翌朝、私たちは新校舎に向かっていた…
「…大丈夫か?」
「……いや、あの後結局徹夜だったからな…」
「私も何か…疲れが取れなくて」
「「知るかボケ。」」
「酷くない!?」
オフィーリアの場合は自業自得だからな…
「はぁ…それで何で休業中の用務員業をわざわざ渋ってるサーゼクスに無理矢理許可を取ってまで再開する事にしたの?…別に会談の始まる夜に動いても良かったじゃない…」
「仕事はついでさ、一応顔合わせをしておいた方が良い、古い知り合いがいてね…」
「ん?…ああ、あいつか…」
「え?誰?」
私の中にいたテレーズは合点がいった直後にゲンナリした顔をし、オフィーリアは対照的に誰の事か分からないと言った顔をする…まぁ私の身体にいた時に記憶を直接見たテレーズと違い、過去に私が関わった人物の説明すら詳しくしていないオフィーリアが知らないのは無理も無い。
「…まぁ会えば分かるさ…かなり個性の強い奴だからな…」
用務員室に入り、相変わらず溜まっていた書類にうんざりしつつ、三人で手分けして片付けて行く…身内の事情も大体終了したし、会談後は通常通り業務をこなしたいから、さっさと終わらせておかないとな…そこまで考えてから気付く…私にも戦いが必要無くなりつつある事に…オフィーリアは元々本気で今回の一件が済んだら戦うのを止める気のようだし、テレーズは元々しなくて済むならそれで良いと思ってる節がある…クレイモアで無くなったせいもあるかもしれないが。
……私も平穏な生活を…いや、当分は無理か…
書類をある程度片付け、オフィーリアに留守を任せ(あいつをまだあまり他の奴のいる所に出したくない…)テレーズの紹介を兼ねてちょうど休み時間を迎えている新校舎の廊下を二人で歩く…認識を誤魔化す魔術を黒歌の仙術による補強ありきで使っているが、そっくりには見える様で、生徒に驚かれ、聞かれる度に私が病欠から復帰した事と、テレーズが双子の姉妹だと説明する…にしても…
「…何でお前が姉なんだテレーズ?」
「後から出て来た方を上にするのが双子の基準だろう?」
「…今の法的には逆だぞ。」
「身分詐称をしている私たちに今更法律を適用するのか?」
「…もう良い。お前とこういう言い合いをしてもどうせ勝てないからな…」
いつもの様に覗きをしたのだろう、こっちに向かって走って来る馬鹿二人をすれ違いざま、足を掛けて転倒させる…普段は普通に躱す癖に今日に限って引っかかった事に多少驚きつつも横を見ればテレーズも同じ事をしていた様だ…本当に双子の様だな…
二人を逃がさないように首根っこを掴み、後から追い付いて来た女子たちに引き渡す…当然私とテレーズの事で驚かれたが、さっきの説明をして納得して貰う…何気にほとんどの生徒に顔を覚えられてるからな…この説明を今日一日ずっとしなければならないのか、と考えてたら面倒になって来た…校舎の見回りは控えるべきだったか…今更嘆いても仕方無い、か…さて、見回りに戻るか…
その後、書類を終わらせる為、早々に切り上げて用務員室に戻って来た。
「…で、今日はそもそも授業参観があるんだったか?」
「ああ。黒歌が久々に妹に会えると喜んでいたよ…本当はアーシアも今日までに通わせたかったんだがな…」
原作のアーシアと比べて、どうにもまだあいつは不安定だ…知らない奴の多くいる学校に通わせるのは非常に不安だった…
「今朝までずっと冥界にいたんだったかしら?良く普通に学校に通えるわよね…」
「どんな手を使ったか知らんが公欠扱いになっているらしい…最も補習を受ける事は確定してるがな…どうせ、兵藤辺りは今日の授業について行けず発狂してるだろう…」
この学校、元々レベルはそれなりに高い様だから、な…あいつに関しては素行も最近は大人しかったとはいえ、かなり悪かったんだから補習だけで済むかどうか分からんな。
「さて、そろそろ授業も終わる時間だが、お前ら書類は終わってるか?」
「私は終わってるわよ。」
「ちょっと待て…私も終わったぞ。」
「良し、では朝に言っていた古い知り合いに会いに行こうか。」
「本当に会うのか?」
「先に会っておかないとうるさいからな…」
まぁ…先に会っていてもうるさい奴だが顔合わせをしていないよりマシだからな…
「…ねぇ?結局どんな奴なの?」
「会えば分かるよ…そろそろだぞ?」
体育館に歩を進めるにつれ、人の声が大きくなって来る…相当の人数が集まっている様だ…
「えっ!?何この人の数!?何かやってるの!?」
「コスプレ撮影会だよ…但し非公式の、な。」
体育館にいる人波を掻き分けながら、前に出る…
「あっ!テレサちゃん!久しぶり☆」
「ああ…久しぶり、だな…!」
「えっ!?…きゃあああ!?」
横にテレーズがいるのに一直線にこっちに向かって来る魔法少女のコスプレをしたセラフォルーの抱き着くつもりだったのか、広げていた両手の内、左手を掴み、一本背負いの要領で投げて、体育館の床に叩き付けた。
「お前ら、撮影会はもう終わりだ、とっとと解散しろ。」
睨みを効かせて集まっていた生徒たちを帰す…さて、ゆっくり古い知り合いと昔話でもするかな?
……投げられた直後に私に上にのしかかられたせいか、ずっと涙目で呻き声を漏らす昔馴染みの顔を見ながらそう思った。