「さて、何時までもこのままという訳には行かないか。」
大してダメージがあったわけでは無いが…精神的疲労か、床に手を付けて力を込めても上手く立ち上がれず、壁に背中を擦りつけながら立ち上がり、軽く深呼吸して首をゴキゴキ鳴らした…そう言えば…
「私の記憶が確かなら原作でクレイモアがトイレに行くシーンは無い。…私は半覚醒して以来、何故かこうやって用を足しに行く事が当たり前になったが、オフィーリアもそうだとは考えにくい…恐らく私が特殊な例な筈だ…」
原作で書いてないだけで普通に用を足す事もあるかもしれん…単に私が忘れているだけ、という可能性もある…最も今回オフィーリアは男と来た、との事だから化粧直しかもしれんな…何にしてもここに長居して鉢合わせしたくは無い…他の客や従業員に見られるのも面倒だ…考察は帰宅してからにするか…
「随分遅かったわね、テレサ。」
「ん?アーシアももう食べ終わっていたか、待たせてしまったな…すまん。」
「ねぇ、テレサ…」
「…どうした?」
「何か…あったの?」
……やはりクレアには気付かれてしまうか…だが、クレアには言いたくないな。
「…何でもない……いや、久しぶりに出かけたから少し疲れたのかもしれんな…」
「…そう…」
「まっ、そういう事もあるだろうよ、そろそろ帰ろうぜ、俺もいい加減戻らなきゃなんねぇ。」
「すまんな…」
アーシアとクレアを先頭に乗って来た車に向かう…と、
「…で、何があった?」
「……分かるのか?」
「恥ずかしい話だけどクレアが聞くまで分からなかったわ。」
「……クレアとは一番長いからな…そう簡単には隠しきれんようだ…最もクレアには話したくない…お前らにも…と言っても無駄か…」
「当然でしょ。」
「悪いけどな、俺はお前のためなら全てを投げ出す覚悟もあんだぜ?」
「…勝手に捨てようとするな…私のせいで堕天使たちに何かあったら笑えん。…まぁでも、そうだな…お前らにも無関係じゃないかもしれ…ちょっと待て。」
「「どうした(にゃ)?」」
「あそこのカップルの女の方…分かるか?」
ちょうど店から出て行く男女の後ろ姿を指差す。
「見えるけど…」
「後ろ姿しか見えねぇが…俺にゃ分かるぜ?ありゃ相当の美人だな。」
「…オフィーリアだ。」
私の言葉に反応して声を上げようとした黒歌の口に咄嗟に手を当て、黙らせる。…アザゼルの方は顔を顰めて腕を組んだだけだった…さすがだな…ほとんど動じていない。そこで黒歌が私の手を軽く叩いたので手を離した。
「…成程な…良く何とも無かったな…お前…」
「……幸い奴は変装してまで人間としてのデートを楽しんでいたらしく戦う気は無かったようだからな…最も、警告はされたがな…」
「アンタの話聞く限り異常者だと思ってたけど…あれだと普通の人間の女にしか見えないわね…」
「異常だよ…本人は戦いの方が好きらしいからな…」
私でさえ戦いが全てでは無いというのに…いや…私はさっきあいつの顔を見られなかった…それは…
「…まっ、今は戦う気が無いなら、こっちから手を出す事もねぇだろ…逆に言やあ、今ならどうにか…どうした?」
「テレサ…顔色が悪いわよ?やっぱりあいつに何かされたの…?」
「…大した事はされてない。本当に警告だけだ…少し、疲れたがな…」
私も何れ、ああなるかもしれない…そう思えて怖くなったからだろう…