奮い立てテキサス・ブロンコ   作:遊人

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孤狼の雄叫びと荒馬の嘶きの巻

観客席のざわめきを意に返さず持ち前の鋭い目つきのまま沈黙を貫く爆豪の前に

 

ヒュウウウ…

 

「…来やがったな!!」

 

一陣の風を伴いながらその男は姿を現した

 

「待たせたな。」

 

先程までの激闘のダメージを全く見せることなく爆豪の対面に立つテリー

 

「さあ、さあ、さあ!

 

遂に決勝戦だ!

 

ここまで圧巻の闘いぶりでここまで駆け上がってきた唯我独尊を往く神童、爆豪勝己!

 

VS

 

 

テキサスからやって来た義に生きる碧眼の逆輸入サムライ、翔野テリー!」

 

プレゼントマイクの気合いの入ったコールが告げられる中

 

「…ミッドナイト、少しでもヤバイと思ったらすぐにでも試合を止めろ。

 

婆さんの治療があるとはいえ限度がある。」

 

相澤はテリーの体調を考えて隣で静かにミッドナイトに指示を飛ばした

 

「待ってたぜ、金髪野郎!

 

てめえにはどうしても返さなきゃいけねぇ借りがあるからよ!」

 

獰猛な目つきで闘争本能を少しも隠すことなく発する爆豪に食って掛かる

 

「…かかってきな、ボンバーマン。

 

意外とかわいいお前の寝顔を今度は全国の皆様に見せてやれよ!」

 

すました態度でその言葉をいなすテリー

 

「…殺す!!」

 

「やってみろッ!!」

 

 

「試合開始!!」

 

 

ミッドナイトは二人の一触即発の雰囲気を察し早々と開戦を告げた

 

「死ねや!!」

 

「ぐおおっ…!」

 

ワアアアアアアアッ!!

 

「こんな一方的になるとは…。」

 

「やはりコンディションの差が大きいか?」

 

開戦と同時に壮絶な闘いが始まるかと期待していた観衆だが意外にも試合は一方的な展開を見せていた

 

「おらっ!」

 

「ぐわっ…フンッ!」

 

爆豪の攻撃を受けテリーも反撃に拳を振るうが

 

「おせぇ!」ボムッ

 

爆豪は個性を使いすぐに射程外へと退いてしまった

 

「あ~~~っと!!爆豪の個性を巧みに使ったヒット&アウェイ!

 

こんな展開を誰が予想した!?翔野テリー防戦一方!」

 

「爆豪はここまでほぼノーダメージで来ているがテリーは真っ向勝負を続けてダメージの蓄積がある。

 

少しばかり体が重そうだな。」

 

爆豪有利の状況を淡々と実況する相澤だがあることに気がついていた

 

(確かに状況はかなり爆豪に有利だ、だが…。)

 

(焦っている。あのかっちゃんが、まるでなにかに追い立てられているように…!)

 

そしてそれは幼なじみの緑谷の目にもはっきりと見えていた

 

言葉や態度こそいつもと変わらないが時折見せる僅かな表情の強ばり、語尾の震え

 

(まさか、怯えている…?あのかっちゃんが!?)

 

 

 

 

「おらあああっ!!」

 

「ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ!

 

ここを勝機と見たか爆豪、攻撃の手を一切緩めない!

 

このまま優勝をかっさらうのかぁ!?」

 

プレゼントマイクの興奮した実況が耳に入ってくる

 

そうだ、このまま行けば自分の勝ちは揺るがない

 

前回と違い今回は小細工なしのフィールドでの一騎討ち

 

最大限の警戒を払い相手を圧倒してそのまま勝負を決める

 

現に今の戦況は自惚れでもなく自分が押している

 

なのに…

 

なのにっ!!

 

「…………。」ニヤッ

 

その表情に、その(まなこ)の奥に揺らめく希望の灯火が爆豪の神経を逆撫でる

 

「なに余裕ぶっこいてんだごらあああぁぁぁッッッ!!」

 

「え、えぐい一撃が入った~!!

 

おいおい、さすがにやべぇんじゃねぇか?」

 

激情のままに爆撃を叩きつけられたテリーの身体から黒煙があがる

 

ビュンッ

 

「チッ!?」

 

その黒煙を破る反撃の拳をバックステップでかろうじて避けた爆豪は更に距離をとろうと個性を使うが

 

「ッ!?」ガクンッ

 

身体に思いもよらない急ブレーキがかけられる

 

「…へっ、こっから先は俺の時間だ!」

 

 

『叛乱の制服ッ!』

 

 

 

「な、なんと翔野テリー自らの上着を帯状にして爆豪の足に巻き付けた!

 

その姿はまさにカウボーイ!

 

でもこれありなのか?」

 

「自らの着衣を使っているためなにも問題ないわ!」

 

「はっ!」グインッ

 

「ぐあっ!?」

 

力いっぱいに引かれたジャージに導かれるように爆豪とテリーの距離は縮まる

 

「ユ――――スッ!」

 

ゴキャッ!

 

「ぐほあっっっ!!」

 

「こ、今度は翔野テリーのラリアットが爆豪を撃ち抜いた!

 

とんでもない音がこっちまで響いてきたぜ!」

 

テリーの反撃の狼煙となる一撃に会場の熱気も上がっていく

 

胸へ強烈な衝撃を食らい背中から叩きつけられた爆豪が一瞬、思考停止に陥る

 

 

グイッ

 

「はっ!?」

 

その一瞬はテリーが次の技へ移行する為の時間としては余裕過ぎるものだった

 

テリーは未だに片足に巻き付いていた制服を巧みに捌き爆豪の体をうつ伏せにすると両足に制服を一気に巻き付けボストンクラブ(逆エビ固め)のようにクラッチする

 

『ウォールオブテキサス!!』

 

バギィィィィッ

 

「ぐおおおおおおッ!!!?」

 

爆豪の悲鳴が響き渡ると共に観客席も目を背けるものたちが現れた

 

「くっくそがあアアアアアア…!!」

 

爆豪は苦悶にあえぎながらもなんとか脱出を試みようとするが

 

「ふんぬッ!」グググ…

 

そうはさせじとテリーも深く腰を落としていく

 

腰の反りがキツくなる様を見て観客たちも息を飲み、ある者は目を背け更には試合をもう止めるべきだと叫ぶ者まで現れた

 

「爆豪くんギブアップ!?」

 

「だ、れが…するがアアアアアアッッ!?」ギリリッ

 

必死に反攻の意思を示す爆豪だったがテリーが腰を沈める程に苦悶の声が漏れ出てくる

 

ミッドナイトが流石に不味いとレフェリーストップをかけようと思案した特

 

「……グゥッ!?」ズキィッ

 

「ッ!?、おらああッ!!」ガバッ

 

不意にテリーの拘束が弱まりその隙に拘束から抜け出す爆豪

 

「食らえや!!」

 

「ッ!!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「はあっ…はあっ…!」タタタッ

 

「ポニー、起きてそんなすぐ走ったら危ないよ!」

 

テリーに当て身を食らい気を失っていたポニーは医務室で目をさましモニターに映る決勝戦を見るや観客席へと付き添っていた拳藤の制止も聞かず走っていた

 

急いで階段をかけ登り熱狂を産み出している中心が視界に飛び込んできた

 

「ば、爆豪の特大爆破が炸裂~~~ッ!!」

 

 

 

 

 

「テリ――――――ッ!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

ピキィッ

 

「づッ!?」

 

テリーへ放った爆撃の威力に手応えを感じた爆豪だか先程までの腰へのダメージは確かに体に刻み込まれていた

 

(だが関係ねぇ!今ので、終いだッ!)

 

「テリ――――――ッ!!」

 

グワッ

 

「ッ!!」

 

観客もそして対戦相手の爆豪ですら息を飲んだ

 

ガシッ

 

爆撃の黒煙をかき分け現れた両手は爆豪の髪を掴み

 

「づあっ!!」

 

続いて現れた頭と頭がぶつかる

 

ドチャ…

 

「て、てめぇ…!」ツゥー

 

「悪いな、ボンバーマン。勝利の女神を…泣かせる訳にはいかんのでな!」ポタポタッ

 

「り…流血!!今のヘッドバッドで互いの額が切れた~~ッ!」

 

 

 

付き合わせた額と額の間から流れ落ちた血がコンクリートに赤く咲き乱れる

 

 

「し、しかしなんちゅう技を…。

 

おいおいイレイザー、今年の1年どうなってんだ?こんな血の流れる大会初めてだぞ!?」

 

「…別にプロヒーローになればそんな闘いなんてよくある話だ、最近プロヒーローになったばかりの奴らにも思い出させるいい機会だろ。」

 

相澤の言葉に嘘はなかった

 

華々しく勝利し人々の支持を集め憧れの的になる。

 

そんなのは副産物であり本来のヒーローとはどんな時でも、どんな相手で勝利を掴みとりに行く者だ

 

そんな言葉を生徒のみならずプロヒーロー達は反芻していた

 

「そらもう一発ッ!」

 

ゴチャッ

 

そんな中で再び額と額がぶつかり水気を含んだ鈍い音が響く

 

 

「グガッッ!」ガクッ

 

たまらず片ひざをつく爆豪

 

(くっ………そ………がぁ……!!)

 

「かっちゃん!」

 

たまらず緑谷が声をあげる

 

ガシッ

 

しかし朦朧としている爆豪の髪をつかんだテリーは

 

「ぬあっ!」

 

ナックルパートをを爆豪の額の切り傷に叩き込んだ

 

「あ~っと、翔野がいった~ッ!!」

 




次回、テリーがこのまま押しきるのか…!
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