「がはっ…!」
私の蹴りを鎧の上から喰らい、崩れ落ちる兵藤一誠…それを見ながらさっきまでの事を思い出す…
…叩き起された兵藤は赤龍帝の篭手が勝手に発動している事と私が部屋にいることに驚いていたが、時間が惜しい…今しかないのだ…ドライグが気紛れを起こしている今しか、兵藤が強くなる方法は無い…
簡単に説明したが奴はあっさり納得した。…ドライグの存在を信じるかどうかの話になるかと思ったのだが奴曰く…
『いや、それが…何か起きるなりうるさいくらいに頭の中で声が響いてまして…信じざるを得ないと言うか、何と言うか…』
戸惑いはある様だが状況を理解しているなら話は早い…私は兵藤を外に引っ張り出すと剣を向けた。
「…兵藤、それで終わりじゃないよな?勝手な言い分で悪いが、これでも私はお前に期待しているんだ…失望させないでくれ…」
「…ゲホッ!分かってます…俺は男です…女性に期待されて応えない訳に行きません…!」
…良い目だ。理由はともかくこいつはまだ諦めていない…だが…
『急げよ人間、今のお前がその姿を保てるのはせいぜい五分が限度。それ以上は死ぬぞ?』
「うるせぇ!分かってんだよそんなの…!」
時間限定の禁手…それがドライグの貸す力。…確かに兵藤一誠は私のスピードについてくるようになった…そしてパワーも私と打ち合いが出来るレベルに達してる…
『…化け物め。俺がここまでしてやっても互角に持ち込むのがやっととはな…!』
「…これでも人を辞めて長い。高々悪魔になって数週間で、しかもろくに戦いをした事も無い奴に負けられん。」
例え兵藤一誠がここで負けたとしてもこれ以上譲歩は出来ん…早く私を破れ…兵藤…!
…腕の時計をチラ見し、既に時間が残り三分程になったのを確認しつつ私は構え直した。
「おりゃあ…!」
『explosion‼︎』
「どうした?闇雲に殴りかかっても当たらんぞ?」
兵藤が殴りかかって来るのを横にすり抜ける様にして躱し、肘を側頭部に叩き込む。
「…ぎいっ!」
兵藤が木を何本かへし折りながら吹っ飛んで行く…ん?
「っ!らあっ!」
一際太い木に足を着けて着地しその木を蹴飛ばし私に向かって飛んで来る…
「…ふむ。」
「ゴフッ!」
兵藤が眼前に来た所で私は奴にアッパーを叩き込んだ…重い手応えだな…加減はしたが顎に罅位は入って…おや?
「…があああ!」
空中に打ち上げられ、地面に背中から落下した兵藤一誠はまるでそのダメージが無いかのように立ち上がると私の腹に拳を…
「…良く頑張ったな。お前の勝ちだ兵藤…良いよな?ドライグ?」
『…ふん。良いだろう、約束は約束だ。及第点を与えてやる。』
ろくに力の入ってない拳を叩き込んだというか押し当てた状態でそのまま気絶した兵藤一誠を私は抱き留めた…