『あの…それ、本当なんですか…?』
「ああ、本当だ…やはり信じられないか?」
廊下をゆっくり歩きながらギャスパーと会話する…信じそうにない雰囲気を醸し出すギャスパーを嬉しく思ってしまう辺り、私ももう重症だな『いえ、信じます』…私はその場で転けそうになり咄嗟に壁に手を付いた…おい、まさか…お前もなのか…?
「信じるのか…?私が言うのも何だがかなり出鱈目な話だぞ?」
『信じます…貴女はクレアちゃんのお姉さんで、貴女も嘘を付いているようには感じなかったから…』
こいつもそういうタイプか…事実では無く、自分の直感に従う…
「…そうか…まぁ、それなら話は早い…にしても…驚いたな…?」
『えっ?』
「お前が私の話を信じたという事は…お前が敵に襲われるかもしれない、という事を受け容れた、という事になるが…」
『あの…僕…初めてじゃないんです…狙われるの…僕は元々吸血鬼と人間の子供で…ずっとそれで狙われて来たから…』
「そうか…」
目的地に着いた…私は足を止める。
『…テレサさん?もしかして今、近くにいます…?』
驚いた…確かに私は今、ギャスパーの部屋の前にいる…
「…分かるのか?」
『僕…ずっと狙われて来たから…さすがにそれだけ近くにいたら…分かります…』
「すまないな…戻ろう…お前を怯えさせたいわけじゃ『入って来て良いですよ』……良いのか?」
『僕…テレサさんに会ってみたくなりました…だから…』
「分かった…」
私が電話を切ると…部屋の鍵が開く音が聞こえた…私はドアに手をかけた…
「ギャスパー…いるのか…?」
部屋の中を見渡す…部屋にあるのは恐らくギャスパーの私物だろう小物や服、それから電源の付いたままのパソコン…その前の椅子に部屋の主は座っていない。
「ここです…テレサさん…」
くぐもった声が聞こえ、見るとダンボール箱に頭を突っ込み、こちらに尻を向ける形になっているギャスパーらしき物がそこにいた…
「ごめんなさい…いざ会うとなったら怖くなって…慣れるまでこのままでも良いですか…?」
……私にそういう趣味は無い筈だが、いっそ鷲掴みにしたくなる、異様な程形の良い尻を見ながら答えた。
「ああ…構わない。」
ギャスパーと言えばコレ…とも言える迷シーンに立ち会えた事に少し興奮して来るな…命のやり取りが無いから安心して楽しめる…
「それであの…大体の話は…分かりました…僕も何とか神器を制御出来る様に努力します…それで話の続きですけど…僕にクレアちゃんを守って欲しいというのは?」
ギャスパーの尻に見とれていた私はそこで我に返る…そうか…そこまで話したか…
「言葉の通りだよ…お前にクレアを守って欲しい。」
「でも…テレサさんは強いんですよね?それに…もう一人強い人が家族だって…」
「以前…私が不在の時、クレアと黒歌は襲われた。」
「えっ!?」
そこでギャスパーがダンボール箱から飛び出し、私と対面する事になった……成程な…確かに男には見えない…というか完全に美少女のレベルだ…これは道を踏み外しても何ら可笑しくないな…
「クッ、クレアちゃんが襲われたってどういう!?」
…そこまで取り乱す程、ギャスパーがクレアを想ってくれているのが本当に嬉しく感じた…こいつなら任せられるな…
「…クレアとは別にある少女を引き取った…こちらも特殊な神器を有してはいるが人間だ…その関係で少しな…誤解の無いように言うがそいつ自身は悪い奴じゃない…寧ろ異常な程善人だ…何れ、クレアに紹介されるかもしれんな…追加になってしまうが…出来ればそいつの事も守って欲しい…」
「それよりクレアちゃんが襲われたって…」
「そうだったな…結局、襲撃者は撃退出来たが、私が遅れた事でクレアは軽傷だったが、黒歌は生死の境を彷徨うほどの重症…」
「そんな…それじゃあテレサさんは僕に「まだ話は終わってないぞギャスパー」えっ?」
「クレアを殺す可能性があるのは外敵だけじゃない…さっき話したな?私は何れ覚醒者という化け物になると?」
「きっ、聞きましたけど…それが一体…まさか…!」
「お前に私を殺せなくても、お前が私の時間を止めてくれれば他の奴は簡単に私の首をはねられる…そういう理由もあるんだよ…お前に頼むのは…今言ったのは一応リアスたちにも内緒で頼むな?…話は終わりだ…邪魔したな。」
私はギャスパーに背を向けた。