宿舎前でヴィランに襲われた教師二名は窮地に追い込まれていた
「フッフッフッ、お前がイレイザーヘッドか。何でも体術には自信あり、だそうだな。そんなモヤシみたいに貧相な体で何が出来るか見せて貰おうか。」
(ちぃ異形型の『個性』、しかもそこらのチンピラと違い相当腕がたつな。)
「おい、魔雲天、前衛は任せたぞ。」ボオオッ
魔雲天の巨体に身を隠しながら個性を発動する荼毘
(くっ、厄介極まりない!だが、ブラドも動けない今…俺がやるしかない!)スチャッ
不利な状況ながらプロヒーローとして、また教師としての矜持を奮い立てサングラスを装着し戦闘モードに入るイレイザーヘッド
パリンッパリンッ
「「「ッ!?」」」
『THUNDER HORN ッ!!』
宿舎の内側から窓を突き破って飛び出してきた四本の角が魔雲天と荼毘に襲いかかる
「ぬおおおっ!?」ガガッ
「うおっと!」バッ
魔雲天は腕をクロスしガードし荼毘はその場から飛び退く
バッ
「こ、今度はなんだ!」
魔雲天がパニックで声を荒らげる
「テリャアアアアッ!!」ゴッ
続いて飛び出してきたテリーの拳が魔雲天の眉間に打ち込まれる
「ぐううぅぅ!!」ガクッ
「魔雲天!?くそっ!」
思わず片膝をついた魔雲天に驚きながらもテリーに向けて炎を放とうとするが
「させるかぁ!」ギッ
「イレイザーヘッド……ッ!!」ギリッ
『抹消』の個性がそれを阻止する
「先生ッ!!大丈夫ですか?」
「翔野、角取……お前らに戦闘許可は、
いや、正直助かった。プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いてお前らの戦闘を許可する!」
「「はいっ!!」」
「……てめぇが翔野テリーか!!
願ってもない!お前をぶっ潰すために連合に入ったんだ!」
「ポニー、こいつの相手は俺がする!お前はブラド先生を!!」
「大丈夫だ角取!お前らは二人でヴィランと戦え!こいつの相手は俺一人で十分だ!」
「クッククク!強がりはよすんだなブラドキング!このミスターカーメン、一度捕えた相手は絶命するまで追い詰める男だ!
このまま右肩を食いちぎられたくなければ大人しくしているんだな!」グググ
ミスターカーメンと名乗る男の牙がさらに深くブラドキングの肩に沈み血があふれでる
「……ふっ、俺も見くびられたものだな。教え子達が見ている前でヴィランの言葉に"はいわかりました"なんて言う訳ないだろうが!」グブジャ
なんとブラドキングはカーメンの頭を掴み自らの肩の肉ごと無理矢理引き剥がした
「な、なんだとォ!!」
「いまだ!くらえ!」ビュン
動揺したカーメンの隙を見逃さずブラドは自身の個性『操血』を駆使し自らの血を固め鞭のようにカーメンの頭の下に向けて振るうと
バチイッ
「ギャアアア!」
何もないはずの空間に赤い血が吹き出すとそのままのなかったはずの体が実体を露し始めた
「こ、これでわかっただろ!俺は大丈夫だ!」
「き、貴様!!よくも俺の体に傷をつけたな!許せん我が秘術でもって黄泉へ葬ってくれる!」
カーメンとブラドキングが向かい合う
「一人でも二人でも関係ないまとめて潰してやる」ドスドスドスッ
しびれを切らした魔雲天が大地を揺らしながら突進してくる
「ぬんっ!」
ゴンッ
テリーと魔雲天のショルダータックルが正面衝突するが
「な………んだとぉ………っ!?」グラッ
なんとテリーに体格で勝るはずの魔雲天の体がぐらつき
バッ
「ヴィランども!!俺はとても怒ってる!俺たちの林間合宿を邪魔したこと!先生達を傷つけたことそして、仲間達に危害を加えようとしたこと!
テキサスブロンコは仲間を傷つける奴に容赦はしない!」グワッ
そのままテリーは魔雲天の体を担ぎ上げ
『ブレーンバスター ~テキサスブロンコ怒りの一撃!!~』
ゴズンッ
頭から叩き落とした
「ポニー!」ザッ
間髪いれずにテリーはポニーを呼ぶと
「テリー行クワヨ!」バッ
ポニーが体を半回転しながらテリーの上に乗り
「ぐうぅ、ぞがぁぁぁ!!」ヨロヨロヨロ…
ふらつきながら立とうとする魔雲天向けて突っ走る
「テリーと私の
「きらめきの流血列車!」
『『ロングホーントレインッ!!』』ドドドドッ
ベギョォッ
「ぐほおおおおぉぉぉーーーっ!?」
バキバキバキバキボキッ
森の木を何本も巻き込みながらふっ飛び
ドサッ
「う、ぞだろ………ご、ごごでおわ、り………?」ガクッ
勢いが止まると同時に一言呟くとそのまま気絶してしまった
「なんと!?魔雲天がああも容易くやられてしまうとは!?」
カーメンが驚愕の声をあげる
「翔野、角取!お前らはそのまま広場に行け!そして会った奴及びマンダレイにお前ら同様にイレイザーヘッドが戦闘許可を出したと伝えろ!」
「はいっ!!」
「オ二人もキヲツケテ!!」
こうして二人は広場に向かい駆けていった
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「シャアッ早速遊ぼうぜ!!さっさとリングに上がってこいや!」
「………。」ダッ
「み、緑谷くん!!」
マスキュラーの呼び掛けに応えるようにリングに向けて駆け出す緑谷はそのままの勢いでリングに滑り込むと
「さっそくいくぜ!ってぇ!?」
リングに上がってきた所を叩こうとしていたマスキュラーだが
「ウオオオオオッ!!」
SMASH !!
リングに乗り込んだ勢いのままに緑谷は個性を発動し殴りかかるが
「っとお!いい速さだが、力が足りてねぇな!」ブンッ
異常に膨らんだマスキュラーの腕に防がれ振り払われ
「俺の個性は『筋肉増強』!!皮下に収まりきらねぇ程の筋繊維で底上げされる速さ!力!!」ブンッ
「グウウウッ!!」バキョッ
薙ぐように振られた拳をなんとか左腕で防ぐも緑谷の体ごと吹き飛ばされ
「うわっ!?」バインッ
緑谷の体はロープに弾き返され再びマスキュラーの元へ
「何が言いてえかって!?自慢だよ!つまりお前は俺の完全な劣等型だ!」ズオオオッ
『
「グボォッ!!」
個性で増強された剛腕から繰り出されるラリアットが緑谷の体を迎え撃った
「ガハッゴホッ!!」
「おいおい、挨拶代わりの一発でお仕舞いか?つまんねぇな!勝ったら離せとか吠えた割には対したことねぇな!
やっぱりお前じゃなくて片割れの金髪とやり合いたかったぜ!」グリグリ
咳き込む緑谷の体を踏みにじりながらマスキュラーはぼやく
「そ、そうやって……」
「ああ?」
「ウォーターホースも………僕のパパも、ママも、いたぶって……殺したのか……!!」
絞り出したような声で捕らわれの洸汰が訴えると
マスキュラーは洸汰のほうに向き直る
そして何かを思い出したように「ああ」と声を漏す
「マジかよ、ヒーローの子供かよ?しかもあいつらか。なんだよ運命的じゃねぇの!」
マスキュラーが手で顔の左側を撫でる。
「ウォーターホース、俺を義眼にした二人か。」
「お前の!!お前らみたいな奴のせいで!!いつもいつもこうなるんだ!」
「あらあら、元気一杯ね。」
「はぁぁぁ、よくないぜ、責任転嫁はよ。
まるで俺が悪者みてぇじゃねぇか。俺は別に義眼になったことは恨んでねぇぜ。
ありゃぁ、お互い同意の元にやった事なんだぜ?
俺はぶっ殺したかった。で、あの二人はそれを止めたかった。
お互いやりてぇことやった結果さ。
恨むなんてお門違いもいいとこさ。
悪いのはな、出来もしねぇことをやりたがった!
弱わっちいてめぇのパパとママさ!」
「あ、あんたああああああああッ!!」
「許さない、あんたは絶対に許さない!!離して虎ッ!!悔しくないの!!あんな風に好き勝手に言われて!」
「我だって、我だって悔しいさ!だが冷静になって状況を見直せ!我々が感情のままに動けばその洸汰の命が危ないんだぞ!」
傍若無人なマスキュラーの言葉に激昂したマンダレイとピクシーボブを虎が必死なって止めていた
「ハッハッハ、ヒーローってのは窮屈だな!殺したい時に殺せないなんてな!」
ザッ
「あん?」
「悪いのは、お前だろ!」バッ
マスキュラーが高笑いする間に立ち上がった緑谷は怒りに声を震わせて飛びかかる
「いいぜ、いいぜ!!そうこなくっちゃ!」
(スピードは負けている、ダメージは与えられない、左腕もほとんど使い物にならない……。
こいつは強い!隣にテリーくんもいない!
だけどッ!!
だけどッッ!!)
ギチッ
「ッ!?」
「これでスピードは関係ない!」
(折れてる左腕を筋繊維に巻きつけた!?)
「だがそれがどうした?そんなへなちょこパンチで俺を倒すってか!?」
「できるできないじゃないんだっ……
ヒーローは!!
命を賭して、綺麗事を実践するお仕事だ!」
ーーーワンフォーオール 100%
バチバチバチッ
(な、なんだ?さっきまでと様子がッ!!)
SMASH !!
「ブゴアッ!?」ガァッン
ブオオオッ
緑谷の拳をくらいマスキュラーの体はコーナーに叩きつけられた
周囲に発生した風がその拳の威力を物語る
「や、やったぜ!!緑谷!!」
峰田が歓喜の声をあげるが
「ッテテテ、テレフォンパンチたぁやるなぁ緑谷……。」
(そんな………)
「ウソだろ……。」
「み、緑谷くんのパワーでもってしてもダメなのか……。」
(オールマイトの………)
「残念だったわねぇ、私達もそんな簡単にやられるほどヤワじゃないのよ。」
「さて、ここからどうするか見定めてやろう。」
「うそだ……」
(パワーだぞ………ッ!?)
緑谷のリミッターを外した自損覚悟の一発は確かに届いたが仕留める所までは行かずマスキュラーはまだ戦意を残しその場で立ち上がった
ゴソゴソ
「訂正してやるよ、てめぇも十分強え。覚えてるか?俺は"遊ぼう"って言ったんだ。
だけどそれもここで終わり。ここからは俺も本気で行くく。」
マスキュラーはポケットに手を入れて何かを探しだすと
「ここからは本気の
新たに黒い義眼に付け替えたマスキュラーは
ゴウッ
(さっきよりも速ッ)
「行くぜええええええええええッ!!」ブンッ
有無を言わさぬ勢いでマスキュラーが拳を振り上げる
「クッ!?」
なんとか避ける緑谷だったが
ボゴォ
「り、リングに穴が……」
「どんなデタラメなパワーしてんだよ、バケモノじゃねぇか……。」
緑谷が元いた場所に落とされた拳はリングに突き刺さり穴を開けてしまった
「おっと、外しちまったぜ。この義眼にすると熱くなり過ぎちまうな。だが次こそは外さねぇ!ピントはばっちりだぜ!」
体勢を直すマスキュラーを前に緑谷の頬には冷たい汗が伝う、
だが
「………………ッ!!」
そのマスキュラーの先にいる捕らわれの洸汰と目が合う
その目は恐怖と同時に自らの不甲斐なさ、申し訳なさがこみ上げており涙に溢れていた
そしてその目は訴えていた
(ああ、そうだ。"あの日"も同じだった。)
それはテリーと出会う前
己の"憧れ"に出会いヒーローとしての一歩目を踏み出した日
(その時もそうだった。あの目に反応して体が動いたんだ。
あの時は何もないただの木偶だったけど、もう違う!
オールマイトから力と信念を受け継ぎ、そして素晴らしき仲間に出会い
僕は、僕は!!
ヒーロー『デク』になったんだ!)
「ハッハッハ、びびってチビるかと思ったらそんな顔で返されるなんて嬉しいぜ!
でも結果は変わらねぇ!てめぇの命はここで終わりだ!」
バンッ
マスキュラーは強化した脚力でもって空中に飛び上がると
「これでぶっ潰してやる!派手に血ぃ飛び散らせやぁ!!」
『
もはや膨れ上がった筋繊維によって球体になった体から重力を纏って振り下ろされる拳
「絶対に、助けるんだ!!」ブンッ
「ま、まさか迎撃するつもりか!?」
「よ、止すんだ緑谷くん!君の腕はもう………ッ!!」
(関係ないッ!!)
ドッ!!
既に個性によって自壊した腕を今一度振り上げてマスキュラーに打ち込む緑谷
だが
「ーーーってえぇぇ、が!
さっきより弱えぇぞ!」ググググ
マスキュラーの勢いに飲まれ緑谷の体が悲鳴をあげ踏ん張るもののみるみる押し潰されていく
(まだ、まだ足りないのか!お母さん、ごめん!!オールマイト!!)
「頑張れ!!」
「ッ!!」
「が、頑張れ!!そんな奴に負けんな!!お前、強いんだろっ!」
グンッ
「な、なにぃぃっ!?」
緑谷は姿こそ見えていないが応援した声の主が誰かはわかっていた
「そ、そうだぜ!緑谷!!お前だってすげぇ奴なんだ!」
「君も僕を救ってくれた男の一人だ!だから、君なら勝てる!」
「少年!まだ僅かな時間だが我と共に流した汗を思い出せ!」
呼応するようにこの一戦を見守るメンバーからも声が上がる
グンッ
グンッ
「こ、こいつ!?力がどんどん上がってねぇかッ!?」
その声援に応えるようにマスキュラーの体は押し返されていき
[
「飛んでけぇぇっ!!」
SMASH ッ!!
「ぐおおおおっ!?」
マスキュラーの体は完全に押し戻され再び空中へ放り出される
「これで終わりだ!」バッ
マスキュラーの圧力から解放された緑谷は自らロープへと飛び乗る
「………ッ!!」
ロープの上で顔をあげると洸汰と目が合う
「………………。」ニッ
そこで緑谷は笑って見せた、自身の憧れがそうして歩んできたように
バチバチバチッ
「くらええぇぇッ!!」バインッ
自身の個性で強化された脚力にロープの反動が合わさり
「ぬおおおおっ!?!?!?」
水平に射出された緑谷の体が落下してくるマスキュラーの体を捉えそのままの勢いでロープへと突っ込んでいく
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皆が教室でショッピングの計画をしていた日
「はぁ、はぁ…………ガハッ、ガフッ……」
カメハメへ訓練を頼んだ緑谷は案の定徹底的にやられリングの中央で大の字になっていた
「やれやれ、普段とは違いお主はこと戦いに関しては頭が固いのう。
動きや攻め手が単調すぎる。」
無傷の状態でセカンドロープに座り汗を拭くカメハメ
「それでは現場に出て苦労するぞ。あの
カメハメは立ち上がって緑谷のそばに歩み寄る
「このリングをよく見てみろ、ただのキャンパスだけではなく四方にはコーナー、ポスト、鉄柱さらにそれらを繋ぎ囲うようにロープがある。
ロープの反動で勢いをつけたり鉄柱に相手をぶつける、または登って高低差を作ることもできる
6m50cm四方のリングにすらこれだけの可能性がある、お主が将来出ていくことになる現場はリングの比じゃない程複雑かつ刻一刻と変わる環境の中での戦いとなるのだぞ
その無限に広がる宇宙のような可能性を制す事ができた
者が、戦いを制す事が出来るだろう。」
ーーーーーーーーーーーー
(わかる、今ならわかる!カメハメさんの言っていた事が!)
「こ!これは!?」
「新技だ!」
『マッスル・ミレニアム!!』ドォゴォッ
ブチブチブチッ!!
ロープへと無理矢理押さえつけられたマスキュラーの体から何かがちぎれる音が鳴り
シュウウウ
個性が解かれていくマスキュラーの顔から
「グハアァッ!!」ポロッ
コンッ コロココロ…
真っ黒な義眼がこぼれ落ち
ドサッ
後を追うように体がリングに倒れた
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「あは、こんばんは。」
「「ッ!?」」
肝試しで森に入った麗日・蛙吹組の前に姿を現したのは同世代位の少女
だが
「ワタシ、トガ ヒミコ。
早速だけど、血を見せてください!
そして……
お友達になりましょう!!」
月光を浴びて鈍色に光るナイフと支離滅裂な発言が溢れんばかりの狂気を撒き散らしていた
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同じく肝試しで森を歩く轟・爆豪組
「爆豪……ッ!!」
「あぁ、驚かすにしては静かすぎるぜぇ!!おい!?」
あまりの違和感に一気に周囲への警戒心を張り巡らすと
「ケケケ~ッ!?」ビヨーン
「「ッ!?」」
何がが茂みの中から飛び出してきた
「……ありゃ?俺が相手する予定の奴と違うな。
まぁいいや、どのみち全員俺のボディによってバラバラになるんだしな!」
こちらは体全体が月光を浴びて光る
「なんだか知らねぇがてめぇヴィランだろ!ぶっ殺す!!」
「ま、待て爆豪!戦闘許可は………ッ!!」
「お?話が早くて助かるぜ。このスプリングマン様の錆びにしてやる!」
こちらでも新たな戦いが始まった
勝利の余韻を味わう暇はなく