「今日はもう止めだ。」
私は剣を背中に背負った。
「あら?もうへばったの?私はまだ「いや無理だろ、お前、頭の中ぐちゃぐちゃだし」何それ?妙な言い掛かり付けないでくれる?」
「言い掛かりじゃないだろ…お前には悪いが私には分かるんだよ。私は妖力を読めると言ったろ?感情が乱れれば妖力も乱れる…そもそも太刀筋からしてブレるんだ…私でなくても気付くと思うぞ?…それとも、自分でも分かってないのか?」
「……」
「こういうのは柄じゃないし、苦手だからハッキリ聞く…正直に答えろ、あいつが好きなのか?…もちろん、恋愛的な意味でだ。」
「……正直、良く分からないの…これが恋愛的な意味でなのか…それとも身体の相性が良過ぎて執着してるだけなのか…」
「やはりあいつと肉体関係があったのか…なら…」
「えっ…?…ちょっ…!」
「身体の相性が良くて執着してるなら、私とすれば済む話だな?何せ、中身が違うだけで同じ身体だ…」
オフィーリアの肩を掴み、逃げられない様にしながら、顔を近付けて行く…
「止めて!」
私の顔を引っぱたき、怯んだ私からオフィーリアが距離を取った…
「…あっ…ごめんなさい「答えが出たな」…えっ…?」
「"私"を拒絶したという事はお前のそれが恋愛感情で無いにしても、お前は肉欲に関係無く、確実にあいつ個人に執着している…という事だよ。」
「そう…ねぇ?貴女はどう思う?」
「…お前のそれが恋愛感情かどうか、なんてのは私に答えは出せないな、それはお前の抱いている感情で私の物では無いのでね。」
「それにしたって…貴女は変だと思ったりしないの?…私たちは同性だけど。」
「同性だからと言って別に恋愛感情を抱くのが可笑しい、という事は無いだろ。そもそもそれを言ったら、同性で肉体関係がある時点で既に可笑しいだろうしな。」
「…だって…それは「色々鬱屈した物を抱えていても同類でない者には吐き出せない、そもそも同性である戦士としか交流を持つ事が出来ない…組織の者には異性がいるが想いを吐き出す事は出来ない…自分と同じじゃないから…大抵はこんな所だろ?…若しくは戦士になる前、妖魔に陵辱された為に男性恐怖症になってる場合もあるかもしれんが」…詳しいのね。」
「これでもこの身体になって長い…色々な奴を見て来たからな「貴女は誰かと深い関係になった事はあるの?」…肉体関係はあったが、恋愛に発展した者はいない…いや、違うな…大抵はそうなる前に死んでいるか、私が殺している筈だ…」
「…ごめんなさい。」
「気にするな…昔の話だ…。」
「せめて男性の戦士がいてくれたら私たちも普通の恋愛を「ん?何だ知らなかったのか?」何を?」
「昔は男の戦士がいたんだ…お前、覚醒者狩りには良く行ってたんだろ?男の覚醒者と戦った事は無いのか?」
「…いたような気はするけど…大抵はろくに喋らせる事も無く首を落としてたし…それに、てっきりそう見える女性なのかと思って…」
「そう言う理由か…実を言うと私も会った事は無いし…そう詳しく事情を知っているわけじゃないが…昔はそう数は多くないが男の戦士は確かに存在していたんだよ…一応、ある程度長くからいる戦士の間では割と有名な話だよ。」
「そう…どうしていなくなったのかしら?」
「妖力解放自体に快楽を感じて、すぐに覚醒者化するから組織が作らなくなった…という話だ…」
ミリアの調べた事実についての記憶はあるし、私自身もっと深く事情は知っているが…まあ別に語る必要も無いだろう…
「惜しいわね…せめてまだ男性の戦士がいたら「いや、お前も男性恐怖症のクチじゃないのか?だから同性である戦士に手を出してたんだろ?…本当に異性相手に性欲を満たしたいだけなら、一般人に手を出せば良かった話だ…組織の連中もその程度なら結果さえ出してれば文句は言わないし、私たちの様な身体であっても金を払ってまでしたがる物好きは腐る程いたからな…そもそもお前だって組織の命令で娼婦の振りくらいした事あるだろ?」……」
「…と言っても、先に言った通りお前は出来なかったクチなんだろうが「さっきから何で分かるの?」覚醒者狩り専門に回される奴なんて大抵は普通の町中に放り込んだら問題起こす奴しかいないからな…お前自身それを目的としていたわけだから丁度良かったんだろうが。」
「それが…何か悪いのかしら…!」
「怒るなよ…別にそんな事言ってないだろ。覚醒者狩りだって組織に貢献している立派な仕事だよ……余計な事を知られかねないから疎まれるがな。」
「……」
「そこまであいつが同性である事実がお前の足枷になっているなら…一つ朗報だ…」
「えっ?」
……あいつはこれだけは誰にも言っていないんだよな…本来は無理に言う事でも無いんだろうが…あいつもオフィーリアの抱えてる物には薄々感づき始めていた筈だ…にも関わらず、オフィーリアにまで何も言わないのはフェアじゃないだろう。
「あいつはこの半人半妖の身体になる前、つまり、私たちのいた世界とこの世界…両方を観測出来る世界にいた頃は…普通の人間の男性だったらしい。」
「……本当なの?」
「あいつはその時の自分自身の事はまるで覚えて無いようだが、これ自体は本当の話だ…これならお前も少し、心のハードルが下がるんじゃないか?」
必死で顔がニヤケない様に堪えようとするオフィーリアに苦笑しながら…こいつに関しての処遇をどうするか考えていた…思考が乱れまくってるのは問題だが、浮ついてるのも駄目だ…最悪、今回の戦いからは降りてもらうしかないな…正直、そんな奴に背中を任せるくらいなら一人でやった方が良い。