「おい、霧が晴れてってるぞ!やばくねぇか!?全然余裕だぜ!」
「あー、マスタードがやられたっぽいな。」
森を覆う霧が消えていく事に慌てるトゥワイスに荼毘が冷静に答える
「まぁ所詮はガキだし、詰めが甘かったんだろ。ここまでやってくれれば上出来だ。
あとは、適当にプロヒーローにちょっかいをかけつつターゲットを回収するのを待つだけだ。だからほれ、もう一回俺を増やせ。」
「簡単に言ってくれるぜ!楽勝楽勝!」
(……そろそろアレも一人ぐらいは殺してるか?)
「ってか荼毘よぉ。いつの間にか爺さんいなくなってるぜ?」
一人ほくそ笑む荼毘にトゥワイスが声をかける
「あぁ?たぶんションベンだろ?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「と、取引ですか………?」
「ホエッホエッ。」
脳無の首を締め動きを封じる老人・ジージョマンの言葉に聞き返してしまう八百万
「ま、待ってヤオモモッ!!そいつも敵連合だって言ってる!無闇に受けない方がいい!」
耳郎が声をあげるが
「ペチャパイちゃんは静かにしとりなさい、ワシはこのボインちゃんと話しているんじゃ。」
「だ、誰がペチャパイだッ!!このハゲタコジジイが!」
「じ、耳郎ちゃんッ!?落ち着いて!?」
突然コンプレックスを突かれ激昂する耳郎とそれを必死になだめる葉隠
さっきまでの緊迫感は何処へやら、カオスな空間が創成されてしまった
「なぁ~に、そんなに難しいことではないわい。」キッ
「………ッ。」
顔つきが一気に引き締まり鋭くなるジージョマンの眼光に八百万の顔も強張っていく
「ワシがこやつを倒した後お主ら全員を見逃してやるから、代わりにお主のその立派なお胸に着けておるブラジャーをワシにくれい。」
「………はっ?」
名家の生まれで育てられてきた八百万から見ればまったく思ってもいない交換条件を突きつけられ一瞬何を言っているのか理解できずにいた
「ッッッサイテー!!あんた本当に元ヒーロー!?うちにいるバカ二人と大して変わらないじゃない!」
「や、八百万ッ!!こんなバカみたいな話に付き合う必要はない!早く俺を置いて先生達の所へ走れ!!」
「ええい、外野は黙っとれ!
ワシだって本当は触らせてくれとか言いたい所を黙って持ち場を離れて時間がないからこれで妥協しとるんじゃぞ!
それでどうするのじゃお嬢ちゃん、ワシもそろそろ腕が疲れてきて長くは待てんぞ。」
「ネボビッ………。」グググ…
首を絞められ動きを封じられてはいるものの脳無は一切大人しくなる様子は見せずむしろフラストレーションを溜めており解き放たれればここにいる全員が無事では済まないことは明白だった
「………もし私がその取引を飲んだ場合、貴方が今押さえつけている脳無を倒してくれるという話ですが、貴方にはそれが出来ると?」
「ホエッホエッ、もちろんだとも。このジージョマン例え今はヴィランとして生きてようとも女と交わした約束を破るようなほど男として落ちぶれてはおらんわい。」
「ヤオモモ、まさかッ!?」
「………わかりました、それで皆さんが助かるのなら。その条件で飲みます。」
八百万が決断を告げると
「ホエッホエッ。任せなさいお嬢ちゃん!」クワッ
「「「ッ!!」」」
戦いに関してほぼ素人同然の四人でさえ感じる程にジージョマンの纏う空気が一変した
「老いてなお益々盛んなり!女の子の為なら百万馬力すらをも凌駕してみせるわい!」
グワアッ
『クローズ・オンズ・リブ!!』
スリーパーを解いたと思うや否や自身のあばら骨の間に脳無の足を挟み込むと
「ほれ、ほれ、ほれっ!!」ブォンブォン
ふた回り程大きい脳無の体がジージョマンの動きにあわせて前に後ろに連続で叩きつけられていく
「ネブビッ……」
「ホッホッ、これにて仕上げ!」
ガキッ ガキッ
『楢山バック・ブリーカー!』
「グボォォォォォ………ッ!?」ミシミシミシッ
自らの頭を支点にした強力なバックブリーカーが
「トアアアアアアアアアアッ!!」グググ…
バキッバリバリバリ………
「グホラァッ!?」バカンッ
ついには脳無の限界を超え本来曲げてはならない方向へと完全に背骨を折りきってしまった
「………ほれ、できたじゃろう?」ニコッ
無残になった脳無の体を投げ捨て返り血を浴びたジージョマンは微笑んだ
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「ぐううう………」
スプリングマンの技にかかり苦悶の表情を浮かべる轟
「で俺ぁどうすりゃいいんだ、バネ野郎!!」
「バネやッ…いや確かにそうなんだけど、ヴィランの俺が言うのもなんだがお前口悪いな。
まぁいいや、とりあえずお前こっち来い。」
(こ、こいつらは爆豪がターゲットだと言った!このままでは爆豪が危ない!考えろこんな状況でもまだなにか手が………ッ!!)
「………………。」
「ケケケ、まったく俺様はついてるぜ!あとはどうにかコンプレスと連絡がつけば「喰らえやッ!!」はあっ!?」
BOOOOON
突如爆豪が個性をフルに使い地面が爆ぜる
「こ、この野郎!?こっちには人質いるんだぞ!
………って、なんだと!?」
パキパキパキ…
スプリングマンが轟に意識を向けると轟は自身も巻き込みながらスプリングマンの体を凍らせ
「ハアアアアアッ!!」ボアッ
今度は一気に炎を放出し氷を一気に溶かした
その結果
ジュウウウウウウウ………
「い、一体こいつはなにを!?」
その答えは
ギギギギ……
「な、なんだ?体が!?」
スプリングマン自らの身体を持って知ることになる
「こ、これは………錆!!
なぜだっ!?、いやそれよりもこのままでは俺の身体の弾性が!!」
「ハッ、昨日風呂で効能を見といてよかったぜ!ここの泉質には塩化ナトリウムが含まれてる!ならここらの土にも多少は漏れでてる筈だ!あとはそれを半分野郎の個性で発生させた大量の水と合わせれば晴れて塩水の出来上がりだ!」
「多少苦しいが、これ以上動かないのであれば!!」グイッ
突然の身体の変化に戸惑うスプリングマンを尻目に技から脱出する轟
「あッ!!
おい、待て!!」
「よそ見してんじゃねぇ!!」bomッ
轟に意識が逸れたのを見計らい、爆豪の攻撃が遂にスプリングマンを捉える
「ま、不味い!ここは一度退いて態勢を整えってげげっ!?」
ピキピキピキ
「………お返しだ。」
スプリングマンの足元が氷で覆われていく
「ナイスだ!!半分野郎!!」ダッ
「お前の為じゃないがな!」バッ
ゴガンッ
二人は息ピッタリに合わせたドロップキックをスプリングマンに打ち込む
「ぐほぉっ!!」
身体の弾性を奪われ足を固定されたスプリングマンはその衝撃をモロに浴びて
ビキピキピキ…
それでも収まらない勢いはスプリングマンを氷から解放し
ドシンッ
後ろに生えている木にスプリングマンの身体は激突し
ズルズルズル…
そのままスプリングマンの意識は途絶えた
「どうにか気絶したようだな。」
「ハッ、こんなふざけた見た目の奴にやられる程やわな鍛え方しとらんわ!」
「………爆豪、こいつはさっきターゲットはお前だと言っていた。」
「関係ねぇな、逆に向こうからやられに来てくれるんなら好都合だ!まとめてぶちのめしてブタ箱にぶちこんでやるよ!」
血気盛んに応える爆豪
そこへ
「かっちゃん、轟くん!」
テリーと緑谷が到着した
ーーーーーーーーーー
「あーん。もっとお話しましょうよ~!」
「そんな物騒な腕振り回しとる奴の言葉なんて聞けるわけないやろ!」
「お茶子ちゃん、色々言いたいのはわかるけど今は口よりも足を動かして。」
撤退戦を試みている三人だったが状況はあまり芳しくなかった
牽制用のポニーの個性はトガの『妖腕刀』により切るときに足を止める為文字通り僅かな足止めにしかならず
またトガ自身も身軽でセーラー服なのに派手に動き下着が見えようとお構い無しに進んでくるのだ
「アハハハハハハハハ!!」
「あ、あかん。このままじゃ………」
「お茶子ちゃん!諦めちゃダメよ!」
「ソウデス!ソレニそろそろ………。」
「ポニー!」
「麗日さん!蛙吹さん!」
「あれもヴィランか?」
「見りゃわかんだろ!あんなヤバそうな物引っ提げて笑ってるなんざ普通じゃねぇ!」
テリー達4人が合流する
「………流石にこれではこっちが不利ですね。楽しい女子会もここでお開き、ここは逃げるが勝ちなのです!」バッ
それを見るや形勢不利を察しあっという間に森の中へ消えていくトガ
「あっ!?」
「待て、麗日!ここで
俺たちが無理に追う必要はない!」
「と、とりあえず相手の目的がかっちゃんだって事はわかったからこのままみんなで宿舎に向かえば………。」
「………………?
その爆豪ちゃんは、どこにいるの?」
「「「「っ!?」」」」
油断なんてしていなかった。皆の意識が森に消えていくトガに向いた瞬間
「悪いねぇ、彼なら俺のマジックで貰ったよ。」
潜んでいた仮面のヴィランは手元にビー玉上の何かを手にして木の上から出久たちを見下ろしていた。
「ッ!!」ゴウッ
反射的に轟が捕らえようと氷結を展開するも
「残念でした!俺、逃げ足は数少ない取り柄なのよ。」
それを上回る反射速度で攻撃を避け無線機を取り出し
「開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったがこれにて幕引き!!予定道りこの通信後五分以内に“回収地点”へ向かえ!」
そう言うと出久たちの前から遠のいて行った。
「待てっ!?」
「麗日!俺とポニー、イズクと轟を浮かせ!ツユはその俺達をまとめてにあっちの方向に投げるんだ!」
逃走を図るヴィランを前にテリーは素早く指示を出す
テリーの言葉にどうにか落ち着きを取り戻したメンバーは手早く行動に移っていく
「行くわよ四人とも。絶対に爆豪ちゃんを助けてね」
「任せとけ!」
蛙吹にサムズアップするテリーら四人に巻き付いた舌を勢いよく振りかぶって、一閃。
四人は砲弾のように宙へと撃ちだされた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ホエホエホエッ、ではではお嬢ちゃん。
約束は守ってもらおうかのう。」
ジージョマンは脳無を倒した事などもう忘れたかのように
八百万に優しく語りかける
「………………………。」スッ
意を決した八百万は服に手をかけるが
「ちょっと待った!」バッ
耳郎がジージョマンの視線を遮るように八百万の前に立つ
「な、なにをしとるんじゃ!?まさか今さら約束を反故にするつもりかのう?」
「じ、耳郎さん!?」
「別に約束を破るつもりはない、だけどアンタとの約束はブラジャーを渡す事でしょう?
だったら別に今この時間を見る必要はないんじゃない?
あと貴方も背中切られて大変な状況だけど、申し訳ないけど少し目を閉じてて。」
「す、すまねぇ………。」
耳朗が毅然と言い返すと慌てて倒れている泡瀬は目を閉じる
「ぐぬぬ、なかなか達者な小娘だわい。
こちらも時間が惜しい、それで良いから早う渡しとくれ。」
「じ、耳郎さん……ありがとうございます。」
同性として尊厳を少しでも守ろうと前に進み出た耳郎に感謝を告げ手早くブラジャーを取り外し
「では、これを………。」
「ホヘホヘホヘ!!現役JKの下着!あぁ長生きはしておくもんじゃワイ。」
手渡されるや手にした下着を抱えしみじみと感動するジージョマン
すると
『開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったがこれにて幕引き!!予定道りこの通信後五分以内に“回収地点”へ向かえ!』
その声に急いでオムツの中から無線機を取り出し
「おお、こりゃいかん!さっさと戻らんと置いていかれてしまう!
それではお嬢さん方また今度どこかでお茶でもしよう!」
そう言い残し見た目にそぐわない程のスピードで走り去っていった
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「ふぅ、ふぅ、なんとか間に合ったわい………。」
「ああ……?爺さん今まで何処行ってたんだ?」
茂みから現れたジージョマンに荼毘が問いかけるが
「ホヘホヘホヘ、すまんのぅ。ちとトイレに………。
何せ年をとるとすぐ催してな、それなのになかなか出ききらないと言う厄介なもんでな。」
「おいおい、いきなり汚ねぇ会話すんなよ。清潔だな。」
「………まぁいい、とりあえずアンタが来ればあとはコンプレスだけだ。」
荼毘もめんどくさいと深くは問わず話を打ち切ると
「あら、来たみたいよ。」
マグネが指さす方向からコンプレスが向かってくるのが見えるがどうにも様子がおかしかった
「ムムム、なにやら慌てている様子だな。」
「どうしたんですかねぇ?」
カーメンとトガが呑気に話していると
「すまねぇ、振り切れなかった!すぐにターゲットの二人とオマケが来る!迎撃用意を!」
コンプレスが必死に叫ぶと同時に集まった輪の中に転がり込んでくると
ズドン!
「ハロー、エブリワンッ!!早速で悪いが全員ここでノックアウトさせてもらうぞ!」
三人を担いだテリーが着地した