「ん?何がだい?」
「その、だって…」
「リーア…私は別に嘘は言ってないよ?…黒歌が深手を負ったのも本当だし、生死の境をさまよったのも本当だよ?」
「…でも、黒歌はもう目を覚ましてますよね?あれだと今も意識は戻ってない、みたいに聞こえたんですけど…?」
「そう言ったからね…実を言うとこれはグレイフィアのアイディアでね…」
「…え?」
…黒歌のいるという部屋の前に立つ…どうする?ノックをしてみるか…?
「今更迷っても仕方無いな…」
私は取り敢えずドアを叩く…返事は無い。私は旧校舎特有の木造の引き戸を壊さないように気をつけながら軽く力を入れ引き開け…
「…思ったより抵抗が無いな…手入れはきちんとされてるのか…」
中に入り戸を閉める。…私は旧校舎内の清掃等に割り当てられておらず基本オカルト研究部に行くくらいしか来ないのでここの構造を知らない…どうやらここは元は保健室だった様だ…
「…黒歌…」
幾つかある内のベットの内、カーテンを閉められている方に声をかける…白い、な…今も使われる事があるのか…?私はカーテンに手をかけ、開く。
「……」
目的の人物はそこに横たわり眠っていた…思ったより穏やかな寝息を立てる彼女を見て…安心…ん?
「黒歌。」
「…!……」
今動いた気がしたが…私は近くにあった丸椅子を引き寄せ座るとベットから投げ出されている黒歌の手に触れ…!
「…黒歌…起きてるのか?」
「…バレたにゃ…」
そう言って目を開ける彼女を見て私は…
「…てっ、テレサ?何で泣いてるにゃ…?」
「…多分、安心したからだよ…お前が無事なのを見てな…」
「…そうにゃの…」
「…すまなかった…」
「…へっ?」
「私が迂闊な事をしたせいでお前にこんな怪我を負わせてしまった…謝って許して貰える「テレサ」…何だ?」
「クレアは無事だったの?」
「…ああ。お前のお陰でな。」
「…そう。にゃら…良かった…」
「…何言ってる。お前はこんなにボロボロじゃないか…なぁ黒歌…」
「…にゃに?」
「…私は今まで素直になれなかった…心の何処かで大切な物を持つ事を恐れていた…クレアだけでも守る…それが私に出来る限界だ…だからお前を何時も邪険に扱って来た。…私自身がお前を大事じゃないと思い込む事で有事の際は情を捨て、切り捨てられるように…そしてお前が私を嫌ってくれる事を期待していた…私ではお前を守り切れないから…」
「…それで?」
「…だがお前は結局私の手から離れなかったし、クレアの為かと思えば何時もお前は私にも世話を焼いた。…分からなかった…何故こんな私に優しく接してくれるのか…」
「…一度結びついた縁はそう簡単に切れにゃいにゃ。それに…あんたみたいな不器用な奴を私は良く知ってる…一人にしたら絶対に潰れる…そう思ったから…クレアの事以上にあんたが心配で離れられなかったにゃ…」
「…そうか…」
「でも正直に言うとね、何度も出て行こうって思ったにゃ…だけど…その度に昔の世捨て人の様なあんたの姿が過ぎったにゃ…」
「……」
「答えてテレサ…あんたに取って私は何…?」
「…家族だ…お前は…私の家族だ…私には…お前が必要だ…!」
「…そう、それを聞けて安心した…」
「…クレアも心配しているだろう…元気になったら一緒に帰ろう…新しい家族も紹介したい…」
「…うん…楽しみに待ってる…」
私は掴んでいた彼女の手を少し力を入れて握る…彼女からも握り返されるのを感じた…ああ…生きている…黒歌は…生きてる…!私の頬にまた水滴が伝うのを感じた…
「…ああ…ここは雨漏りが酷いな…」
「古い建物みたいだからそんな事もありそうだけど…少なくとも今は雨は降ってにゃいにゃ…」
「…お前から窓は見えないだろう?何で分か「私は猫にゃ」……」
「黒歌はね、ずっと不安だったんだそうだ…テレサに取って自分がどういう存在なのか分からないから…家を出たいと言う黒歌にグレイフィアは一つ提案をしていた…いっそそれならしばらくこっちに住んだらどうかと…いなくなればテレサにも貴女のありがたみが分かるでしょう…とね。…まあこの状況は不謹慎ではあるけどテレサの本心を確かめるにはチャンスだったからね…最初は渋っていたけど最後には黒歌も承諾したよ…」
「…そういう事だったんですか…」
「…ちなみにさっきの会話シーンもちろん録画住みだ。黒歌が元気になったら改めて渡す予定だ…実を言うと彼女が余談を許さない状況なのも事実だ…まあ彼女なら心配は要らないだろう…彼女をあそこまで駆り立てる物が小猫君なのか、クレアなのか、それともテレサなのかは分からないけどね…」
「……」
「…さあ、私はクレアとアーシアの様子を見て来るが君はどうする?」
「…小猫の様子を見て来ます…本人は顔に出さないようにしてましたけどあれはさすがにショックだったでしょうから…」