「ヒィ!誰ですか!?こっちに来ないで!」
「わ!?大丈夫だよ!だから暴れないで!?」
私の背後から大声と物音が聞こえる…
「本当に大丈夫なの…?」
「ああ…クレアなら…問題無い……多分…」
「テレサ、せめてこっち向いて言って。」
「……断る…」
……私は今振り向くと確実に取り乱すからな…
「そうにゃ!クレアなら多分大丈夫…な筈…にゃ…」
「黒歌、貴女も…それではクレアを信じて無いのと一緒ですよ?」
「嫌にゃ…!」
黒歌も完全に背を向けてしまっているらしい…というか何で私たちの部屋は防音がしっかりしているのにこの部屋の音は外に丸聞こえなんだ…!不安で仕方無いじゃないか…!?
「外には出たく無いですぅ!」
「あれ…?……あっ、いた!大丈夫だよ!無理矢理外に出したりしないから!私とお話しよう!ね!」
「ヒィ!?何ですぐにバレるんですか!?怖いですぅ!」
時間を止めて移動したが思いの外早く居場所に勘づかれてギャスパーが驚いているようだ…そりゃ分かるだろうな…その部屋にはお前の気配しか無いんだから…クレアの場合、無差別に感じ取っている為、対象の識別は出来ないが…他に誰もいないなら間違え様が無い…まあ部屋自体あまり広くないとはいえ、気配を感じ取れるというのが既に異常なんだが…
「本当に話すだけですか…?」
「うん、私は何もしないよ。」
「嘘…」
「驚いたな…あれ程警戒心の強い彼が…」
「アレがクレアだ…最も私もあそこまでやれるとは思わなかったが…取り敢えず一旦ここを離れるぞ?…ギャスパーにこれだけの人数が部屋の外にいるのに気付かれたらクレアのやった事が無駄になる。」
「だが、クレアに何も伝えず離れるのは…」
「あいつは自分で気付くさ…それにクレア自身、かなり好奇心の強い奴だからな…しばらくは出て来ないだろう…」
「それでね、ギャスパーは可愛い物が好きなんだって!」
それから数時間後…一旦リアスたちが引き上げた後で、ギャスパーの部屋から出て来たクレアは自分で私たちの部屋まで戻り、嬉しそうにギャスパーの事を報告して来た。
「そうか…楽しかったか?」
「うん!」
……そうやって満面の笑みを向けられると今更だが罪悪感が増すな…完全にクレアに丸投げしてしまったからな…
「それで…どうだ?」
「えと…私の事は怖がらなくなったけど…多分まだ他の人には…」
「そうか…どうにかなりそうか?」
「分からないけど…やってみる…私もギャスパーともっと仲良くなりたいし…」
「そうか…悪いが頼む…このままにしておくのはギャスパーの為にも良くなくてな…」
「でも、私は無理に外に出さない方が良いと思う…」
それは私も分かっている…逼迫した事情があるとはいえ、無理に引っ張り出して神器の力を暴走させられても困るし…何よりギャスパーの事を考えれば当然だ…
「ああ…だからもしギャスパーが外に出てみたいと言ったら…お前が手を引いて欲しい…ギャスパーもお前という友達がいるなら不安も薄れるだろう…」
……ギャスパーの持つ力は絶大だ…クレアに戦う力は無いが、ギャスパーならクレアを守る事も出来る…下手をするとギャスパーをクレアに依存させる事になるか…我ながら狡いやり方だな…こんな事をクレアにさせなければならない自分の不甲斐なさが本当に嫌になる…
「分かった…テレサ?」
「ん?」
「私は大丈夫だよ?…だから気にしないで?」
「…そうか、ありがとう…」
……クレアの一言に安心しそうになる自分を呪う…これではギャスパーを依存させるより先に私自身がクレアに依存してしまっているな…私は何時かクレアが自立出来る様になったら、さっさとクレアから離れた方がクレアは幸せになれると常々思って来たが…悠長な事を考えないで早目に離れた方が良いのかもしれんな…クレアはもう自分の足で立てる…結局、離れたくないのは私の方だ…全く…我が事ながら…反吐が出る…