電話を切り、左右を何となく見渡す…誰もいない…まぁ存外この学校に通ってる連中は真面目な奴が多いのだろう…わざわざ旧校舎まで来て授業をサボるのは相当物好きに当たるらしい…お陰でこの手の人に聞かれたくない話をするのは楽なのだが…
「……」
視線を戻し手元の携帯を見詰める…
『どうした?』
ん?いや…何処ぞの馬鹿があっさり破壊した物がこうしてまた手元にある事に妙な感慨を覚えてな…
『……言うな…何か変なテンションだったんだあの時は…良く考えたら破壊する事は無かったと後で気付いたんだから…』
…このご時世、電子マネーという便利なサービスがあるそうだな…携帯を壊さなければ、財布が無くても最悪電車には乗れたんじゃないか?…まぁあの格好で電車には乗れないかもしれないかが…
……クレイモアの甲冑姿はこの世界ではとにかく目立つ…コスプレで誤魔化すにしても、剣についてはさすがに警察の目に付いただろう…
ちなみにこの携帯自体は『頃合を見て、あの子に渡して欲しいってサーゼクスに頼まれたの』と私が目覚めた日にオフィーリアに渡された物だ…
『……乗れなかったのは確かなんだから良いだろ…』
で?それは壊した事に対する理由にはならんが?
『関係性を断ち切りたかった…』
お前の携帯の番号、お前の記憶通りだとクレア、黒歌、アーシア、サーゼクス、グレイフィア、それからリアスと姫島にアザゼルの分しか入ってなかったよな?…私の手元に戻って来たと同時に全部連絡先が戻って来たぞ?入ってた写真や動画にしても、黒歌の携帯に入ってた物と大差無かったからそっちもあっさり戻って来たな?
『やめろおおお…!掘り返さないでくれえええ…!』
うるさい。頭の中で騒ぐな…ん?
そうこうしてる内に携帯が再び鳴る…グレイフィアか…
「もしもし?」
『もしもし…グレイフィアです。』
いや、こっちに名前と番号出るから誰かくらいは分かると思ったがこいつが生真面目なのは知ってるので今更突っ込むつもりも無い。
『話はサーゼクス様から聞きました。』
「…私は今、あいつと脳内で会話が出来る…で、あいつはアレを母親が自分の子に向ける物に似ていると評した…お前は母親だったな?どう思う?」
『そうですね…似ているかも知れません…でも…』
「ん?」
『私は…自分の命と引き換えにミリキャスを救う事は出来ても、貴女やテレサ…それに、サーゼクス様を犠牲にする事は出来ないわ。』
「…そうだな…それが普通だと思う。」
『もちろんそれは…クレアや黒歌、アーシアであっても同じです。』
「私は…もう何も言わない事に決めた…お前はどうする?」
『私は看過出来無いわ。友人として、家族として黒歌にもアーシアにも一言言わないと気が済まない…!』
「そうか…私やあいつの言葉は多分もう届かない。お前から言ってやってくれ…一言と言わず、いくらでも…」
『ええ。会談が終わったら其方に伺わせてもらうわ…テレーズ?それからテレサ?一つ良いかしら?』
「『ん?』」
『そろそろ生活の拠点を冥界と人間界…どちらにするのか決めておいてね?』
「…決めるのは私じゃない…」
『ええ、でも…あの子も聞いているのでしょう?』
おい?
『分かった…会談が終わってから伝える…』
……。
「……会談が終わったら伝えるそうだ。」
『分かりました。待っています…テレーズ?』
「何だ?」
『貴女が無事に自分の身体を手に入れる事を願ってる…』
「ああ…ありがとう…」