「テレサさん…」
「お前、ギャスパーか?」
暇なので人気の無い旧校舎を適当に歩いているとギャスパーに出会ってしまった…
「…今のテレサさんは僕の事、分からないんですよね…」
「…あいつと記憶は共有しているからな、お前の素性は分かるさ…神器の制御は出来るようになったか、ギャスパー?」
「あっ…はい、完全では無いですけど…僕が恐怖を抑えれば神器は発動しない事が分かったので「恐怖は抑え込む物じゃない」えっ?」
「覚えておくと良い…恐怖は受け容れ、戦う物だ…怖いと思う事は何も恥ずかしい事では無いし、いけないことでも無い…感じて当たり前…だが、全てはそれをただ恐れ、思考を止めるのではなく、どう受け止めるかだ…考える事を止めるな…そうすれば自ずと対処法は見えて来る。」
「…はい!ありがとうございます…えっと…」
「…テレサだ。私もテレサだよ、ギャスパー…ちなみにここでお前が何を言ってもちゃんとあいつは聞いてる…寝たフリしてるからな。」
「はい!ありがとうございますテレサさん!…その…僕の知ってるテレサさんに伝えてください…僕との約束がまだ果たされて無いので早く起きてくださいって。」
「私が言わなくても、さっき言った通りちゃんとあの馬鹿には伝わってる。」
「はい!それじゃあ失礼します。」
ギャスパーが私とすれ違う…ギャスパーはそのまま走って廊下の向こうに消えた。
「…お前、ギャスパーと改めて会う約束をしていたな…何時会う気なんだ?」
返事は無い…あの大馬鹿者が…
「ふ~ん…ギャスパーに会ったの?」
「ああ…随分明るくなったもんだな…」
「ん?私が会った時は驚かれて一瞬止められただけで、これと言って暗い印象は無かったけど…」
「暗いというか、異常な程怖がりでね…クレアがいるだろ?」
「……あー…私たちの知ってる方じゃなくて、あの子の家族になったまだ子どもの方の…で、それが?」
「あいつがギャスパーにクレアを会わせたんだが…歳下の、それも人間の少女にビビりまくりだったんだよ…」
「……今の姿からはちょっと想像がつきづらいわ…」
「それがああだからな…あいつも自分の知らないうちにギャスパーを助けてたわけだ…その癖ギャスパーとクレアをも利用してるのかもしれないと言う罪悪感に苦しんでな…」
「利用?二人に友人になってもらうなら、友人として多少依存しても普通じゃない?…性別の問題もあるし、少し歳が離れ過ぎかもしれないけど…」
「それがあいつには受け止め切れ無かったみたいだな。」
「そんな大した問題じゃない気がするけど…現にギャスパーはクレアの手を借りず、自分の足で歩いてるわけでしょ?」
「あいつはそうならない可能性が高いと思っていたわけだ…杞憂だったがな。」
最も今現在もクレアが寝込んでいるせいで自分の足で立つしか無くなったのかもしれないが…結果的にあいつの考える可能性はほぼ無くなったわけだ。
「あの子普段からそんな事考えて生きてたの?そりゃ壊れるわけね…」
……お前も原因なんだけどな…
「悩みと言うのは本人にとっては深刻でも傍から見れば大した事じゃなかったりするものさ。」
「そうね……ウジウジしてないで早く戻って来れば良いのに…あっ!別に貴女に消えて欲しいってわけじゃ…」
「私に気を遣わなくて良い。そもそも私は早く消えたいんでね。」
私は既に終わっているんだからな…