「ねぇ…本当に放っておいて良いの…?」
「例えばの話になるが…私たちの身体能力で暴れてるならさすがに分かるだろ?物音一つ聞こえない、大人しくしているよ…気配も、妖力も感じ取れるから、部屋にいるのは間違いない。」
翌朝、黒歌にせっつかれてオフィーリアの部屋の前に来ていた。
「でも、急に暴れ出すのもそうだけど…剣を使われたら…」
「オフィーリアの剣は私が預かっている。」
「え…何時?」
「…お前が来る前。」
より具体的に言えば、右手が帰って来た日にお前、剣があったら利き腕の調子が悪くても振りそうだから…と今思えば訳の分からない理屈を捏ねて半ば強引にオフィーリアから取り上げた…あの時点ではこの状況を予測していた訳では無いが、何となくそうした。
「じゃあ何処にあるの?部屋では剣は一本しか見た覚え無いけど…」
黒歌の肩を叩き、念の為にオフィーリアの部屋から離れた所に誘導し、耳打ちする…
「ギャスパーの部屋だ…」
「本人に許可は…?」
「部屋に入って、オフィーリアの剣を隠しておいてくれって言った。」
「……だから…本人の承諾は…?」
「嫌がってたな…」
「許可取れて無いじゃない…」
「良いだろ?置くだけだし…別に魔剣の様なヤバい剣では無いからな。」
素材不明の剣だがな…果たしてこの世界に同じ金属は存在するのだろうか…?
「オフィーリアの剣技は私でもまともに受けるのは難しいが、肝心の剣が無いならいくら暴れられても鎮圧出来る…というわけで戻ろう…私にカウンセラーの資質は無いからな…今、完全に打ちのめされているだろうオフィーリアに会うのがとにかく、非常に、とてつもなく、めんどくさい。」
仮に自分を追い込み過ぎて、自傷行為に走るなどの危うい精神状態だとしても、剣が無ければ首を落とせないのだから死にはせん…死なない限り傷もすぐ直る…まっ、あいつだって戦士だ…立ち直りも早い筈だ……多分…覚醒者になる可能性?ならその程度の奴だったという事だ…その場合はダダ甘なあいつと違って、私はとっとと奴を見限って首を取るだけの事。
「…貴女が計画した事でしょ?」
「引っ掻いて逃げ出したのはお前だろ?」
「……止めた…貴女に口で勝てそうにないもの。」
「では、帰ろう。」
そう言って来た道を戻って行く…さて、現実逃避はこれくらいにしようかね……意外にも黒歌には聞こえなかった様だが…実は部屋の前に立った時、私の耳には何やらボソボソとオフィーリアが喋っている声が聞こえていた…幸いなのかどうかこっちの声には反応していなかった…内容は分からないが、やはり今は行かなくて正解だったのかもしれん…それにしても精神状態はかなりヤバそうだな……黒歌の言う通り、昨夜フォローに行くべきだったのか…?