『いや…本当に申し訳無いが…それはさすがに様子だけでも見に行ってくれないか?』
黒歌がサーゼクスにはさすがに連絡した方が良いとしつこく言うので仕方無く電話し、ある程度の事情を説明すると予想通りの言葉が返って来た。
「行かないとダメか…?今のオフィーリアに見つかると非常にめんどくさいんだが…?」
『事情は聞いたから、下手に君が行くのは不味いのは分かるが…その状態の彼女を放置したら生徒が危険に晒されるかもしれないからね…何も彼女に接触しろと言う訳じゃない…君は離れた所からでも妖力を感知する事で彼女の様子を探れるんだろう?』
「あのなぁサーゼクス…私が奴の様子が確実に分かる距離まで近付くと最悪奴もこっちに気付くんだが?」
妖力感知による、戦士の監視を専門にやっている奴と違って私はそれ相応の距離まで近付かなかれば、正確に行動を探る事は出来ない…今のオフィーリアの精神状態が一時的にまともな状態なのか、それとも完全に吹っ切れているのか定かでは無いが…気付く可能性は大いにある…
『すまないね…グレイフィアの手が空いてるなら様子を見に行かせる事も出来るんだが…』
「…グレイフィアの話を出されると私も断りにくいな…分かったよ…行こう。」
黒歌が復帰したとはいえ、今もグレイフィアはクレアとアーシア、二人の世話をしているからな…黒歌とアーシアはともかく、嘗て短い間とはいえ、共に過ごしていたクレアには特別な想い入れがある……例えそれが、実質見た目が似ているだけの別人であってもな…
『すまないね…仕事があるから申し訳無いがこれで切らせて貰おう…また何かあったら連絡してくれ。』
「分かった。」
電話を切る…ハァ…
「サーゼクスは何だって?」
「一応様子を探って来てくれだとさ…全く…面倒だ…」
自分がした事の結果とはいえ納得は行かないし、気も進まない。
「貴女は妖力を感知して行動を探れるんでしょ?」
「チラッと説明したと思うが…私はあくまでも戦闘の際に相手の次の行動を予測するために使っているだけであってだな…問題のある奴の監視を専門にしている連中程に妖力感知が使いこなせる訳では無いんだよ。」
連中程の精度なら、距離だけで言えば恐らくこの部屋にいても新校舎の用務員室にいるだろうオフィーリアの事を探れるだろう…最も、実際は建物の中にいる事を考えれば多少精度は落ちるだろうがな…
「全く…まさかこうもオフィーリアのメッキが剥がれるのが早いとはな…」
「私の事は切っ掛けに過ぎないだろうし、プライドをズタズタにしたのは結局あいつと貴女でしょ?自業自得なんじゃない?」
「あいつの件に関しても、私の事に関しても…元々先に絡んで来たのはオフィーリアの方からだぞ?」
この件に関してはあいつの擁護もしよう…私も無関係では無いから、というのもあるが。
「それはそうだけど…」
「まあ、私も通常時ならまだしも、今のオフィーリアに関して大丈夫だという確実な保証があるわけじゃない…やらかして死人でも出されたら面倒だからな…何とかやってみるさ…」