『テレサ…』
誰かが私を呼んでいるようだ…
『テレサ…』
目を開ける…
「お前か…どの面下げて私に会いに来た?」
私の前にあいつがいた…
『すまない…私は…お前に託されたのに…』
「謝罪は要らない。さっさと戻れ『それは出来ない』…何だと?」
『私はもう戻らない…もう現実を見たくは無いんだ…』
「随分…ふざけた事を抜かすじゃないか…!」
私はあいつに近付くと胸ぐらを掴んだ…
『ッ…テレサ…』
「お前、どれだけの人間に迷惑をかけているのか、分かっているのか?」
『テレサ…私にはもう無理だ…その身体は…お前に返す…』
「…私の言い方が悪かったんだな…この身体は私の物じゃない…正真正銘お前の物だ…」
『何を言っている…?だってお前はあの時、私の身体を使ってる、って…』
「ああでも言わなければ、お前は抗うのを止めてしまっただろう?…思い出せ…私の本当の身体はどうなったのか…」
『あっ…!』
「私の身体はクレアに取り込まれてもう無い。つまりこれは本当にお前の身体だ…何故私の意識が宿っているのかは分からないが…」
『それならこのまま私が消えさえすれば…!』
「お前なら分かると思っていたんだがな…良いか?私の役目はあの日、あの時に既に終わっているんだよ…今更新しい生を謳歌する気なんて更々無い。」
『だが私はもう…!』
「最低限の仕事はしてやる…その後はお前次第だ…戻るも、戻らないも…お前の自由だ。」
『私は戻らない…その身体はお前が…』
「所詮、いくら見た目が同じでも別人の身体だ…早い話が合わないんだよ…やがては身体の方から拒絶される。」
『でも…私は…!』
「お前のその葛藤まで受け止めてられん…お前のお陰でこっちは忙しいんだ…手遅れになる前にどうするか決めておけ。」
『テレサ!待ってくれ…!お願いだ…!私は…もう嫌なんだ…!』
私の意識が浮上していくのを感じる…
「もう朝よ、起きて。」
目を開ける…オフィーリアが目の前にいた。
「良くその体勢で爆睡出来るわね…」
「いや、昔はお前もやっていただろう?」
「…そうね…今はとても真似出来ないわ。」
オフィーリアが退けたのに合わせ、私は立ち上がる…
「グラウンドにいるから、準備出来たら来てね。朝食はテーブルの上にあるから食べて。」
「ああ…ありがとう。」
「良いわよ…別に…」
オフィーリアが出て行くのを見届け、テーブルに向かう…トーストに目玉焼き…オーソドックスな朝食だ…
「……」
さっさと食べようかと思ったが…思いとどまり、電子レンジにかける…こうやって見ると明らかに私のいた世界より文明は進んでいるな…
「…あの馬鹿…!」
グルグルとゆっくり回るトーストと目玉焼きの皿を見ながらこの身体の本来の持ち主について考える…元が普通の人間であった事を鑑みてもあまりに腑抜けている…
「もう一度会って喝を入れに行っても良いが…最悪次は戻って来れないからな…やるわけにはいかないな…」
取り敢えず腹ごしらえと行こう…オフィーリアを待たせている事だしな…私は加熱の終わった皿を電子レンジから出してテーブルに置いた。