ギャスパーの部屋を出て、廊下を歩いている最中…頭の中に声が響いて来た…足を止め、壁にもたれ掛かる…
『おい、テレーズ…』
……お前にそう呼ばれると非常にむず痒いな…そんな物とは無縁の筈だが、蕁麻疹が出そうだよ…
『慣れろ。これから先、何度も呼ぶだろうしな…』
仕方無いか…さて、さっきギャスパーの部屋でお前の声が聞こえたのはやはり幻聴では無かったか…なぁ、引きこもり?
『どっちがだ?お前に至っては仮にこの世界に私が来た時から私の中にいたんだとすれば、百年は引きこもってた事になるんだが?』
……めんどくさい事を言ってくれる…その頃は私は目覚めてないんだろうから知らん…で、何の用だ?というか何時から夢以外で私に話し掛けられる用になった?
『…知らんよ…まっ、恐らくお前がこちらにいられるリミットが近付いて来た事で私が表に出やすくなったんだろう…で、何の用だ、だと?お前、何故ギャスパーにあんな事を言った?』
……お前が忘れていた事を伝えただけだろ?最も、私も今日まで忘れていたし、強くは言えんが。
『……お前はギャスパーに囮になれと言ったんだぞ?』
……他にどう言えばいい?既に他の策を講じる時間は無いんだよ…ギャスパーが神器の完全な制御が今日の時点で出来て無い以上、残りの時間で出来るとは思えん。
『…そうかもしれないな…だが、お前は嘘をついただろう?』
どういう意味だ?
『お前はギャスパーを信じていない。』
…ああ、そうか…表にいる奴の思考は引っ込んでいる奴に筒抜けだったな…そうだな、私はギャスパーを信用も信頼もしていない…当然だろ?止める以外、現状満足に戦えない奴が敵を殺せるわけあるまい?例え、そいつらが指一本動かせなくなったしてもな…というか何甘い事言ってる?これはな…殺し合いだ…奴らに話し合いに応じる気なんて無い筈だろう?
サーゼクスは甘い事を言ってるが間違い無く死人は出る…味方に死人を出す訳にはいかないが、あいつらは殺すしかない…もちろん、後々の事を考えれば全員殺す訳には行かないし、だからオフィーリアに牽制もした…だが、一人も殺さずに済む訳は無い…まさか実際に三大勢力の争いを目にして、はぐれ悪魔を散々狩り続けたお前がそんな甘い事を考えてたりはしないだろうな?
『私は…そうだな…確かにそれは甘い考えなんだろう…私自身もそう思うし、昔の私ならすぐにでも一蹴しただろう…』
だろう?『だが』ん?
『私もその綺麗事を通してみたくなった…私たちなら殺さずに終わらせられるんじゃないか?』
……私やお前が殺らなくてもオフィーリアは殺る…オフィーリアが本当に殺さずに終われると思っているのか?
『あいつは殺さないさ…その理由が無い。』
戦いで殺すのは報復される可能性の排除、だ。…相手は見逃せば、次はもっと強くなるかもしれない…卑怯な手を使って来るかもしれない…お前は守り切れるとでも?
『出来るさ…これからはお前がいる。』
私が殺さないとでも?仮にオフィーリアが確実に殺らなければいけない理由が無ければ殺らないタイプだとすれば、私は確実に殺れる時に殺るタイプだ…一度それで油断して殺されている…今私が死ぬ訳には行かないだろう?だから殺る。
『お前は殺せないよ…いや、今のお前は殺さずにすむならそれで良いと思ってしまっている…だから殺さない。』
「何で…そう言える…!」
口に出してしまった…何故だ?焦っているのか、私は…?
『お前は優しくなったから…』
「馬鹿馬鹿しい…!これ以上は時間の無駄だ…!もう黙れ!」
私は奴の言葉を無視する事にした。私は殺す…殺さなければ守れない…!