翌日、私はクレアを伴って職場に向かう…
「ねぇ、テレサ?」
「ん?」
「オフィーリアお姉ちゃんは?」
「後から来る…」
「待たなくて良かったの?」
「…あいつを待ってたらギリギリになるんだ。」
オフィーリアは基本、時間にルーズなタイプの様で…こうして正式に雇われるようになって少しすると時間通りには来なくなった…まぁ朝から来ててもそんなに仕事がある訳じゃないから良いがな…明らかに書類の量が可笑しい時は呼べばすぐに来るし、最近はいよいよテレーズも自力での日常生活が難しくなって来たらしくその世話もあるからあまりうるさくも言えん…
「……」
「待ちたかったか?」
「うん…」
「そうか、なら覚えておくと良い…職場に時間通りに来るのは当たり前の事だ…とはいえ、仕事以上に大切な事だってある訳だがな。」
「えと…例えば?」
「ん?そうだな、例えば…自分の体調の悪い時、若しくは家族の体調が悪い時、後は……家族が死んでしまった時。」
「……」
「そう暗い顔をするな。私やオフィーリア、テレーズもそうだが、お前の家族は皆、そう簡単には死なないさ…」
テレーズはどうなるか分からん…アザゼルが定期的にメンテ(実際はあいつが楽しんでるだけの時が多いらしい…)はしているから問題は無いと思うが…私とオフィーリアは身体の寿命は不明だが、少なくとも他の家族は大半が人間では無いから先ず死なん…寧ろ人のままのクレアやアーシアが先に逝くだろう…クレアが死んだら私は…
「テレサ。」
「ん?どうした?」
考え事をしたまま歩いていたらクレアに声をかけられ、足を止めてクレアを見るが、何も言わない。
「どうし…っ…何だ?本当にどうしたんだ急に?」
取り敢えずクレアに目線を合わせる為、しゃがんだらクレアがいきなり抱き着いて来た…
「テレサ…何か暗い顔してたから…」
「何でもない「嘘だよ」…何で…そう思うんだ?」
「だって…今も辛そうな顔してる…」
「…大丈夫だ…ふぅ。分かったよ…ちょっと、先の事を考えてしまってな…」
「先?」
「これから先、お前は大人になって、やがてはおばあちゃんになって死ぬ…その時も私はまだ生きているだろう…そしたら私はどうなるのかと思ってな…」
口に出してから自己嫌悪に襲われる…まだ子どものクレアに私は何を言っているんだ…
「テレサ?」
「何…だ…?」
「私がもし、悪魔に…えと、転生だっけ?そしたら怒る?」
言わせてしまったな…
「…ああ。それが例え私の為であってもな…」
「そっか…」
「不老不死なんてろくなもんじゃない。お前にはそんな道を歩んで欲しくない「でも…テレサもテレーズも、オフィーリアお姉ちゃんだってそうだし…黒歌お姉ちゃんにセラフォルーお姉ちゃん、それに朱乃お姉ちゃん、後小猫お姉ちゃんも…私の周りは皆そうだよ?」…お前には人間の友だちだっているし、アーシアだっている。」
最も、アーシアは転生するかもしれんな…兵藤の為に。
「なぁクレア?最終的にお前がどうしてもそうしたいなら止めない…だが…それが私の為、というなら…それは駄目だ…お前にはさ、これからも普通に人間として生きて欲しいのさ…私以外の者もそれを望んでいる。」
既にこの話は私を含めたクレアを知る者たちの間で結論が出ている。クレアには人のままでいて欲しいと…ただ、そこにクレアの意思は介在していないし、この言い方が卑怯なのは分かっている…私はクレアの人の想いを無視出来ない優しさにつけ込んでいるのだ…
「分かった…もう言わない。」
「そうか…じゃあ行こうか?」
クレアが離れ、私が立ち上がったところで私の手にクレアの手が触れる…その手を軽く握り、歩き出した。