「勝った……。」
「ああ、俺達の勝ちだ。イズク。」
激闘の終わりとは裏腹に決着後のリングはひどく静かに思えた
ガクン
「おわぁぁっ!?」
「リングが…。」
リングが下降していきビルとビルに架かる様に降り立った
「よくやった。これで卵に少しばかりヒビが入ったってところかの。」
「師匠…。」
「今後お主達の前に立ちはだかる者たちの中には歪ながらも強固な情念を纏ってくる者達もいよう。
各々の事情はあれどそれが平和を脅かしてよい理由にはならん。
お前達は今日、それを上回る信念で制した、これを忘れてはいけぬぞ。」
「はい。」
「あ、ありがとうございます…。」
「緑谷くん!翔野くん!大丈夫かい!!」
降り立ったリングにカメハメと少し遅れて飯田が入ってくる
「おお、委員長。」
「飯田くん…。」
「二人とも申し訳ない!僕の心が未熟だったばかりにッ……!」ガバッ
飯田は深く頭を下げる
「僕は……、僕はッ悔しいがステインの行った通りまるでヒーローとはかけ離れた行動をしていた!
復讐という野心に駆られ我を忘れヒーローとして大事な事を見失ってしまっていた……。」
「……ごめん。僕も、君がそこまで思い詰めていたなんて知らなくて……。」
「……ッ!!」
「……さぁ、反省会はそこまでにしてはよ降りよう。さっさと病院へ行くぞ!」パンパン
カメハメが手を叩き空気を変え戦いの始末をつけようとしたところに
「緑谷!テリー!大丈夫か!!」
「轟くん!」
「おぉ、轟!お前も来ていたのか!!」
「すまねぇな、親父に付き合わされてなかなか離れられなくてよ。
もうすぐ親父もこっちに来るからそこの二人は任せてお前らは早く降りたほうがいい。」
「あぁ、そうさせてもらおうかな。」
そこへ
「くおぅらぁぁぁッ!!じっとしとけと言っただろうがァァァ!」
「グ、グラン・トリノ……。」
「フッ、相変わらずやかましいな、空彦。」
グラン・トリノが個性を駆使してリングに現れた
「あぁッ!?
ってあんたか、隠遁しとったんじゃないのか。カメハメ?」
「それはこっちのセリフだ、あれだけ面倒事を嫌うあんたが人にモノを教えるなんてどんな風の吹き回しだ?」
「あれがイズクのとこのヒーローか、なかなかファンキーだな……。」
「テ、テリーくんのとこもね……。」
悪態を付き合う二人を見て苦笑いを浮かべる弟子二人だった
「まったく、いつまでも口の減らない奴だ!
……おい、エンデヴァーのとこの倅っ!とりあえずこのヴィラン二人をリングから下ろすのを手伝え!
チャッチャッとこのリングを撤収するぞ!」
「は、はいっ。」
グラン・トリノの勢いに押された轟は撤収作業に加わることになった
「……さぁ僕達も下りよう。」
「そうだな。」
「うん。」
こうして戦いの終わったリングは無人となり撤収されていった
更にはそこへエンデヴァーも駆けつけた
「おっ、やっと来おっな。」
「遅かったのう、№2」
「ええい、やかましい!そこのロートル二人!!」
グラン・トリノとカメハメの小言に反応しながらもエンデヴァーはステインと武道の元に歩み寄る
「むぅ、これがあの
映像が残っているらしいがにわかには信じられんな。
まぁ良い、とりあえずこのヴィランを警察に突き出すと……っ!!」
パシッ
「なっ…ッ!!」
エンデヴァーがステインを掴もうとするとステインはその手を払った
「ス、ステインッ!?」
「あいつ、まだやろうってのか!」
「チィ!」ピキピキピキ
「二人とも下がれ、ここは僕が…ッ!」ドルル
「ええい、子供は黙ってろ!
ステイン、既に勝負はついているぞ!
これ以上の抵抗はこのエンデヴァーが相手になるぞ!!」ボォォォ
ユラリッ
ステインはゆったりと立ち上がると
「エンデヴァー、贋物である貴様にこの首を手柄として渡すわけにはいかん!!
俺を打ち負かしたのは後ろの二人だ!!
俺はその二人に敗れたのだ!!
貴様が警察に突き出し貴様の手柄とされるなど御免被る!!
俺を連れて行くのはそこの二人であるべきだ!!」ゾアアァ
「ッ!?」
敗れ満身創痍ながらも吐き出す殺気に怯むエンデヴァー
そこへ
「……個性を消せ、エンデヴァー。
おい、二人!
……ご指名だ、ヒーローは敵を打ちのめして終わりではない、こうやって警察に引き渡すまで責任を持つものだ。
最後までぬかるなよ。」
「…はいっプリンス・カメハメ!」
「わかりました!」
カメハメの声で進み出た二人はステインの腕を抱え警察が待つ所へと連行していった
「……一連の"マスク狩りヴィランによるヒーロー襲撃事件"の決着が着きました。
そのヴィランを倒したのは皆様も記憶に新しいあの雄英高校隊体育祭の優勝者"翔野テリー"と決勝進出者"緑谷出久"のコンビでした!」
ヘリコプターの取材班は変わらずに一部始終を収めようと中継を続けていた
「……おい、小僧共。」
ビルから降りて輸送用のパトカーに向け歩くステインは脇を固める自分を打ち倒した二人に声をかける
「俺は、貴様らに"真のヒーロー"と"新たな平和を成す力"を垣間見た。そこに俺は敗れたのだ。
もし貴様らがここらにのたまう有象無象達に飲まれその心を亡き者にしたときは……例え地獄の底からでも這い上がり貴様らの喉元を掻っ切ってくれる!!
努々、忘れるなよ。」
「……あぁ、お前の目が節穴じゃなかったって俺とイズクは証明し続けてやるよ!」
テリーの言葉を最後にパトカーの元へたどり着く一同
ステインの身柄は警察に引き渡されパトカーへと乗せられていく
「……なぜだろうかな、最後にこんな言葉を思い出すとは。
お前らにせっかくだから教えといてやる。
古いドイツの諺だ。
"二人というのはいいものだ、楽しい時は2倍楽しめ…そして悲しい時は半分で済む"
フッどうにも様にならんな……。
おいッ警察共!!さっさとブタ箱でもどこでも連れて行け!」
こうしてステインはパトカーに乗り警察署へと連行されていった
「テリーくん。ステインの最後の言葉、敵の言う事でこんなのはおかしいけど、僕は絶対に忘れないよ。」
「あぁ、俺もだ。」
「……さぁ二人ともご苦労だったな!あとの事は№2ヒーロー様に任せてお前らはさっさと病院だ!」
こうして二人はまた一つ死線を越えてヒーローに向けて大きな一歩を踏み出した
「…………冷静に考えたらすごいことしちゃったね僕ら。」
激闘の次の日
あの後、テリー・緑谷・飯田は搬送された病院で治療を受け入院する運びとなった
「ああ、職場体験だってのに実戦をする羽目になるとはな。」
「だが君たちが来てくれなければ···僕は今ここにはいない。
本当に感謝してもしきれないくらいだ。」
三人が昨日の激闘を思い返すような会話をしていると
「入るぞ、起きてるか怪我人ども。」
グラントリノを先頭にカメハメ、マニュアルと職場体験の責任者ヒーローが顔を揃えて病室に入ってきた
「今回の件に関してはグチグチ言いたいところだが、その前に来客だ。」
三人に遅れて部屋に入ってきたのは
「保須警察署署長、面構 犬嗣さんだ」
「警察······署長ッ!?」ガバッ
「ああ、掛けたままで結構だワン。」
突然の来訪者に三人にも緊張が走る
「今日来たのは他でもない、昨日の
曰く
「今回の個性を使用しての戦闘行為はこちらのプリンス・カメハメの許可の元で行われた、それに関しては法的には一応問題はないワン。
だが倫理的にはと言われれば一考の余地が生まれてしまうワン。」
今、世間でもっとも名を響かせているヴィランコンビとの戦いは正に死闘と表されてもおかしくないものであり勝ったからよかったものの負ければ若き命が潰えてしまう恐れもあった
「しかもその映像はリアルタイムで放送され多くの人に視聴されているワン。
ともすれば厄介なものでリングに立ったのが高校生であると言うことに物申す人もいるわけで······勝ってよかったハッピーエンド。とはいかなくなってしまっているんだワン。」
「それじゃあ何か?あんたは俺とイズクが命をかけた行為が間違ってるとでも言いたいのか!?
あのまま規則だからルールだからって理由でむざむざ友を見捨てて、自分達の命まで無抵抗で差し出せってのかよ!」
「ちょちょちょ、テリーくん·····」
「落ち着かんか、テリーよ!」
憤慨するテリーだったがカメハメに制される
「······まったく若いってのはうらやましいワン。
さっきも言った通り法的にはなんの問題もないから君達には何も言えないワン。だけど警察としてもこの一部の風評を無視するわけにはいかん、そこで······。」
「このプリンス・カメハメが責任をとる、という訳だ。」
プリンス・カメハメのヒーロー免許剥奪
これでこの騒動にけじめをつけようとなったのだ
「そ、そんな!!なぜッ!?」
「よいのだ、テリーよ。これも上に立つ者の責任だ。」
「し、しかしそれでは······。」
「それに免許がないからと言って指導者としての道は残されている。
もう儂も歳だ、ここらで落ち着かせてもらうとするよ。」
「······君達にはしこりが残る結末になってしまい本当に申し訳ないワン。
せめて、なんの慰めにもならないかもしれないが······平和を愛する者として、そしてそれを共に守る警察を代表して
ありがとう。」
そういうと署長は深々と頭を下げた
「ほれ、大の大人がこうして頭を下げてくれとるんじゃ。これでこの話はおしまいじゃよ。」
こうしてこの騒動は幕を閉じ数日後にはテリー達は退院しそれぞれの体験先へと戻り後片付けを行うことになった
職場体験最終日
「プリンス・カメハメ、本当にありがとうございました。」
「おう、これからも精進するのだぞ。」
「··················。」
別れの挨拶を終えてもいまいち釈然としない顔のテリー
「テリーよ、今回のことでわかったはずだ。
大いなる力には大いなる責任が伴うと。
くよくよする暇があったならはよ立派なヒーローになって儂を安心させておくれよ。」
「······わかりましたカメハメ!あなたの紡いできた平和の意志、俺が引き継ぎます!!」
カメハメの言葉と覚悟を受けテリーもまた己の中で一つけじめをつけたのであった
「それではまた!」
「達者でな。」
こうしてテリーはカメハメの元を去っていった
pipipi pipipi
「ムッ?」
テリーの姿が見えなくなるやカメハメの携帯がなる
pi
「······おお、あんたか。
久しいな、このタイミングで電話するということは何かあるな、お前との付き合いもそれなりに長い。何かたくらんでる位のことはわかるさ。
それでこの無職になった老いぼれになんの用だ?
············ホウッ?なるほど、それは一興だな。
わかった、こちらも支度を整えて近いうちにそちらに出向くとしよう。」pi
その会話で電話を切ったカメハメ
「フフフ、思ったよりも早い再会になりそうだな!」
カメハメの視線の先はさっきテリーか去っていった方角を見つめていた
「くそがぁっ、くそっくそっくそっ!!」
「··················。」
死柄木弔は荒れていた
自身も脳無を投入し介入した保須市での騒動
しかし蓋を開けてみればメディアで取り上げられるのは
自分の存在を承認されない苛立ちが死柄木を狂わせていた
まるで子供の癇癪のような地団駄に黒霧は無言で見守るしか出来なかった
「ありゃりゃ、荒れてるねぇ。お宅んとこの大将は。」
「······いらっしゃいませ、義爛様。」
そこへバーの客として義爛が来訪する
「············なんだよ、義爛。俺は今すこぶる機嫌が悪いんだ。話だってんなら明日にしてもらおうか。」ギロッ
「まぁまぁそう言いなさんな。これから忙しくなるであろう御大将様には早めに心構えを作っといてもらおうと思ってな」
怒気を孕んだ言葉と視線を飄々と受け流し話を進める義爛
「保須での一件はあんたにとっちゃ残念だったかも知れねぇが、
一時的とはいえ一勢力と一勢力が手を結び何か世を転覆させようと企てた
未遂に終わったとはいえその行為が闇に新たな潮流を生んだ
「······ムフフ、二人ともカッコいいですねぇ。」
携帯で動画を見る今時女子というなんの不自然さもない光景
しかしそれは周囲の状況で一気に異質な者と変わる
裏路地で動画を熱心に見る少女の周りには男達が倒れ伏し血を流し絶命していた
「こんな軽いナンパ師の血じゃ満足できません!!やっぱりこんなにもキズだらけになるほど戦う男の子の血じゃないと!!」
言葉の端々に滲む狂気
少女はそのまま闇に消えていった
所変わって
「ギャハハ、なんだよ!なかなかに骨のある奴らが出で来たじゃねぇかよ!」ズオオオ
「おっといけねぇ、無意識に筋肉が膨れちまった。こんなおもしれぇもん見つけたんだこんなとこで取っ捕まる訳にはいかねぇな。ハッハッハッ!」
更には
「グフフフフフッ、いい面してるじゃねぇか!そんな顔を粉々に打ち砕いてやるのが楽しみだぜ!」ギュ
そういうと男は道着の帯を固く結び直した
悪意達が一つに集まろうとしていた。
職場体験編終了ッ!
これからも頑張って書いていきます