「駄目ですよ…テレサさん…」
気が付くとその綺麗な顔を怒りに歪めたギャスパーが目の前にいた…さっき私はこいつに背を向けた筈…何が起きた?…いや、もしかしてこれが…
「止めたのか?私の時間を?」
「はい、止めました…まだ完全じゃないけど少し使い方が分かる様になりました…それにテレサさんにもちゃんと効く様で良かったです…」
……予想以上だ…こいつがきっちり神器を使いこなせる様になれば…
「…そうか。それを完全に使いこなせる様に頑張ってくれ…じゃあな。」
私の立ち位置は変わってない…ギャスパーが目の前に来ただけでドアは今もギャスパーの後ろにある…横をすり抜けようとするとギャスパーも其方へ動く…逆へ行こうとするとギャスパーもまた動く…何のつもりだ?
「ギャスパー、退いてくれ。」
「僕の話も聞いてください…テレサさんが一方的に話して僕の話は一切聞かないのは不公平でしょう?」
「……後日じゃ駄目か?」
「さっきの話…クレアちゃんに話しますよ?部長たちにも全部話します。」
綺麗な顔して…中々意地の悪い事を言う。
「……卑怯だな。」
「卑怯でも何でもいいです…僕よりもっと卑怯なのはテレサさんですよ…僕の話も聞いてください。」
「それだけ強い事を言えて引きこもりか?」
「…自分の不始末を他人に尻拭いさせようとするテレサさんよりマシですよ…僕、これでもちゃんと部長の眷属として仕事はしてるんですよ?」
「知ってるよ…それじゃあ悪いが無理矢理通らせてもら「させません!」…何?」
「妖力解放しようとしましたね?今なら僕もある程度自由に神器を使える様で、良かった…逃がしません…僕の話を聞くまでは…絶対に。」
今のこいつから逃げるには再起不能にするしかないな…恐らく殺しきれない…それに…
「分かったよ…降参だ…」
私はその場に座り込んだ…別に私はこいつを殺したいわけじゃない…クレアを大事に思ってくれるこいつには好感も持てる。
「…この部屋にも椅子と飲み物くらいありますから…持って来ます…」
ギャスパーが部屋の奥の暗がりに向かう…今なら逃げられるんじゃないか…私の中でそういう考えが過ぎる「逃げようとしても駄目ですよ?また僕が…止めます…」……無駄だった様だ…
「それで何の話だ?」
ギャスパーが持って来た紅茶を飲む…紅茶の味は良く分からないが…朱乃の味に似てる気が「副部長直伝です」
「……何で分かった?」
「実を言うと…部長からテレサさんと思われる人の話は聞いてたんです…それでよくその人は副部長の入れた紅茶を飲んでると聞いたので。」
「そうか…」
「…で、僕の話ですけど…嫌ですよ、そんなの…何でせっかくクレアちゃんと友達に成れたのに何で恨まれるような事を僕がしないといけないんですか?」
「クレアを大事に思っているならだな「貴女はクレアちゃんの想いを蔑ろにしてます…身勝手だとは思いませんか?」……」
「自分の家族が、自分の力に負けて化け物になって、友達に殺された…そんなの納得出来る人いるわけないじゃないですか。」
「……」
「僕に神器を使いこなせる様に努力しろと言うなら貴女もやってくださいよ…使いこなしてくださいよ…暴走なんてしないように…頑張ってくださいよ…」
「もう分かったから…勘弁してくれないか…?泣きながらそんな風に怒られると胃が痛くなって来る…」
顔が綺麗だから尚更、な…
「知りませんよ…貴女が悪いんです…ねぇ?僕の気持ち分かりますか?せっかく出来た友達の姉を殺す手伝いをしてくれって…その姉本人から言われて…しかも妹である友達には黙ってて欲しいって…分かりますか…そんな気持ち?…何も分からないから…そんな事言えるんでしょう?」
「すまなかった…」
「クレアちゃんとその子を守る件は了承しました…後日それとなく貴女に聞いた事にしてクレアちゃんに連れて来て貰って、会ってみます…でも貴女を殺す手伝いなんて…出来ません。」
「分かった…それだけで十分だ…ありがとう…」
「帰ってください…しばらく僕は貴女に会いたくありません。」
「ああ…私の事は大いに嫌ってくれ…だが、クレアとアーシアの事は「ふざけないでください…僕が気持ちの整理が着くまでって意味です…永遠に会いたくないなんて意味じゃない…!」…ギャスパー…」
「何れ僕の方からそっちに行きます…それまで待っててください。」
「頼みを聞いてくれてありがとう…また会おうギャスパー…」
私は席を立ち、ギャスパーに背を向けるとドアに向かった。