ザワザワ・・・
ザワザワ・・・
スタジアムはいまざわめきに包まれていた
レースは既に終了し順位の発表も済んでいる
しかし、止まらない
「どうなるんだあの子は・・・。」
「行いとしてはこの上なく素晴らしい、たがルールはルールとして守らなくては大会の秩序として示しがつかなくなってしまう・・・。」
話題の中心はテリーの判定
あの行為をコースアウトとして失格とするか、はたまたその英雄的行動に特例として第二種目へと進ませるのか
レース終了後にミッドナイトより協議を行うとアナウンスが流れたため観客はもとより
「テリーくん・・・。」
彼のクラスメイト達であるA組
「テリー・・・。」
ポニーを通して一部生徒に面識のあるB組
全員が次の闘いに彼が駒を進めてくるのか、その発表に固唾を飲み時を待っていた
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ありがとうございます、ありがとうございます・・・。」
「いやいやそんな、もう頭をあげてください。」
そんな中テリーはスタジアムの関係者通路にいた
救出した子供を保護者の元へ連れていこうと歩を進めていたがシスターもまた引き取りに駆けつけたのだった
「そんな、勇敢なあなたの行動がなければこの子は・・・。
もう既にヒーローを引退している私には何もあなたにお返しすることはできません。その様な御方に頭を下げぬなどと不義理を働いては私は神はもとより子供達にも顔向けできません。」
必死に頭を下げるシスターにテリーは止めるよう言うがシスターもまたその態度を頑なに変えない
そんな問答を繰り返していると
「・・・お兄ちゃん。」
テリーの助けた子供が口を開いた
「助けてくれてありがとう。
僕も将来、お兄ちゃんみたいなヒーローになりたい!
ねぇお兄ちゃん、僕ヒーローになれるかな?」
「・・・ああ、絶対なれるさ!
シスターの言うことをよく聞いてれば必ずなれるさ!」
テリーは子供の問いにしゃがみこみ目線を合わせると力強く答えた
そして下からシスターに顔を向け
「この子の言葉が、これ以上ないお返しです。
ありがとうございました。」
テリーは頭を下げたあとそのままその場を後にした。
するとその足でテリーはある場所に向かった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ガチャ
不意にA組の控え室の扉が開く
「ムッ?」
その音に反応した障子が目を向けると
「・・・よぉ。」
ばつの悪そうにテリーが部屋に入ってきた
「テ、テリーくん!」
緑谷を筆頭に一同が集まってくる
「テリーくん、あの・・・。」
「ああ麗日、その辺は今から発表がある。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同時刻
「・・・会場にお集まりの皆さん。」
ミッドナイトの先ほどまでとは打って変わった凛とした声が響く
「先ほど協議が終了いたしました。
今よりその結果を発表させていただきます。」
その声に会場は静まり返る
「先ほどの翔野テリー君のコースアウトについて我々教師陣の意見としてはそのヒーローを体現した行動とこちらの警備体制が不十分であった事が原因であるために第二種目へ復帰させるべきと言うのが大半の意見でした。
しかし・・・
会議中に翔野テリー本人が会議室に訪れ、
“どのような理由があれど大会の規定を破った以上けじめをつけるべきだ”
と訴えきた為、我々教師陣は彼の意見を尊重し
翔野テリー君を
失格といたします。」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ミッドナイトの言葉が終わると共に起きたどよめきが控え室まで伝わってくる
「・・・そういうわけだ。
みんな、俺の分まで頑張ってくれ。」
「テリーくん、どうして!?」
誰もが口を開けない中、緑谷が問いかけるも
「なんでだろうな、でもこうしなければいけないと思ったんだ。
ここを曲げてしまえば俺は、俺の目指す道から外れてしまう・・・だからこうした。」
強い決意を含んだ言葉に一同は言葉を失ってしまった
「おっと、次の種目にでない奴がいつまでもここにいても迷惑だな。
じゃあなみんな、頑張れよ。」
そんな空気を察してテリーは皆に背を向け扉に手を掛ける
「ッ、テリーくん!」
「イズク、仮に逆の立場にいたのならお前だってこうしたはずだ。
だから後悔なんてしていない。
あの子を救いに体が動いてしまったことも、このけじめの付け方も
・・・じゃあな。」
ガチャ バタン
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・さて、席に戻るかな。」
A組の控え室を出たテリーは溢れる感情を押し込めて席に戻ろうとすると
「テリー!」
「ポニー・・・。」
後ろからポニーが駆け寄ってきた
「すまないポニー。
君に何も言わずに・・・。」
フリフリ
「いいえ、わかってマシタ。
テリーなら必ずこうするって・・・。
そしてそんなあなたを、私は誰よりも尊敬してマス。」
「・・・ありがとう。
ありがとう、ポニー。」
ポニーの言葉にテリーはまた一つ心が軽くなったように感じた
「じゃあ、そろそろ次の種目が始まるからワタシは行きマスネ。」
「ああ、わざわざありがとうなポニー。
上でしっかり見ているから頑張れよ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
こうしてポニーと別れテリーが誰もいないA組スペースの観客席に着くと同時に第二種目が始まった
第二種目は騎馬戦
第一種目の順位によって振り分けられたポイントにより1万点を与えられた緑谷が終始狙われる展開に
途中で物間を筆頭に手を組み順位上昇を狙うB組の攻勢があったものの勝負は緑谷組と轟組の一騎討ち状態に
「いくぞ、轟くん!」
ここで轟組の騎馬、飯田が奥の手である超加速を披露
一気に間合いを詰め一万点のハチマキを奪いにかかるが
クイッ
スカッ
「「っ!?」」
「オオッと!なんと緑谷、あの目にも止まらぬ攻撃を避けたぁぁー!」
「マジで!?すごいやん、デクくん!」
「さすがだな、緑谷。」
「ナイスダゼ。」
「まだ一位をキープ!みてますか企業の皆様!私のドッかわいいベイビー達を!」
「う、うん・・・!?」(今のは、体が勝手に反応した・・・!?)
「おいおいイレイザー、スゲーなあいつ!
こりゃ間違いなくこの大会の台風の目だぜ。」
一人で実況しながら一観客としても興奮しているプレゼントマイクの言葉をよそに相澤は一人である仮説をたてていた
(あの様子じゃあ自分でも何が起きたかわかってないな。
轟組の策は間違っていない。
事実飯田のあの超加速については誰も知らなかった文字通り秘密兵器、ただでさえ初見で反応が鈍くなる。
そこにつけこみあのスピード普通に考えれば緑谷は反応すらできないはずだ。)
そして別の場所で観戦しているオールマイトもまたその仮説に行き着いていた
(だがそれでも反応した。
それも本能とも呼べる感覚で・・・。
考えうる可能性としては先の事件。
相手の秘密兵器とも呼べるあの脳無という敵と命のやり取りを経た事が大きいのだろう!
学校の演習クラスやチンピラ程度では経験できない修羅場、そこを味わい、乗り越えたからこそあの本能的超反応へと繋がったのだろう。
本来はあまりすべきではないことだが!
ヴィランどもよ、礼を言わねばな緑谷少年はお前らとの戦いで一皮むけたぞ!!)
そのまま時間は進みタイムアップ
緑谷組は一万点を死守して最終種目進出決定
そしてその他の進出メンバー達も発表された。
ーーーーーーーーーーーー
「お疲れ。残念だったな、ポニー。」
「ムゥ、悔しいデス。」
第二種目終了後そのままお昼休憩となりテリーはポニーと二人で昼食をとっていた
そして
「・・・それはそうとなぜ君たちも?」
「まあまあ、いいじゃない!」
「私たちも負けちゃったから癒しがほしいノコ!」
「だからこのウラメシイ空気を吸いにきたのよ。」
「ん。」
また回りをB組女子に固められていた。
すると、
「おーい、テリー。
少しいいかー?」
「こっち、こっち~。」
少し離れたところからクラスメイトの峰田と上鳴の声が聞こえてくる
どうやら用があるらしくこちらに手招きをするのが見えた。
「なんだ?ちょっといってくるよ。ポニー達はここで待っててくれ。」
席を立ち二人の方へ向かうテリー
それを見送ったポニー達のもとに
「あ、あの・・・B組の皆さん。
少しよろしいでしょうか?」
少し間を置いて八百万が訪ねてきた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ど、どうなってんだ?」
テリーは愕然としていた
先ほどまで峰田と上鳴に呼ばれ他愛もない話をして別れたと思えば席には誰もおらず
そろそろレクリエーションが始まると仕方なしに席に戻ると
さっきのメンバー+A組女子がなぜかチアガールの格好をしていた
「ウッヒョ~やったぜ!」
「眼福、眼福!」
どうやら二人の策略らしく八百万を上手いこと騙したようだった
それを冷めた目で見る女子一同に騙されたと気づきがっくりと頭を垂れる八百万
「WAO!!ベリーキュートデスネ。」
ポニーはあまり気にしていなかった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこんながあり遂に最終種目
最後はトーナメント方式で行われる一対一のガチンコバトル
その組み合わせのくじ引きが行われる時に
「すみません、オレ辞退します。」
「僕も・・・。」
なんと
急な申し出に周囲の同級生は説得をしようとするも
「騎馬戦の記憶、終盤ギリギリまでぼんやりとしかしてないんだ。
・・・チャンスだってのはわかってる。
それを不意にすることの愚かさも、でも!
それじゃダメなんだ!俺のプライドが許さないし、なにより!!
こんな形で上に上がったら俺はテリーに顔向けできないし、一生追い付けなくなってしまう気がするんだ!!」
「・・・僕も同じです。誰かの為に自ら失格を選ぶような人がいるのに自分だけなんの力も示さずに上に上がるなんてことを飲み込んでしまったら、僕は自分で自分を許すことができなくなります。」
二人の言葉に周囲の人間は何も言えなくなってしまった。
「そういった青臭い話は・・・好み!
二人の辞退を認めます!!」
「おいおい、好みで決めちまったぜ、イレイザー。」
「まあ、あの辺はミッドナイトの裁量に一任されてるから仕方ないな。」
こうして急遽二枠空きができたことにより繰り上がりが発生
惜しくも進出を逃した拳藤組から二名となるところだったが・・・
「そういう話で来るなら・・・ほぼ動けなかった私らより、がんばって上位をキープしていた鉄哲組からでいいんじゃない?」
とB組委員長拳藤の一言で鉄哲チームから二名選出される事に
「・・・お前ら、それでいいんだな。」
「まっ、しょうがねぇよ。でもさ俺だって男さ、ああいうのカッケェって思ったし。」
「いろいろ思うことはあるけど、あれ見せられたらオレらだってこうしなきゃ男として情けないしね。」
「ありがとうございます、皆様。
・・・ミッドナイト先生!」
「ハァイ、それで誰が出るのかしら?」
鉄哲組の話し合いが終わり塩崎がミッドナイトに呼び掛ける
「はい。
私たちの組からは鉄哲さんが、
そしてもう一枠は・・・
A組の翔野テリーさんに差し上げたいと思います!」
オオッ!?
塩崎の発言に周囲の生徒のみならず観客席まで動揺が走る
「あのお方は自らの名誉よりも子供の命を優先して動ける様なお人です。
皆の前で力強く勝利宣言をした直後でも他人の為に動くことに迷いなく舵をきれる。
そんなお方にもう一度表舞台に立つ機会があって然るべきだ、私たちはそう結論付けました。
ミッドナイト先生、よろしいでしょうか。」
「・・・まったく、あなた達良い顔してるじゃない!
そういうのも好みよ!
さあ、オーディエンス!
この少年少女達の勇気ある決断に賛成の人は拍手を頂戴!!」
ワアアアアアッ!!
パチパチパチパチパチパチッ
「文句なしの決定ね!
翔野テリーくん、ステージに来なさい!!」
オオオッ!?
周囲の目がステージの出入口に集まる
ザッ
「・・・・・・。」
テリーが姿を見せると観客席はプロヒーロー、生徒関係なく盛り上がりを見せていた
ミッドナイトに促されるようにステージに歩を進めるテリー
「さあ、こんな事になったけどあなたはどうする?
あなたの口から聞かせて頂戴!!」
ノってきたミッドナイトはテリーにマイクを投げ渡す
「・・・鉄哲、塩崎、そして後ろの二人も。
ありがとう。こんな馬鹿な男の事を買ってくれて。」
「へッ、礼なら塩崎に言いな!」
「これは彼女が発端だからね。」
「いえ、私は私の心に従ったまでの事です。おきになさらず。」
テリーがマイクを受け取り話始めると観客達は一斉に静かになる
「・・・誰もが皆、当たり前のように全力で戦っている。今の自分より上に進みたい、そんな欲求を抑えてまで俺に託してくれた。
そんな大切な思い、無下にできるわけないだろぉ!!」
ドワアアアアアアアアッ
「翔野テリー、その枠ありがたくいただきます。
そして、必ず優勝します!!」
観客のボルテージは天井知らずに昇っていく
テリーはミッドナイトにマイクを返すと
「・・・イズク。」
緑谷の前に立った
「テリーくん!」
緑谷もまた視線を外さずに真っ向からテリーを見上げる
「こんな形とはいえまた君と闘える機会に恵まれた事を嬉しく思うよ。」
「僕も、僕もそうだよ。」
二人の目に闘志が燃え上がる
「緑谷出久!」
「翔野テリー!」
「俺は君に勝つ!
誰よりもヒーローとしての心を持ったお前に俺は勝つ!」
「僕は負けない!今の僕の全部をぶつけて君に勝って見せる!!」
「さあ、決定よ!
くじを引きなさい!
トーナメントを始めるわよ!!」
次回、トーナメント開幕!
テリーの一回戦の相手は・・・?