「ところでお茶でも飲んで行く?」
「……」
時計を見てそろそろ帰ろうと思っていた私にグレイフィアからそう声をかけられる…断ろうとしてふと気付く。
……実はクレアより長い付き合いのグレイフィアだが、こういう誘いを私にして来た事が今まであっただろうか、と。
当時、私のねぐらに勝手に押し掛けて来たのは記憶にあるが、比較的穏やかに話が出来る様になってからですら普通に誘われた事は無かったんじゃないだろうか?…ふむ。
「…何か、相談事か?」
「別に?他意は無いつもりだったけど?…でも、まぁ良いわ、それなら少し愚痴に付き合ってくれる?」
「分かったよ。」
「ここよ。」
「お前の部屋か?」
「そうよ…と言っても余り使ってないけど。」
グレモリー家の屋敷に入り、メイドたちに声かけしつつ歩いていたグレイフィアが部屋の前で止まり、鍵を使ってドアを開けた。
手で示されるまま中に入る。
「…使ってない割には綺麗にしてるな。」
「当然でしょ?私の立場を考えてみてよ…ま、整頓が行き届いてる、と言うより単に物が無いとも言えるけど。」
グレイフィアの部屋は小物も含めてほとんど物は無く、ベッドなどの最低限の物しか置かれていなかった。……多分趣味の物は大半が夫婦としての部屋にあるのだろう…と言ってもどっちみちこいつが場所を取るような物を置くとは考えにくいが。そんな事を考えながら私は部屋の奥に向かい、ベッド横にあった机の表面を指でなぞる。
「…埃も被ってない。使わない部屋の掃除を一々してるのか?無駄を嫌うお前らしくも無い。」
「…私にもあるのよ…一人になりたい時が…ここにはサーゼクスも入れた事無いわ…」
「そいつは光栄だ。」
グレイフィアは私とサーゼクスしかいない時、それから私と二人きりになると敬語は完全に消える…まぁ別に私が特別な訳じゃなくサーゼクスと二人きりになった時もそうなんだろうがな。
「お茶を入れるわ、座ってて。」
「……」
座れと言われても、この部屋に椅子は机の前に一つしか無く、グレモリー家の屋敷は西洋式なので基本土足だ…グレイフィアが掃除を怠ってないのはさっきので分かったが、さすがに床に座るのは昔ならまだしも、今の私では抵抗がある…仕方無く私は机の前にある椅子に腰掛けた。
「あら?椅子にしたの?」
「昔と違って西洋式の屋敷の床に座るのは抵抗があってね…」
「成程ね。」
そう言いながらグレイフィアが私にカップを渡し、机横にあったベッドに座るのを見ながらカップに口を付ける…っ…これは…
「お前…」
「あら?口に合わなかった?少しブランデーを足してみたんだけど…」
「……」
少しじゃない…温い紅茶に混ざる濃いめの味…これはかなりの量が入っている…ハァ…私はもう一度カップに口を付け、カップの中の温い紅茶を全て飲み干した。
「あら?お代わりはいる?」
「…ふぅ…紅茶はもう要らん…全く…回りくどい事しないで飲みたい気分ならはっきりそう言え。」
「…ごめんなさい…そうね、付き合ってくれる…?」
「長い付き合いだ、今更遠慮は要らんよ…何ならこの場にあいつら呼んでくれると助かるんだが?」
「…後でも良いかしら?先ずは貴女と飲みたい気分なのよ…」
「分かったよ。」