「…良く寝ている様だな。」
「……あんたはそれしか感想出て来ないだろうけど、こっちは結婚大変だったんだからね?」
カーテンを開けてみれば件のあいつはベッドの上で、穏やかな寝息を立てておりその横の椅子に黒歌が眠っていた…
「…お前のその皺だらけになったスーツと崩れた髪型を見れば色々あったのは想像が着く。」
「…にゃら、その一言で終わらせにゃいで欲しいにゃ。」
ベッドの上にいるそいつには表面上変わった所は無い…ただ、黒歌の方は完全に服装が乱れていた。
「…相当、壮絶だったんだろうな…すまなかった。」
「…あんたが分かってくれるにゃら私はそれでもう良いにゃ。」
「…で、こいつの様子はどうだったんだ?」
「…私とオーフィスが来た時にはもう起きてて…完全に取り乱してて…咄嗟に抱き締めて落ち着かせたにゃ。」
「…保険医はどうした?」
「いてもらったらかえって危にゃそうだったから、取り敢えず一旦強引に追い出したにゃ。」
「…その後、仙術で眠らせた、か?」
「興奮し過ぎてて…にゃかにゃか効かにゃかったけど…にゃんとか。」
「…一応聞くが保険医は女性だったか?」
「ん?…ああ、そういう事にゃ。女性ではあったにゃ…でも多分この子、保険医の人と面識がにゃかったんだと思うにゃ。」
……説明するまでも無く、こいつの状態を何となく把握してくれて助かるよ。
「…つまり、男性恐怖症に続いて初対面の人間も駄目だと…思った以上に深刻だな…」
「…自分の前にいるのが誰にゃのかも良く分かってない、みたいにゃ感じだったから落ち着けばそっちは大丈夫だと思う…でも…」
「男性恐怖症の方は駄目か?」
「多分…」
改めて自分の罪の重さを自覚させられるよ…
「…記憶は消せないのか?」
「…サーゼクスはにゃんか言ってた?」
「母親が来てから一言も喋ってな…いかん、忘れていた…もうあいつの母親は外に来てるんだ。」
「……早く入れてあげなさいよ。実の母親が来たんなら私たちの方が出て行くべきでしょ?」
「ああ、呼んで来る…」
私は保健室を出た。
「おまたせしま…何してるんだ、オーフィス?」
廊下に出てみれば屈んで泣いている母親の頭を撫でるオーフィスがいた。
「悲しそうな顔…してたから…」
「……」
こういう姿を見ていると思う…クレアに良く似ている、と…だが単なる模倣では無い…
「……」
今のオーフィスの目を見てると分かるのだ…ただ、クレアの真似をしているのでは無く、こいつは本当にこの女の事を心配しているのだと…
「…少し待っていてやるか。オーフィス、その女が落ち着いたら連れて来てくれ。」
「分かった。」
だから、そんなオーフィスに私はこの場を任せる気になった。