部屋のドアを閉める…む…?
「…テレーズが動かないな…戻ると言ったのは私を帰らせる口実だったか…」
とは言え、別に指摘しようとも思わん…この後また会いに行った所でどうせ私に出来る事は何も無いだろうからな…
玄関を歩く…リビングへ…
「…テレーズ大丈夫だった?」
声が聞こえて一瞬身構えるが、直ぐに警戒を解く…
「…脅かすな…お前も起きてたのか…?」
横を見れば黒歌が立っていた…良く考えたら声をかけられるまで気配を感じなかったな…私が気を抜いていたのもあるだろうが…こいつ自身が既にそれなりの領域にいるのを改めて実感し、戦慄した。
「…朱乃ちゃんに、ね…」
「あー…そうか…」
大抵、私がいないと一番に被害に遭うのは黒歌だったりする…何か安心する要素が…いや、あいつの嗜好の問題か…今でこそ黒歌はある程度受け容れているとは言え、何とも言えんな…
「…嫌なら嫌と言えば良いだろう「あんたがそれ言うにゃ?」……」
……私はもう諦めているからな、と言う言葉を飲み込んだ。
「私も結局は受け容れているけど…だからってあんたに言われたくないにゃ…」
「…分かったよ、私が悪かった…」
今更こんな事で言い争いをするのはめんどくさい…それも、こんな時間に。
「別に怒ってないにゃ…それよりテレーズは大丈夫だったにゃ?」
先の質問が繰り返される…そう言えば…
「何で知ってるんだ「聞かにゃくても分かるんじゃにゃい?」……」
そうか…こいつなら…
「……気配を探ったのか?」
「夜中にあんたがいにゃかったんだから探すのが普通じゃにゃい?」
「……ご最も。…悪かったよ。」
「部屋の直ぐ外にいただけだし、別に怒ってないにゃ…それでテレーズは大丈夫だったにゃ?」
「…お前の思ってる通りだよ、かなり深刻だ…」
「子どもの事?」
「ん?ああ…正直、私じゃ何も出来無いな。」
「…良いんじゃにゃい?変に余計な事を言ったり、やったりしたら間違い無く逆効果ににゃるにゃ。」
「…アザゼルの見立てを聞いてるが、とっくに産まれて来てても可笑しく無いそうだ…まあ、人間の子どもの妊娠から出産までの期間を考えたら早すぎるが…」
一般的に人間の子どもは妊娠してから出産まで十ヶ月前後かかると言われている…数日の誤差がある場合もあるが、大抵はそれぐらいなのだ…最も一ヶ月程度早まる早産のケースもあるが…あってもその程度だ…だが…
「あいつの妊娠が確認されてから、精々、数ヶ月程度だ…十ヶ月には程遠い…」
テレーズの腹にいる赤子は成長が早すぎる…間違い無く、人間として産まれる事は無いだろう…
「…焦ってるのね…」
「焦る?あいつがか?」
「…初めての事でしょ?誰だってそうなるわ。」
「そういう物か…そう言えばお前は妊娠するんだったか?」
「…一応、ね「私との子どもが欲しいと思ったりするか?」…正直、オフィーリアみたいに割り切れないにゃ…」
「ん?」
「…不安になるの…世間に受け容れて貰えるかどうか分からないから…だって同性同士から誕生する子よ?」
「…テレーズとオフィーリアの子どもの話はクレアが広めてしまったがな。」
聞いた面々は事情を全く知らない筈なのに好感触だった…まあ、私も実際にはどうやってやったのか、アザゼルに聞いたりはしてないが…
「でも…それを聞くって事はあんたは欲しいの?」
「さぁな。私も良く分からない…ただ、私は妊娠しない身体だからな…負担は大半がお前に行く事になる…その上でお前が良いなら私は構わない…」
「…あんたは別に欲しいって訳じゃにゃいのね?なら、私は良いにゃ。」
「そうか。」