「そう…二人が帰って来るんだ…」
「ああ…どうした?何故お前がそんな顔をする?私と違ってお前はあの二人に会いたくて仕方が無いんじゃないのか?」
「…だって…向こうにいる間、二人にとても心配かけたから…私、二人と違う部屋にいたの…一緒にするのは危ないからって…だから今日まで一度も会ってないの…どんな顔して会えばいいのか「あいつは言ったらしいな?」え?」
私は黒歌の顔を両手で包む…
「家族なんだろ?お前はこの顔で、笑顔を浮かべて会えば良い…そして一言、おかえりと返せば良い…記憶の中にあるお前らを見る限り…お前がこれからするのはそれだけで良い。」
黒歌の顔から手を離す。
「何か貴女…あいつより優しいかも…」
「そうか。」
……あいつと違って私がこの場で黒歌に何もしないのはそれ程興味が無いからなんだがな…私はクレアが居ればそれで良かった…究極を言えば一緒にいる必要すら無い…クレアが幸せなら…ただ、それで良かった。…そして今からやって来るクレアは私の知るクレアじゃない…一応あいつはあいつなりにクレアにちゃんと、人間としての幸せを与えた…それだけは褒めてやっても良い。…私はクレアを守り切れなかった…まさか戦士になる道を選ぶとは…あの時クレアと話をして、後悔が無いのはもう分かっているがな…
「…じゃあ私は引っ込んでるから家族三人感動の再会をだな「何言ってるの?私はまだ諦めてないから…貴女も家族よ。」……」
逃げるタイミングを失った…偉そうな事を言っても私もクレアには会いたくない…私は彼女に大して想いが強過ぎる…
「クレアの事を考えてるの?あの子は事情を知ってるわ…強い子よ、きっと貴女の事も受け止められるわよ?」
「それは…私が会う理由にはならないな。私にとっても彼女は別人だよ。同じ想いを抱く事は絶対に無いし、気持ちを伝える事も無い。」
「そう、貴女が知るクレアとあの子は別人…で、それが何?クレアはそれをそのまま受け止められるのよ。」
「あんな子供に背負わせる気なのか、お前は?」
「例え私やアーシアが何を言ってもあの子は勝手に貴女に手を伸ばすわよ…そういう子なの。」
「異常だ…」
私が会った彼女も化け物の私に物怖じせず想いをぶつけて来たが…記憶の中の彼女を見る限り、そんなレベルじゃない…間違いなく壊れている…何があった?…そもそもあいつの記憶の中に彼女の過去についての話が無い…あいつの記憶にはただ、雨の中立ち尽くす彼女をクレアに似ているからという理由だけであいつが保護し、サーゼクスに相談した所からしか、彼女についての記憶が無い…挙句、クレアは名前以外の記憶が無いと来てる…サーゼクスが調べても出生記録すら見つからない?……そこまで考えて戦慄する…どうして私は今頃気付いた?何故私は違和感を持たなかったんだ…?
「どうしたの?」
「クレアの事を考えていたんだが…お前は変だと思わないのか?」
「……そういう事。可笑しいな、とは感じる事は私も今まで何度かあったわよ?でも、私がどうこう言う事じゃないわ…クレアが…決める事だもの。」
「……何かあったらどうする?」
「…貴女もそんな顔するのね…本当に貴女にとってクレアは特別なのね…大丈夫、そのために私たちがいるのよ?でも、無理に守る必要は無いかもしれない…あの子は敵がいないの…あいつの記憶があるなら分かるでしょ?根っからの悪でも無い限り、あの子と接したら自然とあの子に惹かれるのよ。一種の才能ね…そして、あの子自身は悪意が全く無い…悪い方向に向かう事は無いわ。」
「馬鹿な…何れ破綻するぞ…!」
「もちろんそんな事にはさせない…あの子がその小さな手を伸ばし過ぎないようにする為にも私たちがいるの…あの子、放っておいたら誰彼構わず手を伸ばすから…そうね…話は少し逸れるけど、貴女が残る理由にこれはどう?あの子と一緒に生きていく為…どうかしら?」
「私には…無理だ…」
成程な…漸く分かった…これならあいつが長年クレアと向き合うのを躊躇ったのも分かる…どうやってそんな奴と接したら良いのか…あいつと違って家族ですらない完全な他人である私にはまるで分からない…