奮い立てテキサス・ブロンコ   作:遊人

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戦いの懐、花の誓い の巻

激しい殴り合いの末、勝利した緑谷だったが自身もまた相当に傷ついていた

 

よって勝利の余韻に浸る暇なく緑谷も仲良く救護室へと搬送されていった

 

会場には二人への惜しみ無い拍手が上がり一部からは敗北した心操への称賛の声も上がっていた

 

「心操!よくやったぞーっ!」

 

「カッコよかった~!!」

 

「お前は普通科のホープだーっ!!」

 

沈んだ意識にその声が届く筈はない、しかし心操のその顔はどこか笑って見えた

 

◯緑谷VS心操●(ストレートパンチK.O.)

 

緑谷出久 二回戦進出

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

二人の搬送を終えたスタジアムの熱気は先程の戦いの熱を維持したまま第二試合へと突入していった

 

・・・しかしその熱気は

 

「悪ィな」

 

キィン!!

 

突如現れた氷山によって瞬く間にかき消された。

 

「や、やりすぎだろ・・・!」

 

対戦していた瀬呂は哀れにも轟の出した氷山に捕らわれギブアップを余儀なくされた

 

◯轟VS瀬呂●(ギブアップ)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

にわかに会場がざわつき始める

 

それは先程行われた圧巻の瞬殺劇への感想か、はたまた次に出で来る者への期待か・・・。

 

「ヨッシャアァ、テメぇら待たせたな!

 

いよいよ第三試合を始めるぜ!!」

 

 

プレゼントマイクの声に観客が反応する

 

それは観戦する生徒たちも同じ

 

「ま、間に合った・・・。」

 

「デ、デクくん!?

 

大丈夫なん!?」

 

A組の観戦席に治療を終えた緑谷が帰ってきた

 

リカバリーガールの治療を受けたとはいえ体力面の事を考えれば保健室で休んでいた方が・・・

 

と回りは心配するが

 

「うん・・・。

 

普通に考えたらそうなんだけど、どうしても生で見なきゃって思ったんだ。」

 

緑谷の視線は既にスタジアムに向いていた

 

そしてそれは

 

「・・・・・・ッ!!」ギリギリ

 

「・・・・・・。」ググッ

 

両目に力を込めてその一挙手一投足を逃すまいとにらむ轟、爆豪を筆頭にトーナメント参加者達も同じだった

 

「ザ・中堅って感じ!?

 

頼れるけどなんかずれてるA組委員長!!

 

A組、飯田 天哉!

 

 

 

VS

 

 

 

アイルビーバック!

 

不屈の精神にて這い上がり早くも注目株!

 

翔野テリー!」

 

 

 

二人がスタジアムに姿を見せる

 

「テリーくん!第一種目での君の行動は素晴らしいものだ!

 

同じくヒーローを目指すものとして誇らしく思う!」ビシッ

 

飯田は独特の動きを交えテリーを称賛する

 

「・・・だからこそ君を越えたい!

 

この体育祭のなかだけの勝利でもいい!

 

君を越えて僕は高みを目指すっ!」ブォォォォン!

 

「COME ON!」

 

「始め!」

 

ダシュン

 

ミッドナイトの開始の合図と同時に飯田は駆け出し一気に間合いを詰める

 

「おっと!いきなり仕掛けたぜ!!」

 

「飯田は179cm、テリーは190cm他の奴よりはまだましだが体格差はあるからな、相手が構える前に勢いを乗せて仕掛けそのまま押しだそうってところだな。」

 

 

「このままっ!」ダダッ

 

「ふんぬっ!」グゥッ

 

ガッシイイイイ

 

飯田は最初の勢いのまま正面から組み付く

 

ブォォォォォオン

 

足の排気口からけたたましい爆音と煙を吐きながら足を動かそうとするが・・・

 

(なっ、なんだ・・・、この重さはッ!?)

 

「ヌウウウウ・・・ッ!」グググ

 

まるで根が生えたかのように動かないテリーに

 

「っっっ!?」

 

飯田の目にあるビションが浮かぶ

 

それは幾年もの間、風雨にさらされそれでも折れずに生き抜いてきた大樹

 

地に深く根をはり、その幹は太く微動だにしない

 

 

「た、耐えたぁぁぁ!翔野テリー、飯田の突進を真正面から受け止めたぞ!」

 

(くっ、やはり正面は無理か・・・。

 

ならば!)バッ

 

飯田はテリーを振りほどき距離をとる

 

『トルクオーバー・レシプロバースト!』ダシュン

 

「出やがった~~~!

 

委員長の超加速っ!」

 

(あの超加速、さすがのテリーも視界から消えたように感じるだろう。

 

・・・だがお前も無策じゃないだろ、どう対処する?)

 

 

盛り上がるプレゼントマイクの横で静かにテリーの次の一手を見定めようとする相澤

 

(いける!このまま後ろからっ!)

 

「取った!!」

 

加速のスピードを利用して一気に背後に回り込み背中から押し出そうと試みる飯田

 

その手がテリーの背中をとらえた

 

「委員長、そりゃ安易だぜ。」

 

筈だった

 

「なっ!?」スカッ

 

飯田は訳がわからなかった

 

なぜなら先程正面で感じ取っていた力強さが一転、まるで柳の枝のように軽くなる

 

そしてその溢れた力は前ではなく下に向かう

 

飯田の視界が一気にぶれる

 

『テリー式サムソンクラッチ!!』

 

気がつくと飯田の視界は一面コンクリートに覆われる

 

「くわっ!?」

 

このままでは不味いと飯田は本能的に顔をしたに向ける

 

「っ、これは・・・!」

 

外から見ていた相澤も驚きを露にする

 

「なんだ、なんだ!?後ろを取ったと思われた飯田が一気に仰向けに倒されたぞ!

 

何が起こったんだ!?」

 

「・・・足を後ろに上げたんだ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

同じころ緑谷もテリーの行動への仮説を呟いていた

 

「足を後ろに上げて飯田君の力をすかしたんだ。

 

テリー君の力を知っている飯田君は当然力を込めて押そうとする、すかされた勢いは行き場を失い前に重心がずれる。」

 

急にぶつぶつ話始めた緑谷に驚くがその言葉は聞き逃せずにいた

 

「そして後ろに上げた足を飯田君に絡ませて自由になった手は勝手に迫る足を掴む。

 

そうすると・・・。」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「ぐはっ・・・!」

 

勢いよく前回りをするはめになり地面に仰向けになる飯田

 

(不味い!この体勢は!)

 

「遅い!」

 

自らの危機を感じ素早く起き上がろうとした飯田だったが既に足は立っているテリーに取られていた

 

テリーは飯田の足を自らの足に巻き付かせるように捻りあげる

 

『スピニング・トゥ・ホールドッ!!』

 

ガッシイイ・・・!

 

 

「ぐああああ・・・ッ!」

 

 

 

「翔野テリー、エグい技で飯田をとらえたーーー!!」

 

「足首や膝・・・飯田の個性においてまさに急所だ。

 

そこを一斉に極められたな。」

 

 

 

 

 

「ッ!!」ズキッ

 

観客席で見ている爆豪にも自身が極められた経験のある右足に痛みが走ったように錯覚する

 

 

 

 

「まだまだいくぜ!!」

 

グワッ ガシッ

 

グワッ ガシッ

 

更に体を回転させ捻りを強くしていくテリー

 

「ぐはあっ・・・!」(慌てるな、最初の演習の時を思い出せ!)

 

三回転目に入ろうとしたところで、

 

「今だ!」バシッ

 

「クアッ!?」

 

テリーが体を離したところを狙い蹴り飛ばす飯田

 

「ヨシッ、これで・・・!?」ズキッ

 

ガクッ

 

技から逃れ立ち上がろうとするも既にダメージを受けた足に力が入らず

 

「く、くそ・・・こんなときに、はっ!?」

 

一瞬自らの足に目をやってしまった

 

その一瞬が命取りだった

 

『テキサス・コンドルキック!』

 

ガツンッ

 

鈍い音を響かせてテリーの膝が飯田をとらえ飯田の体は完全に脱力してしまった

 

「強烈なヒザが炸裂!

 

勝者、翔野テリー!!」

 

ワアアアアアアアアッ!

 

 

◯翔野テリーVS飯田天哉●(テキサス・コンドルキック)

 

 

(ちぃっ、厄介だな。

 

あのガタイで脳筋なら戦いようはあるが・・・。)

 

 

(戦いのなかでの閃き、そしてそれを体現する術に長けている。

 

あまり悠長に戦ってはいけないが初手を誤れば敗北に直結するか、どうしたものか。)

 

 

(そもそも他の生徒よりも持ってる引き出しの数が多い。

 

これだけ個性という浮世離れした力が一般的になった今だからこそ個性に縛られずに戦っている。

 

この思考に行き着けるのはプロでもそうはいない、一体どんな日々を過ごせばその領域までたどり着けるんだ・・・。)

 

 

爆豪、轟といった戦闘に秀でた面々や同じく近接格闘を主とする相澤もテリーの持つ強さに興味津々だった

 

しかし当のテリーの視線は別の男を捕らえていた

 

「・・・テリーくん!」

 

視線に気づいた緑谷の体は知らずのうちに震えていた

 

それは恐怖か、緊張か、はたまた・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

続いて行われた第四試合も再び殴り合いとなった

 

切島と鉄哲

 

硬化とスティール

 

似たような個性のため必然的にバトルスタイルも被る

 

 

「ま、負けられねえ!俺がB組の名を汚す訳にはいかねぇんだ!」

 

「ッッッ!?」ゾクッ

 

ガンッ

 

ゴンッ

 

 

二人がまったく同じタイミングで繰り出した拳は双方の顔面をとらえた

 

しかし、

 

「があぁ・・・。」ドサッ

 

倒れたのは切島だった

 

鉄哲が最後の最後に見せた気迫

 

そこに怯んだ心の隙が勝敗を分けた

 

●切島VS鉄哲◯(カウンターパンチKO)

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

その後の試合も各々の色がぶつかり合う闘いが続いていった

 

 

第五試合は上鳴VS発目

 

サポート科から参戦している発目は自らの試作品を勝敗度外視でプレゼンしたいと申し出で対戦相手である上鳴をテスターに指名

 

女子からの指名に気を良くした上鳴はにやけ顔で快諾

 

観客席から「この裏切り者ォォォーーー!!」と声が響いた

 

まんまと発目に利用され商品の実演説明に付き合う破目になった上鳴、やがて

 

「ふぅ、これで満足です!

 

もう思い残すことはありません!」

 

そう言い終えると発目は自ら場外に出ていった

 

「発目、場外!

 

上鳴電気、二回戦進出!」

 

女子と絡めたことと二回戦に進出したということで喜ぶ上鳴だったがヒーロー科、特に女子は頭を抱えていた

 

上鳴はこの時気づいていなかった、自身のアピールを何一つしていないことに・・・。

 

何はともあれ上鳴電気二回戦進出

 

◯上鳴電気VS発目明● (場外)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

続く第五試合は

 

「うっ・・・!?」ギュルル

 

「今ですわ!」バキッ

 

一撃で仕留めようと後先考えずレーザーを放ち腹痛をおこした青山を避けに徹していた八百万がその瞬間を見計らい勝負あり

 

八百万百、二回戦進出

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

麗日は今控え室にいた

 

今頃常闇と芦戸の戦いが始まっている

 

次は自分の番

 

相手は爆豪

 

ヒーローとしては如何なものかと思われるほどの攻撃的性格、それを体現したかのような個性

 

更に選抜されたA組にあっても目を見張る程のセンスの塊

 

間違いなくA組の上位に位置する男

 

緊張で体が震え出す

 

ガチャ

 

「麗日さん。」

 

「デクくん・・・。」

 

対戦相手の爆豪の幼なじみでもある緑谷は少しでもアドバイスを送ろうと控え室へ来てくれたのだ

 

その優しさに心が温まる

 

しかしそれと同時に

 

 

 

ーーっ来い!ここから先は、僕が相手になってやる!!

 

(・・・ッ!!)

 

脳裏に浮かんだのは彼のこの前の勇姿

 

「・・・ごめん、デクくん。

 

アドバイス、別に要らないや。」

 

「え?」

 

本当に自分はまだまだ未熟者だ

 

「これは私の闘いだから、私の力で乗りこえたいの。」

 

目の前にいる彼は命の確証がない戦場へ友を救いたいという一心で飛び込んでいった

 

「・・・来てくれたのは本当に嬉しかった。

 

でも、ここからは自分でやるから。」

 

対して自分はなんだ、高々訓練の一貫で足が震えている

 

情けない。

 

「試合終了~~~!勝者、常闇踏影!」

 

それでデクくんやテリーくん達と並んで先に進もうなどおこがましい

 

「デクくん!

 

・・・決勝で会おうぜ!」グッ

 

上手く笑えてる自信はなかった

 

でももう迷いはなかった

 

彼の様な強さはない

 

けど、だからって逃げてはヒーローではない

 

勝つか負けるかなんてどうでもいい、どれだけ無様だろうと抗ってみせる

 

そして終わったらまた彼らの横に立って歩こう

 

 

 

 




次回、戦いは二回戦へ突入!熱戦は終わらない!
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