「…………フム、思ってたよりは早かったな。」
午後5時半をまわりもうすぐ沈みそうになる西日に照らされ森からぞろぞろと人影が現れてくる
誰もが皆、憔悴しきっていた
「ど、どうした……。ボンバーマン……俺のほうが先にゴールしちまうぜ……。」
「うるせぇ……ッ!!俺のほうが魔獣2体多く倒してんだよ……!だから……いい気になってんじゃねぇ!」
「あ、あいつら……まだあれだけ言い合えるとかワケわからん……。」
「てか数えてたんかい……。」
先頭を行くテリーとその後ろを着いていく爆豪
その様子を呆れて着いていく残りの一同
「ねこねこねこ。やっと来たね」
「あ゛ー……腹減ったよ……」
「喉乾いた……」
「めしー……」
ようやく緊張感から解放され思い思いの愚痴がこぼれていく
「何が三時間ですか」
「ごめんね、
あれ、私たちならって意味。」
「じ、実力自慢ってことか……」
「おーい、重りの鍵を外していくぞ!」
カメハメの声に重りを着けていたメンバーがカメハメの前に列を成す
テリー、爆豪、緑谷……と次々と外されていくなか
「ほう……。」
「……………ケロッ。」
「つ、梅雨ちゃんッ!?」
なんと列の最後にいたのは女子である蛙吹梅雨であった
「女子で重りを着けてクリアされるとは思わなんだ、天晴れな気概をしておる
名前は?」
「蛙吹梅雨よ。」
ガチャリ
「ケロ……流石にちょっと……キツかったわ…。」ガクッ
「梅雨ちゃん!」
重りを外され緊張感からも解放された中で力が抜けたのかその場で崩れ落ちる
それを近くで見ていた麗日を始め女子全員が駆け寄り体を支え宿へと運んでいくのであった
「す、すごいわね。今年の一年達は……。」
「そ、そうね。
先頭集団の誰かに今のうちにツバつけとこうかなんて考えていた自分が情けなくなるわ。」
「……下らん。」ボソッ
「なんだとッ!!誰だ今の言葉は!」
ポツリと発せられた言葉に反応するテリーに対し
「下らねぇって言ったんだよ。"ヒーロー"なんて職業も、それを目指すために必死になってる奴らも。」
と声を続ける声の主
全員が視線をそこにやればそこには角の生えた帽子をかぶった子供だった
「ち、ちょっと洸汰!!
ごめんね、この子は私の従甥でね
訳あって今は私が預かってるんだけど……」
「ヒーローなんか目指してる奴らとつるむ気なんてないから紹介なんかしなくていいよ。」
「確かにヒーローに対しては色々な意見があって然るべきだし、君も一人の人としてどういうスタンスをとるかは勝手だ
だが、必死に頑張ってきた仲間に対してそんな言葉を放つのは許すわけにはいかないぞ!」ズイッ
「まあまあッ!て、テリーくん、落ち着いて!相手は子供なんだし……。」
「退いてくれイズク!いくら子供とは言え許せないことだってある!こんな子供はお尻ペンペンしてでもわからせなくては!」
洸汰の言葉の謝罪と撤回を求めるテリーに対し二人の間に割って入りテリーをなだめようとする緑谷
「ふんっ」キンッ
「ヴッ!?」
不用意に背を向けた事が仇となり洸汰の蹴りが無防備な緑谷の股関を直撃
「ケッ!」タタタッ
そのまま宿へと走って逃亡してしまった
「はっマセガキ」
「なんかお前にそっくりだな。」
「おい、さっさと荷物持って宿に入れ。」
相澤に急かされ男子も宿へと入っていく
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「「「「「いっただきまーーーす!!」」」」」
宿に入ったA組の前には豪勢な料理が机いっぱいに広がっていた
「ウメー、ウメー!!」
「五臓六腑に染み渡るぅッ!!」
疲れと空腹、更に解放感からか数名のテンションがおかしな事になるが、みるみるうちに料理をたいらげていく
「まー、世話焼くのも今回だけだし食べれるだけ食べな!
あ、洸汰そこの野菜運んどいて。」
「……フンッ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ふぃー、これがジャパンの"オンセン"か!気持ちいいもんだなぁ。」
「まぁまぁ…飯とかはねぶっちゃけどうでもいいんスよ。求められてんのってそこじゃないんスよ。その辺わかってるんスよ、オイラぁ……。
求められてるのはこの壁の向こうなんスよ…」
「な、なに言ってるの?峰田くん……。」
晩御飯も終わり汗を流すべく大浴場へ入り疲れを癒すテリー達だったが峰田が壁に張りつき一人でぶつぶつと呟く
「壁の向こうから聞こえるは女子の声!
このご時世に男女の入浴時間をずらさない!これはもう事故!」
「や、辞めたまえ峰田くん!!君のしている事は己も女性陣も貶める恥ずべき行為だ!!」
峰田の企みを察した飯田が注意し止めようとするが
「壁は越えるためにある!
Plus Ultraァァァァッ!!」
校訓を最低な引用に使いながら個性を使用し壁をよじ登る峰田
あわやもう少しで壁を越えられそうなところで
ヌッ
「ヒーロー以前にヒトのあれこれから学び直せ。」ドンッ
壁の間に潜んでいた洸汰に押し返され
「クソガキィィィィィィッ!!」
断末魔と共に壁から落ちていった
「やっぱり峰田ちゃんサイテーね」
「ありがと!洸汰くーん!」
すると一連の騒動を見ていた女子から感謝の声をかけられ反射的にそちらを向いてしまった
「ッ!?」
それがよろしくなかった
当然だが振り向いた先は女子風呂、そこから飛び込んでくる映像の刺激に耐えきれず
「わっ………あっ!?」
今度は洸汰自身が男子風呂へと落下してしまった
が
「ッ!!」シュバッ
「ったく!!」ビュオッ
緑谷とテリーが反応し洸汰と峰田をそれぞれ救出した
「大変だ意識を失ってる!僕、このままマンダレイ達のところへ連れていくよ!」
そう言うや緑谷はタオルを腰に巻いただけのスタイルのまま風呂場から出ていった
「ひ~、助かったぜ。サンキューなテリー!」
「そうか、じゃあ俺たちも行くか。」
「へ?」
「へ?じゃない、お前のやったことは普通に考えてヤバい。
結果的に未遂に終わったがお前には相応の罰がいるだろう。
とりあえず、
言うや峰田の腰にタオルを巻き付け自らの腰にも同様にタオルを巻き
扉からでるテリー
「……………ち、ちょっと待ってくれテリー!それは不味い!ほんの出来心なんだ!だから、だからテリー!後生だから…後生だからアアアァァァッ!!」
我に帰った峰田の断末魔が外から聞こえてきた
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「いや~、もう一度入らせてくれるとはな!しかも俺たちの貸し切りだぜイズク。」
「う、うん。」
「……隣からは何も聞こえない。
む、無念なり……」
あの後テリーと峰田はカメハメと相澤の元へ緑谷はマンダレイの元へそれぞれ赴いた
洸汰は落下の恐怖による失神でしばらくすれば目を覚ますとの事であり峰田は未遂と言うことで厳重注意に留めるということで戻された
が三人の格好が格好だったためマンダレイの計らいでもう一度B組の後に三人だけで風呂に入らせてもらう事になった
「ちぇ、隣に誰も入ってないんじゃこれ以上ここにいても虚しいだけだ。
オイラは先に上がるよ。」
トボトボと峰田は上がっていった
「……テリーくん。」
二人だけになるや緑谷の口から語られたのは洸汰の生い立ち
プロヒーローの両親の元へ生まれ、そのまま育っていけば例に漏れずヒーローを夢見る子供になる筈だった
しかし両親はヴィランとの交戦で殉職
そんな二人の死を名誉だ誇りだと持て囃す世間を理解できず、彼は『ヒーロー』のみならず『個性』そのものの存在、ひいては社会にすら嫌気が差してしまったのだ
「……なるほど、あのボーイにもそんな過去があったのか」
「うん、その時思ったんだ。
オールマイトならこんな時なんて言うんだろうって
僕はなんて声をかけたらよかったのかな?」
(まるで救えなかった者などいなかったかのようにヘラヘラ笑っているからだ!)
二人の脳裏をよぎる重い言葉
「………それは俺たちがこれからの行動で示していくしかないだろう。
大事なのはそいつが何をした、何を成した人間に言われるかって所だ
俺たちはすぐに
「………………………。」
テリーの言葉に緑谷は思い返す
自らの原点
あの日始まったヒーローへ向けての一歩目
そこへ導いてくれたのは………
「………うっし、明日も早いし俺たちもそろそろ上がるか!」
テリーは空気を切り替えるようにわざと声を張り上げる
こうして合宿初日は終わりを告げた
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合宿二日目
AM5:30
朝日と共に起床したA組
若干名、寝ぼけた表情の中爆豪が呼ばれ相澤よりソフトボールが投げ渡される
「今日から本格的に合宿を始めるが、まずは爆豪。それを投げてみろ。
前回の記録は705.2m。どこまで伸びるかな。」
「おお、成長具合がわかるな!」
「この3ヶ月いろいろ濃い経験してるからな!」
「いったれ爆豪!」
「んじゃ、よっこら………くたばれ!!」
勢いよく放られたボールは放物線を描くが………
「709.6m 」
「ッ!!」
「あ、あれ……思ったより……」
結果に爆豪はもちろん全員がほとんど結果が変わらないことに騒めく。
「約3か月間。様々な経験を経て、確かに君らは成長している。しかし、それはあくまでも精神面や技術面、後は多少の体力的な成長がメインで『個性』そのものはそこまで成長していない」
相澤の言葉に目を見開く一同。
「今日から君らの『個性』を伸ばす。
死ぬほどキツいが、くれぐれも死なないようにな」ニヤッ
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少し時間を遅らせてB組も宿舎から出てきて説明を受けている
取陰が担任のブラドに話しかける。
「ですが先生。突然“個性”を伸ばすって言っても……20名20通りの“個性”があるのに……何をどう伸ばせばいいのか分かんないんスけど……」
取陰の質問はまさに的を得ている。
今話したように個性は誰一人として同じではないのだ。
それぞれに得意苦手があり、普通の訓練ではどうしても全員に指導などは出来る訳がない。
取陰の質問に同意するように両頬から刃が飛び出している鎌切尖が「具体性が欲しいな……」と続ける。
他の面々も同様のようでうんうんと頷いていた。
ブラドはそんなB組の面々に対して冷静に説明をしていく。
「筋繊維は酷使することにより壊れて……それ以上に回復した時に倍以上に強く、太くなる……“個性”も同じだ。使い続ければ強くなり、でなければ一気に衰える!」
広い場所へと到着した一同。
そこで目にするのは阿鼻叫喚の地獄絵図
ぁぁぁぁああああアアアアアアアアッ!!
誰もが苦悶の表情を浮かべ、叫び、汗やら血やらが飛び交いながら個性を使い続けたり体を動かし続けていた
「な、なんだこの異常な景色は………。」
「もはやかわいがりですな。」
数名が絶句していると
「君たちにも同じようにやってもらう!目的はただひとつ!限界突破だ!」
ブラドは声高らかに宣言する
「でも、私達を入れると41人になっちゃうしそれを7人でカバーできるのかな。」
「その辺は心配いらないそのためのこの方達だ。」
「煌めく眼でロックオン!」
「猫の手 手助け やってくる!」
「どこからともなくやってくる……」
「キュートに!キャットに!スティンガー!」
「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」」」
ビシィ!とポーズを決めるマンダレイ達。
急な登場にポカンとするB組面々。
「
「そして
「
「そこを
(((最後だけなんか違くないか!?)))
「B組もきたか、時間は有限。特訓内容渡すからテキパキ動けよ。」
困惑するB組をよそに相澤が声をかける
「あ、あの!!テリーはいったい?」
「あれ?そういやテリーの姿が見えないな!」
「ああ、彼なら」
ボキッ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
ドシーンッ
「………あの辺りで木を切り倒しまくってるよ。」
「ねぇピクシーボブ。この合宿終わるまでに山に木残るかな?」
「怖いこと言わないでよ。」
「あの聡明なカメハメ殿だ、そんな無粋なことはせんだろう。」
そう言う間にもう一本木が倒れていった
「はあっ、はあっ………。」
「ほれ、何を疲れておる。こんなのは特訓の前のウォームアップだぞ。次はこの木をノコギリで丸太にしていけ。」
「い、イエッサー……。」
'こうしてカメハメに言われるまま、丸太を大量に作成し
ゴウゴウゴウ…………
それを次々に山奥を流れる滝の麓へと運び込む
「これだけあればひとまずは大丈夫だろう。では特訓を始めていくぞ!」
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B組も加わり苛烈さを増した合宿二日目
時間は過ぎていき
PM4:00
「さぁ!昨日言ったね!世話を焼くのは今日だけって!!」
「己で食う飯くらい己で作れ!!カレー!!!」
ピクシーボブとラグドールの目の前にはカレーの材料や飯盒が並べられていた。
「い、イエッサ……。」
「アハハハハハハ全員全身ぶっちぶち!だからって雑なネコマンマは作っちゃ駄目ね!」
その言葉に項垂れていた飯田が、ハッとする。
「確かに……災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環」
何やら1人で納得して声を上げる飯田。
そして振り返って叫ぶ。
「世界一美味いカレーを作ろう!!皆!!」
「オ……オォ~……」
(飯田……便利……)
その様子を見ていた相澤は自分が諭す手間が減ったことを喜んでいた
こうしてカレー作りが始まった。
いざカレー作りが始まると、生徒達は活気づいた。
爆豪や轟の個性を使用し火をつけ
「わ、梅雨ちゃん。料理上手!」
「けろけろ、うちは両親が共働きだからこれくらいはできなきゃって覚えたの。」
「………爆豪は才能マンだからなんやかんやできるとは思ったけどお前も上手いな、砂藤。」
「ま、まぁ趣味でいろいろ菓子を作るしな。」
和気あいあいと楽しみながら完成
「いただきまーす!」
多少料理の経験があった人がいた為もあり、状況も相まって全員が舌鼓を打っていた
「………あれ、そういえばテリー見てなくね?」
「あっそういえば。」
上鳴の一言で全員が見渡すが確かにテリーの姿はなかった
「そういえば調理前から姿が見えんかったような………。」
「サボりか!?」
「いや、彼はそんなことをするようなタイプではないと思うが……。」
「おい!あれを見ろ!」
テリーがいないことにざわつき始めるなか障子が遮るように声をあげる
促された視線の先には
カメハメと肩に俵担ぎされたテリーの姿があった
ポイッ
カメハメは無造作にA組メンバーの前にテリーを放り投げると水場に向かい
「ほれ、起きぬか。」
バシャーーッ
バケツに貯めてあった水をひっくり返しテリーの顔面にかけた
「今日はこれで終了だ。明日もまたやるぞ。
すまんなみんな、後の世話任せるぞ。」
そう言い残しカメハメは宿へと入っていった
「テリーくん!?大丈夫か!誰か手を貸してくれ!」
飯田の声に砂藤と障子の大柄な者や切島や瀬呂のように面倒見がいい男子が駆け寄る
その様を見ていた爆豪は歯噛みした
(このままじゃ足りねぇ、このままじゃ差が開く一方だ!)
テリーが極限まで追い込む特訓をしていると見抜いた爆豪はより一層の努力が必要だと再認識していた
そんな騒動もありながらも夜になり
明日の特訓に向け早々に眠りにつき体力の回復に努めるもの、補修を受けるもの、数少ない青春を感じられる一時に枕投げを始めるもの、お喋りに花を咲かすもの
それぞれが思い思いの時間を過ごすなか
一人野外のベンチに座り月を眺めるカメハメ
「………お主はみんなのなかに入らなくていいのか。」
自身の後ろに立つ影に問いかける
「……………。」
影は無言で両膝を地面につけると
「俺、尾白猿夫って言います。
お願いします、俺に稽古をつけてください!」ガバッ
まだ振り向いてすらいないカメハメに向けて土下座して助力を乞う
「……………生半可な覚悟では乗り越えられぬぞ。」クルッ
「承知の上です。」
カメハメは振り向き、尾白が顔をあげる
視線が交錯する
「……明日同じ時間にここへ来い。補習組と同じ時間ここで稽古をつけてやる。」
「ッありがとうございます!!」
こうして2日目が終わっていく
同時刻
「~~~♪~~~♪︎」
「………おい、一応聞くけどそれなにやってんだ?」
ヴィラン連合のアジトであるバーにて鼻唄混じりに作業するトガに荼毘が話しかける
二人とも現在は正式な連合の一員としてこのバーを拠点として生活していた
「えー、もうすぐ何か作戦があって出撃するじゃないですか。だから
「あらぁ~可愛らしいじゃなあ~い。」
「おう、可愛いな!汚ならしいぜ!」
薄ピンクに光るハートや丸形のシールがあしらわれた
「バカモノ!作戦は夜だぞ、そんなものを付けてたら相手にバレやすくなるし、なんか締まらないだろ!」
そこへトカゲのような緑の鱗に覆われた男が反対する
「えー、そんな堅苦しいのはヤですぅ~!戦場であっても可愛いはなくしちゃダメだと思います~。」
「そうよぉ、戦場にだって可憐な花は必要よ。」
「「ねぇ~。」」
トガは既に賛同したオネエと意気投合していた
「やれやれ、大丈夫かね。こんな面子で………。」
荼毘が頭を抱えていると
「マキマキ~、案ずるな荼毘よ。
私の占星術でも次の作戦は必ず成功すると出ている。」
と隣に座る男が声をかける
((((…………………………。))))
更に奥に控えてる残りのメンバー達も静かにだが今か今かと開戦の時を心待ちにしていた
「まぁいいか。目的はもう明確だしな。」ペラッ
荼毘が手にした紙には赤字でバツを塗られたテリーと緑谷の写真と何も塗られていない爆豪の写真が写っていた
その根はより深くより強く。