奮い立てテキサス・ブロンコ   作:遊人

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遅くなりましたが2020年初投稿です

今年もこの作品をよろしくお願いいたします


No,pain No,gain の巻

興奮冷めぬスタジアム

 

テリーのトーナメントから参戦

 

緑谷と既に視殺戦を始めているテリーの手強さを知るA組は自らの気を引き締めていた

 

(俺も嬉しいぜぇ!てめぇに返さなきゃいけねぇ借りがあるんだからよ!)

 

(テリーくんが来たか・・・!

 

これは一筋縄ではいかなくなったな!)

 

(翔野テリー、その卓越した近接戦闘の強さに目を奪われがちですが警戒しなくてはいけないのはその洞察力と判断力。

 

生半可な手はすべて無駄だと覚悟しておかねば・・・。)

 

(ウェーイ、やべぇ・・・。

 

どうかいきなり当たりませんように。)

 

(是非もない。俺も一度手合わせ願いたいと思ったところだ。我が闇の刃、お前にどこまで通じるか試させてもらうぞ!)

 

(ううっテリーくん、強敵やわ・・・。)

 

一人また一人と順番にくじを引いていく

 

「さあ、組み合わせが決まったわ!」

 

ヴォン

 

ミッドナイトの声と共に電光掲示板にトーナメント表が映る

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

第一試合

 

緑谷出久

VS

心操人使

 

 

第二試合

 

轟焦凍

VS

瀬呂範太

 

 

第三試合

 

翔野テリー

VS

飯田天哉

 

 

第四試合

 

鉄哲轍鐵

VS

切島鋭児郎

 

 

第五試合

 

発目明

VS

上鳴電気

 

 

第六試合

 

青山優雅

VS

八百万百

 

 

第七試合

 

芦戸三奈

VS

常闇踏陰

 

 

第八試合

 

麗日お茶子

VS

爆豪勝己

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さあ、始まるぜ!!

 

頼れるのは己の身一つ!心技体、すべてを総動員して勝利を掴め!

 

負けたら終わりの一発勝負!!

 

最終種目、ガチンコバトルトーナメントだァァァ!!」

 

 

ワアアアアアアアアアァッ!!

 

 

プロヒーローであり雄英高校の教師でもあるセメントスの個性により作製された正方形の闘技場

 

これから始まる戦いに心踊らせるギャラリー

 

それに反比例するように出場者の緊張の糸は張り詰めていく

 

「一回戦、第一試合!

 

間違いなく今回のダークホース!!

 

このままトップまで登り詰めるか!?

 

A組、緑谷出久!

 

 

VS

 

ごめん、いまだ目立った活躍なし!

 

普通科唯一のトーナメント参加者!

 

C組、心操人使!」

 

 

 

 

「なあ、あの猿も馬鹿な事をしたと思わないか?」

 

「・・・っ!!」

 

「プライドがどうこうとか言ってたけど結局は自分の力に自信がないだけだろ?

 

だからチャンスをドブに捨てるようなことが出来るんだ。」

 

 

心操の挑発的言葉にただ耐える緑谷、好き勝手に言われて鬱憤が積もるが・・・

 

(ここで答えたらダメだ!堪えるんだ・・・!)

 

(・・・チッ、なかなか釣れねぇな。

 

やはり騎馬戦の時に組んでいたあの尻尾の奴から何か聞かされていたな。)

 

心操の個性は『洗脳』、しかし好き勝手に発動は出来ず自分が洗脳するという意識下での問いかけに答えた者のみ発動出来る

 

つまり会話は絶対条件、完璧な初見殺しだか一度知られてしまえば対策は容易なのだ

 

なんとかして相手から言葉を引き出さなくてはならない、そのための挑発。

 

(けど、さっきのを見してもらったぜ。

 

これならどうだ・・・!?)

 

「それにさっきの金髪の奴も、ムカつくと思わないか?」

 

ピクッ

 

遠巻きながらテリーと緑谷を見ていた心操はなんとなく二人の関係性を推測していた

 

(やはりあのテリーって奴のことは効き目が強そうだな。)

 

「第二種目免除でトーナメントだぜ。まったくB組の奴にいくら払ったんだ?

 

それでもってB組の奴の思いも背負って優勝宣言?

 

カッコつけるのも大概にしろってんだよな!」

 

 

「ちがう!!」ドクンッ

 

遂に堪忍袋が切れてしまい声を荒らげてしまった

 

「俺の勝ちだ。

 

・・・悪く思わないでくれ、これが俺の戦い方だ。

 

"振り向いてそのまま場外に歩け。"」

 

 

心操の言葉に従う様に緑谷は振り向いてそのまま場外に向けて足を動かし始めた

 

「正直・・・お前ら二人がうらやましいよ。

 

あんなに笑顔で戦いたいって言い合えるような人と出会えて。」

 

個性のせいで暗い過去を持つ心操にとって緑谷とテリーの視殺戦の様子は目が眩む程に輝いて見えていた

 

(・・・それでも俺はヒーローになりたいんだ!

 

どれだけ(さげす)まれようと、(そし)られようとしても俺はこの個性でヒーローになる!)

 

心操は断固たる決意でもって緑谷の背中を見送る

 

(ダメだ!体が勝手に!

 

まるで頭にモヤがかかったみたいに・・・!

 

負けるのか?こんな呆気なく!?

 

尾白君が忠告してくれたのに、オールマイトとの約束があるのに!

 

そして・・・今の僕の全部をぶつけなきゃいけない人が待っているのに!!)

 

まもなく場外となるところで・・・

 

ザアァッ!!

 

(なんっっっっっっっっっっっだ!?これっ!?)

 

相変わらず体は自分の意思では動かない

 

しかしスタジアムの風景もまるで凍ったかのように動きが止まっている

 

困惑する緑谷の目の前に()()の影が現れた

 

(な、なにが起こって・・・!?)

 

すると影の一人が前に進み出てきた

 

その影は明らかに他の影と比べると異質なものだった

 

他の影は輪郭すら定かではない者も多い

 

しかし今動いている影は違う

 

しっかりとした輪郭とその体が朧気ながら見ることができた

 

まるでおとぎ話の様な冠を頭にのせマントを羽織り見える肉体はどれ程の鍛練を積み重ねてきたかを如実に物語る様に逞しい

 

影はやがて緑谷の前に立ち

 

「・・・・・・。」

 

なにも言わず緑谷の心臓を指差した

 

(こころ・・・!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーースーパーヒーローの条件ってなんだと思う?

 

 

俺はこう思うんだ心に愛がなければスーパーヒーローじゃないってねーーー

 

 

 

 

 

 

 

「アーッと緑谷!?このまま場外か!?」

 

ピクッ

 

「っ!?」

 

バキッ

 

誰もが決着かと思われた時、スタジアム内に一陣の風か吹いた

 

(こっこいつ何をしたんだ!?)

 

自身の個性を無理矢理破られた事に驚く心操だったが

 

「くっ、いいよな!指動かすだけでその威力かよ、羨ましいよ!!」

 

なんとかまた洗脳をかけようと挑発を試みる

 

「なんとか言えよ!」

 

「・・・・・・・。」ザッ

 

緑谷は無言のまま心操に向き直る

 

(オールマイト、ごめんなさい。でも今だけは、この瞬間だけは!)ザッ

 

「なんだぁ!?緑谷の奴、いきなりしゃがんじまったぞ?」

 

(いったいなにをする気だ?)

 

現状の緑谷がどの程度個性を扱えるかを知っている相澤も緑谷の次の一手に注目した

 

スゥゥゥ・・・

 

緑谷が息を吸いながら顔をあげていく

 

「っ!!

 

いかん!マイク、今すぐスタジアムの音響を全部オフしろ!!」

 

(OFAを、喉に!)

 

「ウララーーーーーーーーー!!」

 

ゴオオオオオオ

 

「ワッツ!?これは俺の『ヴォイス』じゃねえか!?」

 

「個性を使って無理矢理再現しやがったな!なんつー無茶を!」

 

 

 

「グウウウゥゥゥゥ・・・!?」

 

緑谷の大声量をもろに浴びている心操は耳を抑え吹き飛ばされまいと必死に踏ん張っていた

 

やがて

 

「グッ・・・ゴハッ!」ビシャッ

 

緑谷の声が止むと同時に吐血

 

「デクくん!?」

 

「おいおい、緑谷の奴大丈夫か!?」

 

A組を中心に心配の声が上がるが

 

(これでいい・・・!!)

 

口から吐いた血を拭い緑谷は満足そうに笑みを浮かべた

 

(こ、こいつ・・・まさか!?)

 

(相変わらず君は私の予想を越えてくるよ!

 

まさかOFAをこんな風に使うなんて!!)

 

 

相対する心操、そしてオールマイトと相澤は驚愕していた

 

 

(さっきの大声は勝利への攻撃じゃない!

 

自らの喉をあえて潰す為に・・・!)

 

 

 

 

「お前・・・なにやってんだよっ!?」

 

心操には理解できない行動だった

 

(これでいい、これで聞ける。)ザッ ザッ

 

立ちすくむ心操をよそに緑谷は近付いていく

 

(これで話せる、君の魂と!)

 

呆けてる心操の目の前に立つと

 

バキッ

 

個性を使わずに拳を叩きこんだ

 

 

「ガァッ・・・ってぇな。

 

テメぇなんで個性を使わねえんだよ!!

 

その個性使えばすぐ終わるじゃねぇか!」

 

「・・・。」

 

緑谷は何も答えない

 

無言のまま拳を振り上げまた叩き込む

 

「グアッ・・・くそ!

 

落ちこぼれをいたぶって楽しいかよ!てめえいい趣味してんな!」

 

心操の悪態にも緑谷は揺らがない

 

三度目の拳を振り上げると

 

「チィッ、なめんじゃねえ!!」ガンッ

 

心操のカウンターがもろに入る

 

それにより一瞬だけ緑谷の動きが鈍る

 

・・・でも止まらない

 

「があっ・・・クッソ上等だよ!

 

そっちがその気ならこっちだってやってやるよ!!」

 

心操が緑谷に掴みかかる

 

「~~~ッ!?」

 

いきなりの攻勢に対応しきれなかった緑谷はそのまま後ろに倒れ肉弾戦に心得のない心操もまた連れて倒れていった

 

ドサッ

 

そこからはまるで子供の喧嘩だった

 

上をとったと思った心操だか固める前に緑谷が回転して上と下が入れ替わる

 

どっちが上をとるかで転がり回る

 

髪を引っ張る

 

頬をつねる

 

引っ掻く

 

殴る

 

蹴る

 

やがてどちらともなく涙を流して二人は戦っていた

 

 

「なんなんだよ、なんなんだよ!お前は!!」

 

何度目かわからない攻防

 

心操が馬乗りになり下にいる緑谷に殴りかかる

 

「お前にはわかんないだろ!

 

こんな個性で生まれて!

 

スタートから遅れちまった俺の気持ちなんて!」バキッ

 

(わかるよ・・・。)

 

「誂え向きの個性で生まれて!

 

認めてくれる仲間がいて!」ドスッ

 

(それは僕の力じゃないから・・・。)

 

「望んだ場所に行ける奴等には、わかんないだろ!!」

 

(そうだ、僕は恵まれただけだ。師に・・・友に・・・。)

 

パシッ

 

(だから!)

 

緑谷は心操の拳を掴むとそのまま押し返した

 

肘が伸びきっていた心操はたまらず後ろに倒れ緑谷の上から退いていく

 

(勝って見せなきゃいけないんだ!

 

無個性(あの頃)の僕がいての今だって!

 

無個性(あの頃)の僕からの自分の力だけで!)

 

その隙に緑谷は立ち上がると

 

「クッソがぁ!」

 

体勢を建て直そうと立ち上がり顔をあげた心操に綺麗なワンツーをねじ込む

 

「グファッ・・・!」フラッ

 

緑谷は脳が揺れ力が抜けた心操の髪を掴み左手を回転させる

 

「あの動きは!」

 

「テリーちゃんの!」

 

 

そのムーブに見覚えがある二人は反応する

 

 

放たれたその拳は

 

(オ、オール・・・マイ・・・ト・・・?)

 

心操に幻覚を伴いながら吸い込まれていった

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

______がその比類なき力を使うのは

 

己のためにあらず

 

必ず世のため

 

人のために

 

その力を使うべし

 

しかしその際に決して忘れてはならぬ事がひとつ

 

それは世のため人のため

 

__が力を振るい闘う相手もまた

 

__が救うべき「人」の中に含まれているということである

 

ゆえに世を救い人を救うという行為の真理たるや

 

闘うべき相手をまず救う事にあると心得るべし

 

 

 

~偉大なる先人の言葉より抜粋~

 

 

 




次回、テリー出陣!!

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