「ところでテレサ?」
「ん?何だ…あ…」
黒歌が無言で私の腕を指差す…見てみればパーカーの袖が破けていた…
……この世界に初めて来た頃、私の着るものはクレイモアの装備一式しか無かった…クレイモアの甲冑は全身鎧ではなくパーツタイプで後は薄手の布で出来た服のみである…初期の頃私はこの身体のスペックを活かしきれずはぐれ悪魔の攻撃を何度も食らった…当然の事ながら金属部分以外の部分は妖魔より弱いと思われる下級悪魔の攻撃でも何れは破けて使えなくなる…最終的にはぐれ悪魔狩りで稼いだ金で服を買ったが、はぐれ悪魔の攻撃を受けなくなったところで私の無茶な動きに耐えられる筈もなく服は破ける…
「…直しておくにゃ…そこに置いていくにゃ。」
「…いや、黒歌…今はあまり無茶をしては「置いていくにゃ」…はい…」
……黒歌が来て、毎回の様に服を使い捨てにする(戦闘が無くても普通に用務員の仕事をしているだけで、時折力加減を間違えて破いてしまう…)私を見兼ねたのか今ではこうやって黒歌が服を縫ってくれるのが定番になった…ちなみに使えなくなったクレイモアの甲冑用の服を新しく作っているのも黒歌である…仙術で布の強度を上げているらしく私の動きにもある程度ついてくる…本当に黒歌には頭が上がらない…。
「…黒歌…」
「…にゃに?」
「…いつもありがとう…」
「…どういたしましてにゃ。」
やれやれ…もう私は彼女を手放せんよ…小猫に何て説明すれば良いんだろうな…?
黒歌のいる部屋を出る…心配だがここにいれば取り敢えず安全だろう…クレアたちの様子を見に行こうか…
…ドアの前に立つ…静かだな…私はノックをした。
「…どうぞ」
グレイフィアの返事があり私は中に入った。
「…テレサ…」
「…二人はどうしてる…?」
「…さっき漸く眠ったところですよ…大変でした…二人共黒歌の様子を見に行きたいと聞かなくて…」
「…そうか…」
同じ布団で眠る二人を見る…クレアは分かるが、アーシアもか…こいつなりに責任を感じてしまったのかも知れんな…
「…随分仲良くなったんだな…」
「…言葉が通じないのはこの二人に取って壁にはならなかった様ですよ…」
「…そうか…」
どうなるかと思ったが…不謹慎だが返って良かったのかも知れんな…
「…しばらくは貴女と黒歌がいれば問題無いし、クレアもアーシアも覚えが早い様ですから何れ通訳は必要無くなるでしょう…ところで…」
「…何だ?」
「…これからどうするつもりですか…?」
「…漠然とし過ぎて分からん…どうするとは?」
「…まず貴女たちは住むところが無くなりました…」
「……そうだな…。」
「…住む所はこちらで用意出来ます…でも、このまま駒王町に戻ればまた狙われるかもしれません…」
「……」
「…そこで提案です…冥界に来る気はありませんか…?」
確かにサーゼクスたちの目の届く所にいた方が安全か…だが…
「…私の一存では決めれんよ…転移出来れば学校も変わらなくて済むがクレアたちにはそれなりに苦労を強いることになるしな…」
「…では、四人で話し合って決めて置いてください…今日はこの後私たちの所に泊まると良いでしょう。」
「…分かった。…すまんな、世話になる…」
「…テレサ、遠慮は要りません。私たちは家族なんですから…」
「…ありがとう…」
私は頼ってばかりだな…