「…さて、ギャスパー?」
「はっ、はい…!何でしょうテレーズさん…!?」
少しビビらせ過ぎたか…?
「…そんなにガチガチにならなくて良い…少し深呼吸しろ…ほれ、吸ってー」
「はっ、はあ…?分かりました…すぅ…」
「吸ってー吸ってー吸ってー吸ってー吸ってーはい!止めろ!……「エフッ!何やらせるんですか!?」早いな、もうちょっと頑張れよ。」
「いや理不尽過ぎます!?何のつもりですか!?」
「そんなに怒るな…少しは肩の力も抜けただろ?」
「…釈然としませんけど…まあ、確かに…それで何の用なんですか?…というか忘れてましたけどあの剣、何か怖いので持って帰ってくれませんか?」
そう言えばオフィーリアは居ないんだから部屋に持って帰っても良いか。
「そうだな…この後持って行こう…それで何だが…実はテレサにお前の事を頼まれてな…」
「テレサさんが?」
「ああ…あいつが直接話すのが筋だと思うんだがな…まぁあいつはもう立ち直っているが、先も言った通り、私の魂を取り出すまで表には出られない様だしな…取り敢えず私から何か伝えられる事があれば、と思ってな…とはいえ、お前はもうあまり色々言わなくても大丈夫だよな?」
「…クレアちゃんやテレサさん、それにテレーズさんのお陰です…それに僕はまだ…この部屋からは出られても旧校舎から出る勇気は出ませんし…でも、部長たちが帰って来たら改めて話がしたいとは思っているんです…」
「…いや、私やあいつはお前の背中を蹴り飛ばしただけだ…クレアも自分は何もしてないと言いそうだな…」
「…何かお二人に本当に蹴られたら、僕一応不死に近いのに死にそうなんですが…まあそれはそれとしてクレアちゃんは確かにそう言うかもしれないですね…」
「本人は新しい友達が出来たと喜んでいたからな…全く気負ってる様子が無い…だが…」
「分かります…クレアちゃんは僕の事も含めて皆を無意識に背負っちゃうタイプなんでしょう?…だからテレサさんも僕に守って欲しいって言ったんだと思います…守ります…全員は守れなくてもクレアちゃんとアーシアさんはきっと…」
「あいつから聞いてると思うが…私もあいつもクレアに関して想い入れがとても強い…仮に人質にでも取られたらすぐにお前らの敵に回るだろう…その時は「その先は言わせません…僕がクレアちゃんを絶対に守ります…頼りないかもしれませんけど」…いや、十分に心強いよ、お前はただ全力で守れ…お前が取りこぼした分は私かあいつ、若しくは私たち二人がちゃんと拾い上げる。…本当に強くなったな、ギャスパー。」
「…ありがとうございます…」
「…さて、実は私もあいつもお前に対して大事な事を言うのを忘れていてな…上げて落とすつもりでは無いが、これからちょっとキツイ話になるかもしれないが…聞く覚悟はあるか?」
「はい…僕は、もう逃げません。」
「良い返事だ…では先ず…今回の会談にお前は出るんだったな?」
「はい。テレサさんの記憶だと会談を襲撃されて、その時一人でここにいた僕が利用されて、せっかく戦力が揃っていたのにそのせいで対応が後手に回ってしまうんですよね?だから僕も皆のいる場に出席した方が良いって。」
「…そうだな。で、私もあいつもすっかり忘れていたんだが…お前のその神器、当然まだ制御しきれてないな?」
「はい…ごめんなさい…」
「いや、責めてるわけじゃない…今まで出来なかったのにこの短期間でそこまでやれという方が無茶だ…だが、こうして私と話が出来てる以上、無差別に作動するわけじゃないんだな?」
「はい…今の僕はテレーズさんがそれ程怖くないので…ヒィ!?」
私はギャスパーに殴りかかった…その瞬間に違和感を感じる…成程、こういう感じなのか。
「…ギャスパー…すまなかった…もう何もしないから出て来てくれないか?」
私の時間を止めている間に隠れたのだろう…机の下で震えているギャスパーに声をかける。
「ほっ、本当ですか…?」
「ああ…本当だ。」
そして机から出て来たギャスパーが震えながら椅子に座り直す…さすがに可哀想になりつい、その頭に手を伸ばし、撫でる。
「テッ、テレーズさん…?」
「悪かった…そんなに怯えないでくれ。」
「もう大丈夫です…あっ…」
手を離すと名残惜しそうな顔をする…いや、そんな捨てられた子犬の様な顔をしないでくれ…話が進まないから…
「…そっ、それであの…一体何でこんな事を…?」
「まあ…敵が親しい相手に化けて接触してくるかもしれないからもう少し警戒してくれって意味もあるがもう一つ…そうだな…話は変わるが、お前ゲームは好きか?良くあるだろう?ロールプレイングゲームとかシューティングとか…後は、戦略シミュレーションとかな。」
「それはまあ…人並みに…でっ、でも仕事の合間に少しだけですよ…?」
……こいつ、実はかなりやり込んでいると見た…とはいえ…
「いや、責めてるわけじゃない。お前はちゃんと自分の仕事をしてる様だからな…それでだ、そんなお前に聞きたいのだが…今回の会談の様に要人が一堂に会する状況…敵にとっては最高のタイミングだな?さて、お前が仮に敵の側、それも指揮官だったら、どの様に襲撃をかける?…おっと、要人が実力者…または護衛がそうである…或いはその両方…という可能性も踏まえてだ。」
「えと…そうですね…味方がどれくらいとか、襲撃する建物にどれくらいの規模の護衛がいるかとかによっても変わりますけど…先ず、部隊をいくつかのチームに分けます。」
「ほう。で、それから?」
「…分けたチームは見張りがいるだろう入り口を避けて建物を囲む様に配置します…そして会談が始まり、ある程度時間が経って敵が気を抜いてる所を窓を破って、突入させます…もちろん全員じゃありません…そこから時間を置いて第二部隊を同じ要領で突入させて行きます…その方が失敗も少ないので…それから…」
「いや、そこまでで良い…良し。概ね正解だ、恐らく今回もそうなるだろう…そして本来であれば更にお前の部屋に突入する別働隊がいたわけだな。」
「そうですね…でも今回、僕は皆さんと一緒にいますから「安心するのはまだ早いなギャスパー?」え?」
「さっきの状況を思い出してみろ、お前は警戒してない筈の私を何故停止させた?」
「そっ、それは…テレーズさんがいきなり殴りかかって来て…」
また震え始めているが、今度は何もしない…こいつに現実を教えなければならない。
「そうだな…つまりお前は自身に危機が迫れば無意識に神器を発動させる訳だ…そこでさっきの話だ…先ず第一部隊が窓を破って突入…さて、お前はどうする?」
「どうするって言われても…僕は制御出来ませんからその場で神器を発動させて…あっ…」
「気付いた様だな…第一部隊が会談の場に突入して来たらお前は視界内の者を無差別に停止させる…言っては悪いがこういう時、最初にやって来るのは雑兵…いわば捨て駒…そして主力は第二部隊…ここで問題だ…お前の神器が発動し、敵味方問わず全ての者が停止している中、そこへ主力が投入されたら……どうなると思う?」
「どっ、どうなるって、そんなの…!」
「お前が続けて神器が発動出来るなら良いが…出来なければ…不意を付かれた仲間たちは最悪、お前の目の前で全員殺される。」
「そっ、そんな!僕はどうしたら…!?」
まあサーゼクスと一誠に関しては動けてるかもしれないが…こいつらでも全員は助けられんからな…確実に想定外の犠牲者が出るだろう…
「落ち着けギャスパー…方法はある。」
「何ですか!?言ってください!僕に出来る事なら何だってします!」
私はこいつに言わなければならないな…こいつに実質死ね、と。
「先ず想定外の事態を避ける為…ギャスパー、お前はこの部屋にいるんだ「でも、それだと…まさか!?」お前はお前を狙って来る連中を…油断して…やって来るそいつらを迎え撃て…恐らく全員は止まらないが、お前の殺れない奴はお前に注目して動けない内に私か、あいつが確実に始末する。」
「そんな!?僕がやるんですか!?そんなの僕に「クレアとアーシアはお前と一緒にいる事になるだろうな、会談の場にいさせる方が危険だし、バラけるよりはお前が守りやすい」…ずるいですよ…そんなの断れるわけないじゃないですか…!」
「すまないな…これしか方法は無い…お前は多分ただではすまないだろうが…もちろん逃げられるなら時間を止めて二人を連れて逃げても良い…だが、止まらないのは確実にいる。」
「……」
「ここまで言ってなんだが…断っても良い…対応が遅れるかもしれないが…私たちが別行動を取り迎撃する方法もあるが…」
「それだとテレーズさんたちが危ないじゃないですか!」
……私たちを心配出来る程のこいつの心の成長が素直に嬉しい…私も本当に丸くなったかな?
「やりますよ!僕がやります!…テレーズさんたちが絶対に来てくれるんでしょう?僕、信じて待ってますから。」
「……良いんだな?」
「僕を信じて下さい…!」
「…分かった。私は、お前を信じる。…では、これで失礼する…詳しい打ち合わせは明日しよう。」
「…はい。」