落ちてきたと見間違えるばかりの速度だったのだから。

 

外殻は一瞬でヒビだらけになり、たまらずネウロイからも甲高い音が鳴り響く。

それは悲鳴なのだろう。

 

―――重力と推進力を乗せたシールドバッシュ。

それが扉間の考えた戦法だった。

 

無謀に思える案だったが、扉間は一発逆転の可能性だけで提案したわけではない。

 

宮藤のシールドは巨大なことに目が行くが、その守りについても

他のウィッチと比べ非常に強固である。

 

ならば攻撃に転用できるという考えに至るまで時間はそう必要なかった。

 

それらに加えネウロイの攻撃による水陣壁の疲弊具合、

防御によるシールドの強度、

そして弾丸による外殻強度。

 

全て確認した上で可能だと判断したからこその攻撃方法。

しかも難しい操作を一切省き、シールドとストライカーユニットの出力のみに限定することで

シンプルに行動を纏めることができ、経験が浅い宮藤でもその身に持つ強大な魔力を

最大限に活用する事ができる。

 

問題はネウロイに直撃させるための角度だが、扉間がネウロイの飛行速度と

宮藤の落下速度から方向を計算し、宮藤に伝えることによって補う事ができる。

 

扉間を知る者は言う。他の忍に追随を許さない忍術の使い手だと。

しかし真に扉間を知る者は言う。

冷静な判断力と大胆な行動力。術ではなくその思考こそが千手扉間が千手扉間たる所以であると。

 

『ようし、手ごたえありだ! 小細工はいらん! 

お前の盾は巨大な鎚でもある、推進力とシールドの維持に全魔力を回せ!

今や重力すらお前の味方だ!』

 

「うあぁぁーーーーっ!!」

 

裂帛の気合を以て、宮藤は出力をさらに上げる。

その威力に外殻はヒビだらけになり、ネウロイの巨体はくの字に折れ曲がる。

 

「何て奴だ、シールドをネウロイに叩きつけるとは……」

 

感嘆の声が、坂本の口から漏れた。

理論上は可能であるし、ウィッチで実践した例も存在する。

だが、普通の感覚では実践しようとは思わない。

シールドとは攻撃から身を守る文字通りの盾なのだ。

 

「いっけええええええぇぇぇーーーーー!」

 

宮藤のシールドがネウロイを貫く。

左翼の付け根部分に直撃した為、ネウロイの身体を構成する外殻の大部分を破壊した。

 

破壊した外殻は7割以上。ネウロイの身体の殆どが形を成していなかった。

宮藤は推進力を失い、重力にひかれて落下していく。

見上げれば、コアが鈍く光っているのが見える。

 

「ダメ、コアが壊れてないっ。これじゃあ……」

 

コアを破壊しなければネウロイは倒せない。

たとえ外殻の全てを破壊されようとも、ネウロイはコアがあれば復活する。

 

『―――いや、詰みだ。よくやったぞ、芳佳』

 

外殻で防いでいたコアが露出する。

修復は始まっているが、時間がいる。

 

―――その絶好の機会を、坂本が見逃すはずがない。

 

一直線にネウロイへと吶喊した坂本は外殻を攻撃していた時と同じように刀を振るう。

違うのは、これが勝負を決める最後の一撃であること。

扶桑刀がコアを滑り、真っ二つに切り裂く。

 

キン、という金属音が一つ。

二つに割れたコアは四つ、八つと割れていき、光の破片となって砕け散った。

その光景を、重力に引かれながら眺める宮藤は、綺麗、と吐露するように呟いた。

ネウロイの欠片は光を反射し、空を見上げているのにまるで海を眺めているようだった。

 

『絶景を楽しむのは構わんが、そろそろ足に魔力を回せ。

この高さから落ちると痛いではすまんぞ?』

 

「……へ? え? あ、わわわっ!」

 

我に返った宮藤はジタバタと身体を揺らしながらストライカーユニットに魔力を回す。

重力落下が止まり、ホッと胸を撫でおろす宮藤に、いつもの扉間の小言が始まる。

 

『全く。最初は無様を晒したのだ。最後くらい気を引き締めることができんのか、お前は』

 

「う~……ごめんなさい」

 

せっかく頑張ったのにお説教がはじまっちゃった、と肩を落としてため息をひとつつくが、

続く扉間の声は宮藤が思っていたものではなかった。

 

『だがまあ、よくやった。目標は撃破、お前が出撃してからの味方損害はゼロだ。

初戦闘にしては十分すぎる成果だろうよ』

 

見ろ、と言う言葉に宮藤は視線を向ける。

眼下には、戦線を離脱していった軍艦が幾つも見えた。

先に撃ち落とされた戦闘機部隊を回収したのだろう、空母赤城には毛布に包まった

軍人が幾人も見える。そんな彼らが、手を、あるいは帽子を振りながら

宮藤の健闘を讃えていた。

 

『誇れ。そして手を振ってやれ。お前が守った者たちだ』

 

もし扉間に身体があったのならば頭を撫でられる自分を、宮藤は幻視した。

それはきっと、整えた髪の毛が乱れるような乱暴な手つきで。

 

「私が……」

 

『お前は戦う道を選んだ。逃げる道もあっただろうが、お前は進むべき道を選んだのだ。

どちらを選んでも苦難がある。ならば、この程度の報酬があっても罰は当たらんだろう』

 

「……はい、はいっ!」

 

形に残らない無形の報酬。

それでも、選んだ道は間違いじゃないと宮藤は目を潤ませて返事をした。

 

 




フォローに回った卑劣様は木の葉にて最強……っ!


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