「あの…大丈夫ですか…?」
「ん?…ああ、問題無い、気にするな。」
私の胸に斜めに走る一文字の傷…それを見て心配そうに話しかける木場に私はそう答えた。
最初に攻撃して来たのはデュランダルを持つゼノヴィアだった。予想より早いスピードで突っ込んで来るゼノヴィアを見てつい、気を抜いてしまっていた私はすぐに躱せないと判断、大剣で受け止めようとしたが、力任せに振り下ろされたゼノヴィアの剣は剣を持つ私の腕を勢いのまま下ろしてしまった。
ガードの崩れた私は追撃を防ぐ為、咄嗟にゼノヴィアの腹を蹴り飛ばした…加減出来ず、吹っ飛ぶゼノヴィアを見てヤバいと思い、追おうとしたら横から割り込む影が…そのまま私は木場に斬られた…恐ろしい事に硬い胸当ての部分ごと斬り裂かれた。
「…中々悪くなかったぞ?ただ、次は鎧の隙間を狙え。見ての通りまだ浅いんでな。」
出血こそしているが、実際はそう大した傷じゃない。
「…そんな顔するな、寧ろ私は嬉しかったんだぞ?お前が確かに成長しているのが分かったからな…まあその辺はゼノヴィアにも言える事だが…と、いかん。木場、私の事は良いからゼノヴィアを見に行ってくれないか?」
「え…?」
「実はさっきの蹴り、余り力を抜けなかったんだ…」
「え!?わっ、分かりました!」
「悪いな、私もこの傷を塞いだらすぐ向かう。」
私に背を向けてゼノヴィアの飛んで行った方へ慌てて向かう木場を見ながら私は妖力解放し傷を塞ぐ…さて…
「グレイフィア、一応アーシアを呼んでくれないか?」
「…そんなに酷いのかしら?」
「…もちろん全力で蹴った訳じゃないが、正直何とも言えん…最悪内臓破裂位は覚悟した方が良い。」
「……分かったわ。」
「すまんな、私は先に向かう。」
「……大丈夫か?」
「…はい、頑丈なのが私の取り柄ですから…」
行った先では木場に抱き起こされるゼノヴィアがいた。やれやれ…私とした事が…
「…痛むのか?」
「…いえ。」
そう言いつつもゼノヴィアは私が蹴ったと思われる箇所をずっと摩っている。
「無理するな、もうすぐグレイフィアがアーシアを連れてここに来る「いえ、違うんです…」ん?」
「私はあの時全力でした…ですがあっさり受け流されて「いや…何言ってるんだ?」え?」
何でそんな勘違いをする?
「さっきのお前が振り下ろした剣は私のガードを完全に崩した…言ってしまえば私の負けだよ。そして追撃を防ごうとしてな、つい、まともに蹴ってしまったんだ。」
「え?でも「お前からしたら受け流された気でいたのか?私は受け止めるつもりだったんだ…剣が下りたのはお前の膂力を私が止められなかったからだぞ?」…そっ、それじゃあ…!」
「その後に木場に手傷を負わされてるしな…チームとしてならお前らの勝ち…そうでなくてもお前は私を破っている。」
「そうですか…でも、まだそれなら勝ててないですね…私たちは貴女に本気を出させる事は出来無かった筈です…」
「あのなぁ…私が本気で蹴っていたらお前は間違い無く死んでいるからな?」
「…でも…私は本気の貴女と何れ戦ってみたいです…」
「……その内な。」
こいつ、私の"本気"がどういう意味なのか分かっているのだろうか…?まあ良い。今の所本気になる必要も無いからな、考えるのはそうなった時で良いか。