「トイレに行ってくる。」
そう四人に告げて席を立つ…この手の店は割と広かったりするが特に迷う事は無く辿り着いた。
……特に何があるわけでもなく普通に用を足し、個室を出る。手を洗い、乾かし、外に出る…大抵トイレ近くの通路は比較的狭い。前から来た女性客に会釈しつつ、身体を避けながらすれ違う…
「あら?ねぇ、ちょっと貴女…」
……後ろから声をかけられた気はするが私は別に彼女に心当たりは無い…無視して歩き続ける。
「ちょっと!」
後ろの女に肩を掴まれ…!何て力だ…!
「何をす…!「Hello♪」お前…!オフ「ハイ、ストップ♪」ウグッ!」
振り向いた先にウィッグを外したオフィーリアがいて思わず声を上げようとした私の口に奴の手が置かれ、更に顎を掴まれそのまま壁に叩き付けられる。
「お久しぶり♪今は私もプライベートなの…少し静かにして貰える?」
「ヌグッ…!」
呼吸が…顎が軋む…!
「今からこの手を離すわ。で・も・いきなり大きな声出さないでね…約束出来るわね…?」
「ウッ…!」
どちらにしろここでこいつに暴れられたら一般客はまだしもクレアたちも被害を受ける…私に否やは無い。
「…ハイ。喋って良いわよ。」
オフィーリアが手を離す…
「…ッ…お前、何でここに…!?」
壁に背をつけたまま床に座り込み、顎を押さえる私の前でしゃがみこむ奴に問いかける。
「だ・か・ら・私もプライベートなの♡あっちではこんなお店無かったからちょっと興味があってね。」
「……一人でか?」
「いーえ。ちょっと素敵な殿方と一緒に♡ここに行きたいと言ったら彼、すごい面食らってたわね。」
そう笑う奴は本当に楽しそうな笑顔を浮かべていた。
「…楽しそうで何よりだ…で、私に何か用なのか…?」
「別に何も♪久しぶりに会ったんだし、挨拶くらいするでしょ?」
「…覚えておけ…久しぶりに会った相手に普通暴力は振るわない…ここはそういう世界じゃないんだ…」
まああっちなら良いというわけでもないんだが…
「あら?そうなの?」
「…分かってて言ってるだろ、お前…」
「もちろん。私も本当はそれぐらい知ってるわよ?でも貴女も悪いのよ?いきなりこんな所で大きな声出したら迷惑でしょ?」
「…お前相手なら警戒して当たり前だ…!」
「あら怖い♪こんなか弱い女の子に向ける殺気じゃ無いわよ、それ。」
「…本当にこの場で戦うつもりは無いんだな…?」
「さっきそう言ったじゃない。それじゃ、また何時かの夜に…決着はその時着けましょ。」
そう言って立ち上がり、私から離れ、トイレのドアに向かって行く…私はその背に向かって何故か声をかけていた。
「…今、この世界で送る日常が楽しいなら自分から壊す必要は無いだろ…?…私とお前が戦ったらどちらかが死ぬんだぞ…?」
奴は歩みを止めた。
「そうねぇ…確かに貴女もあの時より強くなったみたいだし、次は私の方が負けてしまうかもしれない…でもね…」
そこで奴が振り向く…
「疼くのよ…この身体が…戦いたくて…堪らなくなるの…」
……私は先程とはまた違ったその蕩けきった笑顔を直視出来ず目を逸らした。
「じゃあね♪」
その声に視線を向けるとオフィーリアがドアの向こうに消えて行く所だった。…ドアの閉まる音が聞こえ、私は漸く一息付いた…