そこで私は言葉を切り、カップに口を付け…温い…その味に少し、懐かしさを感じながら飲み干した。
「…私が話せるのはここまでだ…後はお前の方が詳しいだろう?何せ私はあの後、三日も眠っていて、起きた時は全て終わった後だったからな…まっ、どうしても聞きたかったら、テレーズに聞くといい。」
私の前に座る少女、ゼノヴィアが何時もとは違う神妙な顔で頷いた。
「さて、もう良いかな?外も暗い…お前の場合、大丈夫だと思うが一応送って行こう「あの…」ん?」
「テレサさんの昔の話を聞きたいんですが…」
「昔の、と言うと…私がこの世界に来たばかりの頃の話か?」
上げかけた腰を一旦下ろす…ふむ…
「…あまり面白い話では無いんだが…」
「私は貴女の強さに尊敬の念を抱いています…その強さの秘訣は何か、私は知りたい…不躾な願いだとは分かっていますが…」
「…そんなに聞きたいなら構わないが「本当ですか!?」だが、今日は無理だな…大して話せるエピソードも無いが、こちらもそれなりに長い話になる…気になるなら先にサーゼクスたちに聞いておくと良い…さっきの話にも出したが、私はグレイフィアの危機を救った事など覚えていなかったからな、私が話すより、詳しい話を聞ける可能性もある…さて、支度をするからちょっと待ってろ。」
ゼノヴィアの前にあったカップを引き寄せ、ポットから紅茶を注ぎ、またゼノヴィアの前に置くと、席を立つ…座るゼノヴィアの横を通る時に、その頭を軽く撫でてから部屋に向かった。
…先程ゼノヴィアに話さなかった話の続きを思い起こす…あの後は交戦中の兵藤にテレーズ、オフィーリア以外はとても戦闘どころでは無かったらしい…私一人が倒れたくらいでそこまで混乱の極地にいられても困るのだがな…結局最終的に兵藤とヴァーリが相打ちになりかけたところで原作通りに美猴が到着したのだが…ここからが笑った…テレーズとオフィーリアに散々追い回された挙句に、ヴァーリを置いて転移してしまったそうだ…ただ本人は『必ず迎えに来てやるからな!』と叫び、後日反省と称して、アザゼルに軟禁されていたヴァーリを本当に回収に来た訳だから義理堅くはある様だ。
…さて、この後の事は今でこそ冷静に思い出せるが…あまりに目まぐるしく変化して当時は状況にまるで着いていけなかった印象がある…まず、私が目覚める前にテレーズとオフィーリアの二人はサーゼクスとグレイフィアと相談して、さっさと二人で住むマンションの一室を決めてしまったらしい…
ちなみにサーゼクスとグレイフィア以外、誰にも言わなかった筈なのに何故か今までオフィーリアがこの世界で手を出した女が大量に押し掛けて来て揉めた話を後になってテレーズに散々愚痴られた…あまりに憔悴しきっていたのでそれも覚悟の上で一緒になると決めたんじゃないのか?…とは言えなかった…未だに答えを出してない私より遥かにマシだしな…
私は目が覚めた後もすぐには起きれず、一週間入院した…オフィーリアが入院した病院で、しかも同じ病室のある区画だったのは何の嫌がらせだったんだろうな…お陰で毎日貞操の危機を感じていた…もちろん退院後は黒歌とグレイフィア、それに私を含めた三人で入院の手続きをしたサーゼクスを問答無用で半殺しにした…
私は結局、人間界に残る事に決めた…決め手はクレアの『冥界だと友達を家に呼べないよ…』だった…セキリュティレベルの高い所を、とサーゼクスに注文したらテレーズとオフィーリアの住む部屋の隣を紹介されたのを行ってから知り、一悶着あった…引越し祝いと称してやって来たサーゼクスをテレーズと二人で風呂場に引っ張り、水の張った湯船に二人で気絶するまで沈めた手の感触が今も残っている…その後、テレーズと二人で何故かハイタッチした感触も…あれから一ヶ月以上経つのだがな…
そんな怒涛の一ヶ月の間、特に死人が出る様な事件は起きていない(サーゼクスが何度か私たちに殺されかけてるのはノーカン…そう簡単に死にはしないしな)
非常に不安だ…私はもうこの後の事が分からないからな…何故か私は目が覚めた時、和平会談の後の原作の記憶を完全に失っていた…今まで朧気には残っていた筈なのだが…これまでにサーゼクスたちに和平会談の後の事を話していなかったのが災いした…これでは本当にこの後に起きる事に大して対処が出来無い…いくら私の中にあった原作の記憶と、この世界には差異があると言ってもそれはそれだ…まあ、結局成り行きに身を任せる事にした訳だが。
更に変化があるとすれば、黒歌の求めで私たちの方で小猫を引き取った事、私たちの部屋の隣(テレーズとオフィーリアの部屋の逆)に朱乃とセラフォルーが住み着いてしまった事だろうか…どうなるか不安だったが、一応仲は良好なのだろう…夜、私の寝室に黒歌を含めた三人全員で乗り込んで、勝手に誰が最初に私とするかジャンケンで決めようとして、私が全員気絶させてそれぞれの部屋に運ぶのが日々のルーチンだからな(クレアとアーシアと小猫は相部屋)
そんなこんなで迎えた休日(私とテレーズ、オフィーリアは用務員業を続けている)いつもうるさい面々は部屋に居ない…クレアとアーシアと小猫はギャスパーのところへ遊びに、というか泊まりに行き、黒歌たちはオフィーリアと共にテレーズの服を買いに行ったらしい…買い物が終わった後はこちらも泊まり込みでテレーズの美意識を変えるそうだ(南無…)
私も誘われたが断った…何が悲しくて自分と同じ顔の奴が着せ替え人形にされるのを見せられなければならんのか…最も私も行けば同じ目に遭わされていただろうし、後日、結局同じ目に遭うんだろうが…
そうして暇を持て余していた今日、最近になって私に無理矢理弟子入りしたゼノヴィアがやって来た…休みの日に何の用かと思えば私の事を聞きたいと…つい、盛り上がって要らん事まで話してしまったな…と、いかん。思考に埋没して思いの外時間が経ってしまった…ゼノヴィアを待たせてる…急がねば…
私はクローゼットから適当に一着コートを取り出すと羽織り、ゼノヴィアのいるリビングに戻った。
詰め込み過ぎ感はありますが一旦完結です。