神野区での激闘から一夜明け
日本中の人々はオールマイトの勝利という束の間の歓喜を味わった後に知る事になる
"平和の象徴は もういない"
ーーー警視庁会議室
警視総監を始めとした警察の上位役職者やヒーロー公安委員会、更には一部の政府関係者が一同に集まっていた
神野区で起きた事件の顛末、被害状況そしてこれから起こるであろう出来事への対策を話し合う場として緊急で設けられたのだが
「大元は捕えたとは言うものの……。」
「実行犯である死柄木以下連合組員はすべて取り逃がした挙げ句謎の増援まで現れた………。」
「しかも、その増援は並みのヒーローを寄せ付けないどころかエンデヴァーすらも容易く捩じ伏せたと……。」
会議室の空気はとても重苦しいものになっていた
オールマイトの引退はまだ正式に公表されていないがあの様子を見れば誰もがこれ以上今までと同じように戦える彼の姿を想像出来ないだろう
「………平和の象徴の喪失。そして今回の事件によりヴィラン達は気付いた筈だ。馬鹿でも集まりゃここまで事を起こせる。」
「我々警察もいつまでも手をこまねいている場合ではない。」
「それはこちらとしても同じだ、早急に国民の不安や抑止力的な力を示さなければこの国は瞬く間に崩壊する。」
「抑止力はエンデヴァーに任せる他あるまい、あの場にいた警察官、プロヒーロー達には箝口令を出している。
あの事件の裏で起きた事は表には出てこない様にしてあるだが………。」
「国民の不安と言う点ではな……。」
No.2ヒーローであり逮捕件数はオールマイトを越えるエンデヴァーだがファンサービスやマスコミの対応等はお世辞にも良いとは言えず国民の中では不信感が少なからず出るのは火を見るより明らかだ
「それでしたら一つだけ手があります。」
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神野区ので起きた戦いからおよそ一週間。
世間はその衝撃を静める暇なく追い討ちのような情報が次々と投下されていった
オールマイトの引退、No.3ヒーロー・ベストジーニストを始めとする一部プロヒーロー達がケガにより長期の戦線離脱
数々のヒーローと日本の平和に大打撃を与えた一連の事件は『神野区の悪夢』と呼ばれる程に世間に深い爪痕を残した……。
夏休みも残すところ十日程となったこの日
雄英高校では合宿以降初めてA組が一同に会していた
「さて……とりあえずではあるが1年A組、無事に集まれてなによりだ」
相澤が生徒全員に向けて話し始める
なぜ彼らがこうして集まっているのかそれは根津校長がかねてより計画していた全寮制導入プランを今回の事件を契機に実行に移した為であった。
全寮制は今年から我々生徒たちの安全の保障のため、雄英高校が新たに模索した手段の一つとして導入されたものだが
無論すんなり事が運んだ訳でもなく、雄英にこれからも通わせていいものかという親が半数以上はいたのだが傷もまだ完全に癒えきらない状態を押しての相澤、オールマイト両名の家庭訪問が実を結び
全員集まれることになった。
それだけでもちょっとした奇跡と言っても過言ではない。
「とりあえずは寮について説明をしたいところだが、まずはこれからについてだ」
「これから……?」
それで全員が首を傾げる。
「襲撃事件についてで手ぶら状態であったが、今後は合宿での方針である『仮免取得』に向けて動いていく」
仮免取得という単語が出てくると生徒達は新たなイベントに期待を膨らませるが
騒ぎ出しそうになったところで、
「騒ぐのは結構だがここからは大事な話だ。
いいか…………飯田、轟、切島、八百万、緑谷、翔野……今言った6名があの晩あの場所へ爆豪救出に赴いた」
一瞬にして場が冷え込んだのを相澤は見越して言葉を続ける
「その様子だとだいたいは把握していたようだな。
行った6名はもちろん、止められなかった14名も理由はどうであれ同罪だ、結果として俺たちの信頼を裏切ったのだから。
特に緑谷、翔野。お前らは身をもって知ってるはずだ。
色々と棚上げした上で言わせてもらう。オールマイトの引退という騒ぎと"これ"がなければ……俺は迷わずに爆豪以外の全員を除籍処分にしていただろう。」
相澤の目付きが鋭くなり二人を捉えつつもズボンの後ろポッケに押し込んでいた雑誌を広げる
【月刊ヒーローマガジン・特別号~
と題されたそれはオールマイトの引退会見の次の日に何の前触れもなく全国の書店やコンビニ等で発売されたもので表紙を飾っているのはテリーと緑谷出久の保須市での激闘の映像を切り取ったものだった
その中身は表紙の二人を中心に雄英高校在学中の目ぼしいヒーロー科の生徒の紹介やページ数は少ないものの他校のヒーロー科やデビューして2年以内のヒーローたちの特集でありオールマイト引退後も安泰であると強調されるような作りとなっていた
(ったく、どうせ国のお偉いさんの仕業だろっ!こんな少年二人に大人の付けを引き渡すなんざ非合理もいいところだ!)
相澤は心の中で毒づくも
「‥‥‥‥今後は正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい。──以上」
浮かび上がってくる色々な感情や言葉を飲み込み集約して発してこの会話を打ちきり、そのまま寮の説明へと移ろうとしたが
あまりの空気の重苦しさに耐えかねた爆豪の機転と上鳴の犠牲によって幾らか空気が和らいだ後に相澤による説明が始まった。
1棟1クラス右が女子棟、左が男子棟と別れていて1階が共同スペースで食堂や風呂場、洗濯機完備と致せり尽くせり。部屋ニ階から1フロアに男女各4部屋の5階建てで一人一部屋、中もエアコントイレ冷蔵庫クローゼット付きと学生という身分を考えれば十二分過ぎる代物に
「豪邸やないかい」フラッ
麗日は気を失いかけていた
「とりあえず今日は部屋を作ってみろ明日今後の動きを説明する以上解散!」
「「「ハイ先生!!」」」
翌日、テリー達は教室に集められた。
「昨日話した通り、まずは仮免の取得が当面の目標だ。ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然その取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその取得率は例年5割を切る」
「仮免でもそんなキツイのかよ」
峰田がゲンナリした様子で呟く。
「そこで今日から君らには一人最低でも二つ...」
「「「必殺技を、作ってもらう!!」」」
その言葉を放ちながらミッドナイト、エクトプラズム、セメントスがドアから現れた。
「「必殺技!!!学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタァア!!!」」
切島と瀬呂の叫ぶと同時にクラスのボルテージも高まる。
「必殺!コレスナワチ、必勝ノ技・型ノコトナリ!」
「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」
「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」
「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γに集合だ」
こうして彼らの"日常"は再び始まろうとしていた
短いですが今回はここまでとさせて頂きます
次回、特訓開始!