黒歌も部屋に入り一人きりになる…私はクレアの携帯を手に取り先程の写真を表示した…先に見たのとはまた違った笑顔を浮かべたクレアの隣にぎこちないが一応笑顔を浮かべたギャスパーが写っている…ふと、今更だが転生したとはいえ、吸血鬼は写真に写るのか?…と、いう疑問が頭を過ぎるがはっきり言ってどうでもいいのでさっさと隅に追いやる。
「…言ってしまえば私は…ギャスパーの事も利用しようとしているんだよな…」
単なる引きこもりではなく、実は今も眷属としてきっちり仕事をこなしているだろう女装が趣味の少年について思い浮かべる…実は昼間も普通に行動出来るのに完全に昼夜逆転生活になってるんだよな…
「自分からやると決めた以上、ここで私が痛痒を感じてしまうのは可笑しいな…いや、私はクレアに投げただけだからそれを感じる事も本当は無いわけか…」
ギャスパーにだけはせめて事情を話すべきなのだろう…あいつなら信用出来る…もしもの時、私や黒歌が駆け付けられないなら…あいつにクレアを守って欲しいと考えるのは勝手な想いだろうか…
「……」
私はテーブルに置いたクレアの携帯にまた触れる…そして電話をかけた…
『…もっ、もしもし…クレアちゃん?……どうしたの?…あっ、あれ…?もしもし「もしもし」ヒッ!?クレアちゃんの声じゃない…!だっ!誰ですか!?』
電話越しなのにも関わらず思いっきり怯えるギャスパーに苦笑しつつ、用件を伝える事にする…クレアがまさか初日でギャスパーの携帯の番号まで手に入れるとは思いもしなかったな…
「そう怯えないでくれ…私はクレアの姉でテレサと言う名だ…少しお前と話がしたくてな…」
『クッ、クレアちゃんのお姉さん…?』
「そうだ…突然知らない番号から電話が来てもお前は出ないだろう?だからクレアには悪いがこの携帯からお前に電話をかけさせて貰っている…」
『そっ、そうなんですか…そっ、それで僕に何の用で…』
「…そうだな…少し、長い話になる…今、時間は大丈夫か?」
『大丈夫ですけど…』
電話越しであるお陰か落ち着いて来た様だ…ずっと怯えられても話が出来ないから助かる…
「…そうか、実はクレアには内緒の話なんだ…この後私の携帯からかけ直す…出てくれるか…?」
『…分かりました…お待ちしてます…』
「そうか…では、少し待っていてくれ。」
私は電話を切り、通話履歴を呼び出し、削除した…すまんなクレア…お前は最初にギャスパーと電話したかっただろうに…クレアの携帯をテーブルに置くと、今度は自分の携帯を手に取り、私は部屋を出た。
廊下を歩きながら、私はギャスパーに電話をかける…しばらく呼び出しが続いたがやがて相手が電話に出た。
「もしもし?」
『もっ、もしもし…テレサさんですか?』
「ああ、私だ…すまないな、忙しいだろうに…」
『大丈夫です…』
「…さっきも言ったがクレアには内緒の話なんだ…だが、非常に大事な話だ…突拍子も無い話だが、出来れば信じて欲しい…」
私はクレアのやろうとしている事を無駄にしようとしているだろうか…?…ギャスパーは嘘は苦手なタイプだろう…私がこうしてギャスパーと話をしてしまった事はクレアにはバレるだろうな…その時、クレアは私の事をどう思うのだろう…
『…信じる?…あの…そもそもクレアちゃんは知らないんですよね…?…どうして…僕に?』
「…お前は気付いたか分からんがクレアは人間なんだ…出来れば巻き込みたくない…これから聞かされるお前には悪いが…お前からも今から言う事は…クレアには内緒で「あの…」どうした?」
『…ぼっ、僕が偉そうに言う事じゃないと思いますけど…そう言うのって良くないんじゃ…家族なんですよね…?』
……そうか…こいつも…
「…お前にはまだ分からないかもしれないが…家族だからこそ絶対に言いたくない事もあるんだ…仮に伝わる時が来るとすれば…それは…私が死んだ時で良い…」
『そんな…そんなの……テレサさん…』
「何だ?」
『僕が…判断します…僕が…聞いてクレアちゃんに話すべきだと思ったら…話します…それで良いですか…?』
臆病な筈のこいつが私に条件を付けてくる、か…いや、こいつは元々強い…今まで表面上現れなかっただけだ…そして…こいつは既にクレアの事を大事に思っている…本当にこいつを選んで良かったな…こいつならクレアを守ってくれるだろう…
「構わない…それではまず、私の正体から明かそう…あー…これはクレアも知っている話だ。私は…」