それ行け我らのカツウォヌス!   作:なちょす

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天真爛漫、その名は『ジータ』(1/2)

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 ユディスティラの心優しい(?)漁師の方々と共にアルバコアパーティーを済ませた俺達。腹が膨れ、アンチラは爆睡をこき、ワルピリは漁師の人達と腕相撲をしていた。

 

 実に平和だ。

 

 先程まで巨大マグロと壮絶な死闘を繰り広げたとは思えない⋯⋯⋯まぁ、リンチだったけど⋯。

 

「おやライド、疲れてんのかい?」

 

「あぁ、シグさん⋯そっすね⋯⋯」

 

「ははは!無理も無いか。この辺は泊まる宿も結構あるし、ゆっくりしていきな」

 

 なんて優しい人だろうか。こんな見ず知らず、珍妙奇天烈な三人衆相手にここまで言葉を掛けてくれるとは⋯やはり器がデカい頭領なだけあるな。

 

「⋯⋯⋯⋯。」

 

「どうしたのさ?」

 

「や、何でもないっす」

 

 うん⋯デカい。

 

 だが宿に泊まるにしても非常に困ったことになった。今は手持ちがまるで無いのだ。元々どこから自分が来たのかすら分かっていないのに、手持ちなんかある筈ない。

 

 そう言えばワルピリは王様だって言ってたけど、手持ちとかあるのかな⋯いや、でもここで借りを作るのもなんか違うよな⋯⋯。

 

 アンチラは⋯⋯良いや。首に尻尾巻いてきてるし、寝てるし、そもそもこんなちびっ子猿にそんな相談する方が───

 

「痛って」

 

「すぅ⋯すぅ⋯⋯」

 

 後頭部に走る衝撃。先端が後ろを振り返れば、如意棒とやらに抱きつく猿娘。静かに寝息を立てながら、何食わぬ顔で寝てやがる⋯。

 

「⋯起きてんだろ」

 

「むにゃ⋯」

 

「おい、暴力猿──痛っでぇ!!」

 

 避ける間もなく伸びてきた如意棒は、俺の顔面を直撃した。首に尻尾が巻かれている時点で逃げ場無し。キラリと光る先端は、次に狙い打つ箇所を見定めている様にも見える。

 

 なら⋯⋯戦うしかない。

 

 

「上等じゃコラァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぐぅっ⋯⋯」

 

 

 まぁ、勝てるわけが無い。アルバコアの体をぶっ叩いた如意棒様だぞ?ピストンみたいに収縮を繰り返して顔面に当たる攻撃を、戦うすべも無い俺がどう捌こうと言うのか。

 

「お、おいライド⋯大丈夫かい?」

 

「ふぁい⋯」

 

「いやいや、顔の形変わってるよアンタ⋯」

 

 

 

「あの〜⋯大丈夫ですか?」

 

 

 

 そんな雰囲気の中、この場に似つかわしくない高めの声が聴こえた。可愛らしいとでも言えばいいのか、年頃の少女とでも言えばいいのか⋯とにかくそんな感じの声だ。生憎前が見えないから、それが誰なのかは分からないが。

 

「今治しますね」

 

「えっ⋯?」

 

 ほんの少しだけ、暖かな光が顔に照らされたと思えば、顔の凹凸はすっかり無くなっていた。

 それと同時に視界に映る一人の少女。

 

 夜の海風に靡く金色の髪と、目のやり場に困る水着姿。

 自分と同じくらいの少女はニコリと笑い、満足気に立ち上がった。

 

「あり、がとう⋯⋯」

 

「どういたしまして。シグさーん、久しぶりー!」

 

「おぅ。随分久しぶりじゃないか」

 

「えっと⋯シグさん、この人は?」

 

 俺の言葉にハッとした彼女は、改めてこちらを振り向いた。

 

「私はジータ!こう見えて、騎空団の副団長をやってます!」

 

「あっ、どうも⋯ライドです」

 

 満面笑顔に片手ピース。騎空団と言うのが何かは分からないが、シグさんと顔見知りだったり副団長と言うからには物凄い立場の子なんだろう。

 そうは見えないが────

 

「ちょっとゴメンね」

 

「えっ───」

 

 刹那。

 

 顔の横を何かが飛び去っていった。振り返り後ろを見てみれば、あろう事か知らないおじさんの眼前に剣が刺さっているではないか。

 

「おじさーん!漁師さん達の荷物漁っちゃダメですよー!!」

 

「ひぃっ⋯!!す、すんませんしたァっ!!」

 

「気を付けて帰ってねー!!」

 

 あぁ⋯ようやく分かった。俺の本能も、俺の中で休んでいるカツウォヌスも、叫んでいる。

 

『絡んじゃいけない』、と。

 

 世の中にはそう言った類の人が何種類か存在している物だ。この世界の全てを知っている訳では無いが、大体の事は記憶に残っているものだ。

 

 危ない組織絡み。

 美しい女性。

 絶対的強者。

 ぶっ飛んだヤツ。

 

 目の前にいる彼女はどうだろう?危ないかどうかは別としても組織絡み。美しい女性⋯に近い、可愛らしい少女。滲み出る強者感。

 

 そして───ぶっ飛んでいる。

 

「じゃ、じゃあ俺らもこの辺で失礼しますね!!シグさんまた明日!ワルピリー!行くよーーー!!」

 

「はっはっはっ!30人では我を止められんぞ?次はもっと増やすが良い。我は何時如何なる時でも再戦を受けようぞ!!」

 

 

『オッス!!ワルピリの旦那、お疲れっしたァ!!』

 

 

 何してんだあの人。

 

「ライドー!あんた宿は決まったのかい!?」

 

「何とかしますからっ!ありがとうござい───」

 

「ちょっと良いかな??」

 

「まあぁあっ!?」

 

 急に目の前に現れたジータ様。やっぱおかしいよ。こっちは小走りである程度距離離したのに。

 何で目の前に居るんだよぉ⋯⋯。

 

「痛って」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ライド」

 

 小走り中に急ブレーキを掛ければ、当然後ろの人も急ブレーキを踏まなければいけないわけで。筋斗雲(もっくん)(アンチラ談)の上でスヤスヤと眠っていたお猿さんは、自分の意思でそんな事出来るわけが無いわけで。

 

 仰け反った頭と寝ている頭がぶつかるわけで。

 

 涙目になりながらおでこを抑えるアンチラの目は、明らかに不機嫌MAXで。

 

「⋯⋯す、すまん⋯」

 

「天上天下⋯⋯」

 

「待ておいっ!!今謝ったろ!?俺だって食らったんだからおあいこじゃねぇかっ!!」

 

「如意自在⋯!」

 

「聴けって───!!」

 

 

「はーい、そこまで!」

 

 

 顔面に伸びてきたアンチラの如意金箍棒は、俺の顔面スレスレで横からの手に受け止められた。

 

 素手で。

 

 これには流石のアンチラも驚きを隠せないらしい。

 

「相変わらず仲が良いのだな!」

 

「そう見えるかいワルピリさん⋯⋯」

 

「これで3人揃ったね!じゃあ改めて⋯⋯」

 

 その場でくるりと回った彼女は、顔の前で手を合わせ、俺達の方に向き直った。

 

 

「ちょっとお願い、聞いてくれないかな?」

 

「⋯⋯⋯はい?」




メンバー構成

ジータ:全空一可愛いジータちゃん。よくグラン君よりも強く描かれるアイドル的存在。この作品での強さは後編で。

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