「なっ…ちょっと待て…!立ち直ったなら戻れ…私はもう彼女といたくない…!」
『お前は私を救ってくれた…だからお前にも救われて欲しい…というのはいけないだろうか?』
「…ふざけるんじゃない…!本来の身体の持ち主のお前と違って私は戻らきゃいけないんだ…!」
『そうかもしれない…でも何とかなるんじゃないかな?』
「何?」
『お前を通してずっと…見ていた…黒歌は救えるよ…そういう奴だからな。』
「私は残る理由が無い…!」
『嘘だ…お前はもうクレアと離れられない…気付いていたか?…私は外の会話だけじゃなく、お前の思考も届くんだよ…本当はクレアと離れたくないんだろ?』
「……」
『お前を通して見て…分かった…昔の私もこんな気持ちだったんだって…クレアといるのは心地好い…それがいけない物に思えてしまう…化け物には過ぎた幸せだと…でも化け物でも良いと言うんだよクレアは。私を人間だと言った朱乃と違い、化け物の私と一緒に居たいって言うんだ…だから、私も応えようと思った…臆病な私はそれを貫けなかったが…』
『素直になったら良い…仮に身体が用意出来なくても問題無い…時々、私がお前を叩き起こす…身体を貸してやる…何時でもクレアに会える…お前を消えさせたりなんてしない。』
『お前の為だけに言ってる訳じゃないんだ…お前の力も貸して欲しい…自信が無くてさ…敵と戦う事よりクレアたちとの穏やかな暮らしを守って行く方が私にはずっと難しいから…私がまた壊れない様に、お前の力を貸して欲しい…』
「…変わらないんだなその弱さ…あれだけ言ったのに。」
『私は変われない…結局この恐怖を消す事は出来なかった…でも、一生付き合っていくしか無いんだろ?』
「……そこまで言えるなら私からは何も言わない…いや…言えない…私も本当は臆病者だからな…その話、受けても良い…お前の中に棲まわせてもらう家賃代わりだ…だが、その前に…」
『何だ…?』
「先ずは謝って来い。話は、それからだろう?」
『それは今じゃない…あいつらには悪いが…』
「何故だ?」
『お前が表にいないと身体から出せないだろう?』
「…余程黒歌を買っているんだな…」
『長い付き合いだからな。』
そう言って笑うあいつからはもう影は感じられない…全く、さっさと戻れと言うのに…こいつは…
「分かった…ギリギリまで待つ事にしよう…では、私は行く…」
『ああ…いや、少し待ってくれ。』
「今度は何だ?」
『先に一つ頼みがある。』
「お前…いや、良い…何だ?」
『ギャスパー…あいつを導いてくれ…私にはどうにもあいつにかけられる言葉が無くてね。』
「お前の方が適任だと思うが…まあ良い…出来る範囲でやってやるさ……クレアと接するよりは気が楽だ…」
『ありがとう…じゃあな私…次は外の世界で対面出来るのを願っている。』
「早く戻って来いよ…引きこもりの私…」