「なにっ!?」
「えっ!?」
呟かれた言葉は予想外のものだった
「……グロロロ、ステインよ。相手を推し量る故に詰めが甘くなるところが悪い癖だと教えた筈だぞ。」ドサッ
「も、申し訳ありません…。」ドサッ
互いの頭を強打し出血した中で見えた真実
「こ、これは一体……?」
「し、主従関係が逆転してる…?」
突然の出来事にテリーと緑谷にも戸惑いが生まれる
「……さて、もうこの姿でいる必要はないな!」ムンズ
バキバキバキッ!!
武道は自らの面を鷲掴み引き裂いていく
「…遙か昔、個性が生まれし時。安寧は崩れ世界は少数派閥を排除しようと争いが生まれた。
しかし、やがて世界の大局が覆ればその逆を行い!
果てには異能者同士での飽きることのない戦いの日々!!
そしてそれをショーと化して煽る不逞の輩共!!」
バサッ
隠されていた髪と髭があらわになる
「…我が名はネプチューン・キング!いつまでも善、悪と醜い争いを続け、それを煽り真の安寧をいつまでも築こうとしない現世に終止符を打ちに来た超越者也!!」
面の下に現れたのはまたしてもマスク
「真の平和に導けるのはヒーローではない!!
正義も悪も全てを圧倒し制圧することができる
しかし見た目の変化よりも二人が感じたのは武道、もといネプチューン・キングの纏う空気が一変したことだった
「マスク狩りもその一端に過ぎぬ!真に力ある者が世界の覇を得る!その道理をここに復活させる!!」
「力を憎み力で持ってそれを抑え込むってか…。」
「そ、そんなことしても世界は変わらない!
結局誰かが涙を流して新たな争いの種になるだけじゃないか!!」
ネプチューン・キングの声明に声を荒らげる緑谷だったが
「やめておけ、この手の奴は理屈や言葉での説得など無意味よ。このリングで、勝利で持って説き伏せるしかない!」
カメハメが鎮めた
「さぁお喋りはここまでだ!行くぞ小童ども!!」グワッ
「迎撃だ!イズク!」ボァァ
「うん!」バチバチッ
『『ツイン・テキサススマッシュ!!』』ドゴォォォッ
再びのキングのショルダータックルとテリー・緑谷組の拳がぶつかる
(お、重い…ッ!!)
(テ、テリーくんと息を合わせても互角ぐらい…!?)
「グロロロ、先程まではステインを立ててやる為に少し手を抜いていたにすぎん!」
ガシッ
ガシッ
「ここからが我の本領発揮よ!!」
キングの大きな両手が二人の頭を掴みそのまま足を払う
『万砕落とし!!』ゴシャ
「な、なんと!アイアンクロー式の変形チョークスラムで二人まとめて後頭部から叩きつけてしまった!!なんと言う腕力でしょうか!!」
「まだ終わらんぞぉ!!このまま一気に試合を決めてくれる!!」バッ
武道は二人の頭から手を離すとそのまま跳躍しエルボードロップを見舞うも
「クワッ!」サッ
「うわぁ!」サッ
ゴガンッ
二人は横に転がり回避
そこから素早く立ち上がり
「今度はこっちの番だ!」
「喰らえ!!」
『クロス・延髄!!』ドゴォッ
エルボードロップからの立ち上がり際、打点が低くなった所を狙いすました蹴りで前後から挟み込む
(き、決まった!!)
(これなら……ッ!?)
「グフォッ……
効かぬわぁッ!!」クワッ
ツープラトンを食らってもなお猛然と立ち上がる武道はそのままロープへ走り
「お前ら如きのガキ二人が力を合わせたところで我の牙城は崩せんわ!!」
加速をつけたまま両腕を広げ二人まとめてラリアットで薙ぎ倒そうとする
「くそっ、そう何度も食らうかってんだよ!!」ググ
二人が再度迎撃しようとすると
「力みすぎた、二人とも。」
カメハメが声をかけた
「ここぞの場面で必要なのは、大胆ではなく細心、力ずくではなくしなやかな脱力!!
ライオンの狩りと同じ、さすれば活路は見えるはずだ!!」
「大胆ではなく細心……。」フッ
「力ずくではなくしなやかな脱力…。」ダランッ
迫りくる武道の丸太の如き剛腕を前にして二人が構えを解いた
「グロロ!恐怖のあまり血迷ったか!このまま轢き殺してくれる!!」ドドドド
「あ、危ない!!」
堪らず飯田が声をあげるも
「…!
見えた、テリーくん!」バッ
「ああ、任せろ!!」ユラッ
緑谷は声と共に後方へバク宙しロープへと飛んでいく
残ったテリーは
「グロロ、一人は逃げたか。ならば貴様だけでも死ねぇ!!」
(ライオンの狩りの如く、その意味する所は細心の観察と)フワッ
「なにっ!!?」
武道のラリアットが直撃する刹那、脱力しタイミングを合わせて後方へ軽く飛んだテリーの体は柳の枝の如く武道のラリアットをいなし
「しなやかな脱力が生む機を逃さぬ一点の集中力にあり!!」ブアッ
そのまま腕に絡みついたと思えば体を横向きに飛びつき背中を超えた両足が逆の腕を絡みとる
「ぬおぉっ!?」
「タイミングはどうだっ、イズク!?」
「バッチリだよ!テリーくん!!」
そのままロープに降り立ったイズクはしなるロープの反動を利用しミサイルの様に武道にめがけて突っ込んでいく
(ここで一気に終わらせる!出し惜しみは……なしだ!!)
『デラウェア・スマッシュ!!』バギィッ
そのまま緑谷の個性をフル解放した拳がキングに突き刺さる
「ブゥフォォッ!!」グラッ
そのまま後ろによろめくキングに
「まだまだ行くぜ!!」
テリーが加速をつけて回転十字固めで後頭部から落としていく
『
後頭部が鈍い音を上げてマットに打ち付けられる
「まだまだぁッ!!」サッ
テリーは素早く技を解くとすぐさま立ち上がり次の技へ移行する
「イズクもう一度、今度はコーナーに登れ!!」
「わかった!」
テリーの声に呼応するように緑谷はコーナーへ駆け出す
「いくぞ!!」ザッ
テリーは相手の脇に足を置くとそのままブリッジをしてキングの体を押え込む
「イズク!」
「たあっ!!」バッ
そこへコーナーへ登った緑谷がムーンサルトプレスでテリーの上へ落ちていく
『『ジャパニーズ・レッグロール・ホールド!!』』バスンッ
ギリギリギリ…!!
「ぐおおおおおォォォッ………!!」ゴキゴキゴキッ
「むりやり抑え込まれていたヴィランの体がさらに締め上げられていく!!
このままいけば確実に相手は堕ちていくでしょう!」
テリー・緑谷組の猛攻に勝利の匂いを嗅ぎ取ったアナウンサーも実況に熱が入る
「だああああああああッ!」バシッ
「ぐわッ!?」「あだっ!?」
しかしここでステインがカットに入りキングを救出
「武道様!ご無事でしょうか!?」
連続攻撃を喰らいダメージを負ったキングに寄り添うステインだったが
「…………遅いわ!この愚か者がぁッ!!」ボグッ
「グフゥッ…!?」
キングはボディブローを無慈悲に突き刺した
「なにを呆けておったのだ、このバカ者!
お主にその武を授けたのは誰だ!
誰のおかげで貴様の野望の歩みは始まったのだ!
さっさと助けにこんか、この恩知らずがぁ!!」ビスッ ドスッ
ボディブローを喰らいうずくまるステインに激怒しながらストンピングを叩き込むキング
「な、なんて奴だ「やめろぉぉぉ!!」…ッイズク!?」
「ムンっ!?」
堪らずに駆け出した緑谷のパンチを腕を胸の前でクロスしガードするキング
「なんでッ…なんでそんなことができるんだ!?
お前を助けてくれたんだろ!?
味方なんだろッ!?なんでそんなひどい事ができるんだよ!?」バチバチバチッ
「ガキが!知ったような口を叩くな!!」グググ…
「み、緑谷…出久……っ!」
両者の鍔迫り合いそこへ
「ガキだろうが、お前の行いは許してはいけないことぐらいの分別はつく!!」ムンズ
ガンッ
緑谷に気を取られていたキングの髪を鷲掴みテリーのベッドバットが炸裂する
「ガキと侮ると痛い目見るぜ!裸の王様よぉ!!」
「お、おのれぇぇぇ!
再三再四、我に楯突くかぁ!!このガキどもがぁ!!」
ベッドバットを食らった箇所を押さえながらも立ち上がる
「ぶ、武道様…ひとまずここは私が「ええい黙れ!」
「元はと言えばステイン!貴様がさっさと止めを刺さぬからこうなるのだ!
そんな奴が我に、指図するな!」ゴガッ
ステインの庇うような言葉に苛立ったキングはステインに対しショートレンジのラリアットを食らわす
「グフォッ……、ッアアアッ!?」
そのあまりの威力にステインの体はトップロープをゆうに乗り越えエプロンの更に外、つまりは空中へと放り出されてしまった
「危ない!」 「間に合えっ!!」
落下するステインの手首を緑谷が掴みその緑谷の空いた手をテリーが掴む
「てぇいやっ!!」ガシッ
そしてエプロン再度に捕まり落下を阻止する
「な、なぜ助けた…。」
「……そんなのわかんないよ!!でも気がついたら体が勝手に動いてたんだ!!」
「ああ、そうだなイズク!この身の内側にある何かがそうさせるんだ!このリングで相対したのならこのリングで決着をつけろとな!!」グググ…
テリーは片腕に力を込めてリングに上がろうとするが
「グロロロ。つくづく甘く、つくづく難儀なものだなヒーローと言う奴は!!」ガンッ!
「ぐあああああッ!!」
「テリーくん!!」
キングがテリーの手に向かいストンピングで踏みつける
「やめろ!そんなことをすればお前のパートナーであるステインも落ちてしまうぞ!!」
テリーが声を荒らげるが
「グロロロッ!それがどうした!あんな役立たずはいずれ我の枷になることは明白!ならば遅かれ早かれいずれは切って捨てる運命よ!むしろ、ここで貴様らを葬るのに一役買ったことが唯一の我に対する報いよ!」グリグリ
そう吐き捨ててテリーの手の甲を踏みにじるキング
(な、なんて奴だ!このままじゃテリーくんが…ッ!!なんとかできないのか!?せっかくオールマイトから力を譲ってもらったってのに!こんなにも僕は無力なのか!!)
「……、おい。緑谷出久。」
自らの無力に打ちひしがれる緑谷にステインが声をかけた
「グロロロ。し、しぶとい奴だ!さっさと楽になればいいものを!!」
「グウゥッ、テキサスの男ってのはそう簡単にはくたばらねぇんだよ!!」
散々にストンピングを繰り返しても決して手を離さないテリーに悪態をつく
「ならばその意志が途切れるまで踏みつけてやるのみ!!」
キングが再びストンピングを再開しようとすると
「スマッシュ!」ブォン
ゴウッ!
急な上昇気流がキングを襲い
「シャアアアア!!」シュバ
その勢いに乗じてステインがキングに飛びかかる!
『決別のガウジング!!』
キングのマスクに爪を立てて掻きむしり首に乗りかかる様にキングにまとわりつく
「ス、ステインッ!?貴様!!」
「武道様!ここまで育て頂いた大恩、感謝いたします!
ですが!あなたのこの闘いでの行いは私が貴方様を粛清の対象にするには十分でした!
私の目指す理想のため、貴方に育てられたこの身で持って貴方を処します!!」
「あーっと!!どうしたことでしょうか!?ここに来てブラッド・ミッショネルズが仲間割れ!!」
「ええい!この駄犬め!噛みつく相手を間違えればどうなるか!」ガシッ
「教えやる!!」ドゴオオオンッ
「カハッ!!」
キングがまとわりつくステインをパワーボムで叩きつける
「貴様の様な奴はもう不要だ!我自らの手で地獄に落としてやる!」ガシッ
ギリギリ、ギリギリ
「ガハァ、グッ、グブブブ……ッ!!」ザジッザシュッ
キングのチョークにより気道を締め上げられるステインは藻掻く様にキングの手を引っ掻く
「てめぇの相手は!!」
「僕たちだ!!」
ドカガッ
後方から無防備な背骨にむけてお返しのショルダータックルを当て込む
「ぬおおおッ!」
「があっ!!」バスンッ
その威力に耐えかねて手を離したキングによってステインの体はコーナーポストに激突する
「ヌウウゥゥ!!ならば望み通り貴様らから先に滅してくれよう!!」
キングがテリーと緑谷にむけて駆け出すのを確認したステインは
ゾアアァァァ……ッ
「グオォォッ!?ス、ステインッ貴様!!」ガクッ
「……。」ニヤッ
「な、なんだ!?」
「動きが鈍くなっている!?」
これから決着にむけて最終局面へと来た途端に拍子抜けするほどにキングの動きが止まる
「今だ!こいつは今、俺の個性で動けない!ここで決めろ!!」
「ス、ステインッ!」
「早くしろ!この個性も長くは保たない!!」
「……行くぜ、イズク!!」
「……うんッ!!」
「グオォォォッ、動け!動かんか!」
ガシッ
「こいっ!イズク」グワアッ
「よしっ!」
テリーは武道を掴んだまま空中へ飛び上がり
「テリーくん!テキサス・クローバー・ホールドをかけてひっくり返すんだ!」
「よっしゃ!」ガキッ
テリーが空中で足を極めていく
クルッ
「これでいいか!!」
「ここから……、こうで、こうなるから、そこでこうすればっ最大限活かしきれる!!」シュバ
それと同時に緑谷も首4の字で加わり急降下していく
「な、なんだこれは!!首折と足折、更には腰折もミックスされた超複合技だ!!
雄英高校コンビ、これが決着の一撃になるか!!」
「こんな…こんな小童共に!我の野望が閉ざされるのか!!」
「諦めろ!キング!!」ボォォォ
「王を騙りながら自らの側にいるものすら大切にできず、歯向かわれる様なものに手に取れる勝利などない!!」バチバチバチッ
テリーと緑谷の体からほとばしる光が力強さをます!
『『アドレナリン・ブリッジ!!』』
ベリベリベリッ!!
「ゴパッ」プシュッ
ピシビシビシッ
キングは技の威力に耐えきれず血を吐きマスクは無惨に亀裂が走っていた
「決まった〜〜〜!」
アナウンサーも目の前で炸裂した大技にテンションがうなぎ上りになっていた
ドサッ
「あ、ああ……。まだ…お、終わらんぞ……!
覇道を……我が手中に覇を得るまでは……ッ!」
「いえ、終わりましょう、武道様。」シュッ
カッ
ステインの空手チョップがキングの面に沈む
「あ、あああッ!!」ピシピシッ
「私達の描く平和の理想は彼ら描く平和の未来に破れたのです。
これ以上の醜態は見逃せません。」
「ス、ステインッ!貴様!!」バキバキバギッ
「先に地獄でお待ちください!私もいずれそちらに向かいます。」
バキャン
とうとうネプチューン・キングのマスクは破壊されてその素顔が露わになる
「あ、ああ……あ…。」
そこに現れたのは痩せこけシワまみれのみすぼらしい老人だった
「こ、これが…武道の素顔…ッ!!」
「あれだけの装備に身を包み完璧を自称するが中身は虚栄と私欲に塗れたミイラだな。」
「あ……あ……ッ!」ドサッ
緑谷とテリーのつぶやきを聞き終えるとキングの巨体は倒れ伏し完全に動かなくなってしまった
そして…
「………。」
「ステイン……ッ!」
こと切れたキングの体を見ていたステインに二人が近寄ろうとするとステインは手を出して制した
「……俺は自らの思い描く未来が間違っていたとは思わないし、やってきたことも道こそ踏み外せど誤りとは思わん。
だから命乞いはしないし、情けをかけられるつもりもない」サッ
「「ッ!!」」
二人に向き直ったステインは戦闘の構えを取る
「俺は野望を掲げ、自らの野望に殉ずる覚悟の元で闘い様々なものを駆逐してきた!ならば最後の最後まで貫き通すのみ!!」
「イズク……。」
「……テリーくん!」
ステインの目を見た二人も覚悟を決める
「いくぞ、これが最後だ!!」ダダダッ
ステインの捨て身の突進を
『ツイン! ボォォォ
テキサス!』 バチバチバチッ
『『スマッシュ!!』』
ゴウッ
二人の拳がステインの体に叩き込まれた
「グフゥッ…………ッ!!」ゴポッ
ヨロッ
ヨロッ
「み、見事だ……!"真のヒーロー"足る者達よ……ッ!!」
ドサッ
「決着だ〜〜〜!!この激闘を制したのは雄英高校コンビだぁァァァ〜〜〜!!」
次回、職場体験編終了!