翌朝、オーフィスと二人で部屋に残る事になったものの…私は子どもは基本的に聡明なクレアしか接した事が無い…クレアが学校に行き、他の家族も私以外家に残らない事を聞き分けてくれた時にはホッとしたが…早速私は二人きりになった事を後悔していた…
「「……」」
私は基本、相手が話しかけてこない限り自分から話を振る事はあまり無い。オーフィスも自分から話を振る気は無いようで気不味い沈黙が続いていた。
一週間…咄嗟に私が言った期間だが、あの時一週間でこいつに何をしてやるとも私は考えていなかった…クレアとこいつが少しでも長く一緒にいられるようにするためにはこいつが小学校に通える段階まで教育する必要がある…そうでなければ後見人を務めるサーゼクスたちは納得しないのは確かだ(そもそもまだ引き取った事実も伝えてないがな)オーフィスは地頭が良いのは間違い無いだろうが、こいつは人間社会の常識を知らん。先ずはそこを教えなければならないのだがどう切り出せば良いのかまるで分からん。
これならあいつらの言う通り戦闘は私が請け負い、普段の世話はテレーズとオフィーリアに任せるべきだった…生活費さえ入れればあいつらはそこら辺は協力してくれるつもりだった様だしな…失敗した。今更テレーズに協力してくれと頭を下げに行っても無駄だろう…今のあいつはオフィーリアがいないと日常生活を送る事もままならん…私がやるしか無い訳だが…どうしたものか…
胃が痛い…昨日チラッと二人に聞いてみたが私のこの胃痛はクレイモアである以上、間違い無く気のせいだろう(クレイモアは基本的に病気とは無縁)と言われたがそうは思えない…私はこの痛みを現実の物として確かに認識している。
「テレサ。」
「!…どうしたオーフィス?」
思索に耽っていたところ、オーフィスに話し掛けられた…何時の間にか近くにいた事に気付き、驚くが何とか顔に出さないようにして返事を返した…胃痛が更に酷くなって来たぞ…
「どこか痛い?我、心配。」
「……私を心配してくれるのか?」
今度のは完全に驚きが声に混ざった…恐らく顔にも出てしまっているだろう…
「クレアから家族が苦しんでいたら心配すると聞いた…テレサ、我より弱いから心配…」
……見た目が子どものこいつに心配されるのは妙な気分だ…そもそもこいつの事を考えているから胃が痛いのだが…いや、元々の前提が間違っていたんだな…クレアの言葉で仮初でもそういう情緒が芽生え始めているのなら…黙っている方が愚策だろう。ここは一つ正直に語ってみるとしよう…
「お前のこれからの事を考えていてな…」
「我の事?」
「…クレアと家族でいたいならお前は人間として生きなければならない。その為には人を知らなけれはいけないのさ。」
「我、クレアと家族でいたい…どうしたら良い?」
「一緒に学んで行こうか、オーフィス?実を言うと私も人間を辞めてしばらく経つせいか、クレアと暮らす様になって時間が経った今でも齟齬が生じるのさ。だから…共に学ぼう、オーフィス。」
私はオーフィスの頭を撫でながらそう言った。そうだ、時間はまだある…先ずは部屋に篭ってないで何処かに出かけてみようか…渦の団の連中が現れるかもしれんが、ここにいてもこいつに何も教えられない。問題が起きたらサーゼクスに後処理をさせるとして…さて、先ずは何処に行こうかな?