一回戦最終試合
爆豪勝己VS麗日お茶子
双方の事を知るA組は神妙な面持ちでこの戦いを見守っていた
単純に考えれば男子VS女子
そこだけでは測れないのがこの個性社会
先の八百万の様に個性を駆使すれば単純な肉体的性差なんてはねのけられるし、現にプロヒーローの中にも女性ヒーローは活動しておりヒーローチャート上位に食い込む者も存在する
しかしそれでも相手が相手だけに気がかりなのだ
対する爆豪勝己
とある事件をきっかけに一躍有名になった男だが、その個性の有用性はやはり素晴らしく
また彼自身もそれに驕ることなく鍛練を重ねている
更には初日から周囲に喧嘩腰で接し、そんな不遜な態度を押し通す程の実力を知らしめている
現在のA組にあっても上位に位置すると思われる男
故に
「お茶子ちゃん、大丈夫かしら・・・。」
特に親交のある蛙吹の言葉にだれも応える事ができなかった
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「おい、お前浮かす奴だな丸顔。
退くなら今退けよ、痛てぇじゃすまないぞ。」
「・・・そんな気持ちでここにはおらん!」
棄権を促したのは爆豪なりの優しさだろう、しかし麗日はそれを蹴った
「・・・そうかよ、だったら容赦しねぇ!」
開戦と同時に双方が仕掛ける
速攻
これが両者の出した攻略方法
麗日は五指で触れて浮かせる事で無力化を図るが
BOOM!!
「うわっ、エグい・・・。」
「女子相手にあれかよ!?」
手加減なしの爆破攻撃で宣言通り容赦なく攻め立てる爆豪
なんとか一矢報いようと必死の応戦で粘る麗日の姿にやがて観客の気持ちは爆豪へのブーイングとして発散された
しかし
「今言ったのは誰だ、プロか?何年目だ?くだらない事を言うのなら今すぐ帰って転職サイト見てろ!」
相澤の一喝により鎮圧
「ありがとう、最後まで油断しないでくれて!」
そんな中で試合は最終局面を迎える
麗日の秘策
爆豪の爆破によって破壊されたステージの破片を個性で浮かしてからの一斉解除
まるで流星群の如く爆豪に降り注ぐコンクリート片
誰もが期待した
麗日お茶子の大逆転劇を
しかし・・・
「デクのヤロウとつるんでッからなてめぇ、何か企みがあるとは思ってたが・・・危ねぇな。」
爆豪は自らの最大出力で正面突破してみせた
圧倒的実力、自らの捨て身の攻撃を看破されて打つ手無しの絶体絶命
「・・・フフッ。」
それでも
「・・・なに、にやついてんだよ。」
「あ、あの子・・・笑ってる!?」
「この状況でか!?」
笑顔を浮かべる麗日にプロヒーロー達も驚きをみせる
「テ、テリー君が前に言ったやろ・・・困難に直面したときほど、魂が燃え上がるって・・・!
ウチもそうなんや・・・いや、そうならないかんのや・・・!!
でないと、ウチは・・・みんなと並んで歩けん!!」
痛々しい姿で、切なる思いを叫ぶ麗日
「・・・そうかよ。
だったら、思いっきり叩き潰してやるよ!」
その思いを受け止めた上で全力で潰す事を礼儀と一気にとどめにかかる爆豪
BOOM!!
一際強い爆破が麗日を包む
あまりの威力に皆が目を背けるが
(手応えが・・・ねぇ!?)
麗日は自らに個性をかけ上に回避
そこから
「解除ッ!!」
爆豪の真上から落下すると
(この前のテリー君のように・・・!)
麗日がヒントにしたのはテリーが脳無に敢行した飛びつき腕ひしぎ十字固め
しかし麗日がそれを行うにはパワーが弱すぎる
(一ヶ所で極めきれないなら、何個も極める!)
左足を右腕に絡ませてフリーの上半身で左腕を手前から絞りあげ腰を無理やり捻る変形の卍固め
『未完成版・麗日スペシャル!!』ガギッン
「き、決めたー!麗日ここで逆転の必殺技!このままギブアップをもぎ取るのか!?」
「・・・いや。」
「ぐおおおおお・・・ッ!?」ギリギリ
(父ちゃん・・・母ちゃん・・・ウチね・・・。)フラッ
苦悶にあえぐ爆豪だが不意に解放されることになる
「時間切れだ。」
ドサッ
限界を越えて個性、肉体を共に酷使した麗日
あと一歩の所で体力の限界を向かえ脱力し爆豪の上から落ちてしまった
ミッドナイトがすぐにかけより
「麗日さん、戦闘不能。
勝者、爆豪くん!」
爆豪の勝ちが告げられた
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一回戦が全て終了
緑谷は麗日の身を案じながらも次の試合に向けて控え室へ向かう
「HEY!イズク。」
「テリーくん!」
自分の次に試合するテリーも控え室へ向かうと言うのだ
訳を聞くと
「あまり待ちが多くても良くない、少し体を動かしておかないとな。」
テリーと二人で控え室へ向かう
その道中で
「「「!!」」」
勝利を手にし観客席へと戻る途中の爆豪に鉢合わせる
「か、かっちゃん・・・。」
「なに見てんだ!殺すぞ、クソザコが!」
目が合うなり罵倒する爆豪
「ハッ、相変わらず騒音公害だなボンバーマン。
俺達は次の試合に向けて控え室へいくんだよ。
じゃあな、先に上で待ってるぜ。
行こうぜ、イズク。」
「う、うん。」
「おい、待てや。」
爆豪が呼び止める
「最後の策と技、てめぇらが教えたんか?」
「いや、僕たちはなにもしていない。」
「ああ、彼女一人の力さ。
お前は他の誰でもない麗日お茶子という名のFighterのSpiritに追い込まれたんだ。」
二人はそう言い残すと今度は振り返りもせず控え室へ歩き出した
その背に刺さるような視線を浴びながら・・・。
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二人がまもなく控え室へ着くという所で
「お、君達は・・・。」
前からエンデヴァーがやって来た
「二人一緒とは好都合だ。
君達に言いたいことがあってね。」
「おいおい、俺はまだしもイズクは次の試合だぜ?」
「ハハハッ、それはすまない。
しかし、君達の個性は見事だ。
オールマイトに匹敵するパワーの持ち主と、卓越した洞察力とテクニックの持ち主。
焦凍の同世代にこれ程のレベルの子供がいるとは思わなかった。」
「はあ、ありがとうございます。」
「焦凍はオールマイトを越える義務がある!
唯一無二の個性、あれを使いこなせればそれも難しくはない!
しかし、頑なに左を使おうとしない。
そこで、君達との試合はその有益なテストヘッドになるだろう。
是が非でもギリギリの状況まで息子を追い込んでほしい、そうすれば彼左を使わざるをえないはずだ。
・・・その為にもみっともない試合だけはしないでくれたまえ。
言いたいことは以上だ、試合前にすまなかったな。」
エンデヴァーは二人を通りすぎた
「僕は、オールマイトじゃありません。」
「そんなのは当たりま「当たり前のことですよね!」
「轟くんも、あなたじゃない!」
「安心しな、No.2 。あんたが大事に大事に育てた調教不足のチワワちゃんに、イズクがお灸を据えてくれるってさ。
あんたのお望み通り追い込んでやるよ、うっかり勝ってしまうだろうけどな。
そんで準決勝のカードは俺とイズクだ。
・・・行こうぜイズク。」
エンデヴァーは振り返るも二人はそのまま歩き始めた
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控え室
「テリーくん。」
「ああ、行ってこい。見ててやるさ、お前の
「さあ、いくぜ!
二回戦第一試合!!」
ワアアアアアアアアアアアアアアア!ッ!
「今大会トップクラスの成績でここまで来た両雄
緑谷
VS
轟
準決勝に進むのはどっちだ・・・START!!」
キィン
ブオオオ
「両者の初手は互いにブッパだーーー!!」
轟は一回戦と同様に巨大な氷山での拘束、短期決戦へと持ち込もうとするも緑谷は自らの指を一本犠牲にした攻撃で氷山を破壊
しかし轟はそれを見越したように第二波を放つ
が
「まだまだッ!」
更に指一本犠牲に破壊
その隙に轟が接近し近距離からの氷結を試みるも
「スマァッシュ!!」
「ぐっ!!」
無事な腕を丸ごと犠牲に放った高威力の一撃で粉砕
なんとか後方に氷の壁を展開し場外を逃れた轟は
「守って逃げてるだけでボロボロじゃねぇか」
冷静に戦況を見ていた
ーーー既に相手は手負い、このまま攻め続ければ勝ちは揺るがない
周囲も
「もうそこらのプロヒーロー以上だな。」
「流石No.2の息子って感じだ。」
轟優勢と見ていた
だが
(・・・震えている?)
緑谷は見逃さなかった
かすかな逆転劇の糸口を・・・
「悪かったな、ありがとう緑谷。
お陰で・・・奴の顔が曇った。」
「・・・どこを見ているんだ!!」
フィニッシュを決めようとした轟へ更に指を犠牲にしての攻撃
会場も驚きに包まれる
「個性だって身体機能の一つだ。
君自身も冷気耐えられる限度がある。
でもその問題も左を使えば解決できるんじゃない?
全力でかかって来い!
今の君じゃ、僕には勝てないぞ!!」
「・・・親父に金でも積まれたか?
お前に勝てない?なにふざけた事を言っているボロボロなのはお前じゃねぇか!」ダッ
(また近距離で一気に詰めて凍らせッ・・・!)
一気に攻め込もうとした轟に
「だあああっ!!」
「アーッと緑谷のカウンター!
生々しいのが入ったぞ!!」
「なんで、そこまで・・・!」
「僕は君の過去は知らない・・・。
君の心にあるわだかまりや苦悩は僕なんかじゃはかり知れないし
君の決心もわからないよ。
でも僕にだって譲れない夢があるんだ!
越えたい背中がある!
並びたい背中がある!
その為にも、僕は君を越える!」
緑谷の必死の反撃により会場の空気がにわかにざわめきだす
さっきまでの轟の勝利確定の雰囲気は緑谷の逆転勝利への期待へと変わっていく
その温度差は轟の心に孤独感として襲う
身体のダメージはそれほどでも心のダメージは時に致命傷に勝る
なにか打開しようと頭をフル回転する轟の脳裏に浮かぶのは
「・・・それでも、俺は、親父をッ」
「君の、力じゃないか!!」
ーーー(いいのよ、血に囚われことなんてない。なりたい自分になっていいんだよ。)
ボウ
「どうやらイズクのお灸が効いたようだな。
しかし、相変わらず無茶するぜ。」
「これは!?」
何度目かの戦況の変化に会場も食いつくように目を見張る
「・・・すっご。」
「お前、イカれてるよ。敵に塩を送って、追い込まれてるのに笑うなんて。
知らねぇぞ、こっち使うのは久しぶりだから加減が効かねぇ!」ゴォォォ
「うん、大丈夫。
全部受け止めて、それを越えていくよ!」バチバチバチッ
轟の体を炎が
緑谷の体を閃光が包み込む
最後の一撃
二人は声に出さずとも確信していた
(今のままじゃ足りないもっと、力を!)バチバチバチッ
「いくよ、轟くん!」ダンッ
閃光を纏ったまま緑谷は上空へと飛び上がる
(ジャンプでの高低差、ここに回転を加えて・・・!)
「ウアアアアッ!」ギュルギュルギュル
「緑谷決死の一撃だーッ!」
「なんてパワーだ、まるで緑谷の体が光の矢のように・・・!」
「・・・緑谷、ありがとな。」
轟も最大出力の炎で迎撃
二つの巨大エネルギーがぶつかり
会場は轟音と共に一気に霞の中へと姿をかえた
「な、なにが・・・?」
「会場の冷やされてた空気が今の熱エネルギーで一気に膨張したんだな。」
解説席のプレゼントマイクと相澤もあまりの威力に驚きを隠せないでいた
やがて霞が晴れると
氷の壁を背中に場内に踏みとどまっている轟と
「ナイスファイトだ、イズク。」
場外へ吹き飛ばされた緑谷とその緑谷が壁に叩きつけられぬ様に壁の前で受け止めているテリーの姿があった
「・・・ご、ごめん、テリーくん。
き、君との約束、守れなかっ・・・た。」
その言葉を最後に緑谷の意識は途切れ
轟の勝利が叫ばれた
○轟焦凍VS緑谷出久●(場外)
「フッ、こんな時までお前は他人の事を思えるんだな。
流石、俺の見込んだ男だよお前は!」
気を失った緑谷を抱えテリーは救護室へと向かった
その様子を見ていたミッドナイトはおおよそメディアに映ってはいけない状態だったとの事だった
次回、折れない体と揺るぎない魂、必然の激突!