ミリアからの連絡は家に帰って少ししてから届いた。
「もしもし。」
『今、良いだろうか?』
「ああ、構わない。」
『話がしたい…今から会えないだろうか?』
「…それならオフィーリアも交えて話をした方が良いだろう…今度は落ち着いて話せるな?」
『ああ…すまなかった…』
「…因縁の相手なら仕方無いさ…これから言う場所に来てくれ。」
『分かった。何処に行けば良い?』
「お前たちは…!?」
話し合いの場をテレーズとオフィーリアの部屋に指定して部屋に入れた後、使っている魔術を解けば予想通り驚かれた…テレサとしての私がいる事も驚きの理由だろうが…何せテレーズと私は…顔はそっくりだからな…
「取り敢えず私たちの事について話してやろう…さて、何処から話すか…」
「観測世界からテレサの姿と半人半妖としての力を手に入れこの世界に来た、か…」
「信じられないか?」
「…そう言いたいが、少なくともテレサが二人いる時点で普通じゃない事が起きてるのは分かる…それで…」
「私の事かしら?」
「…何故お前は生きている…?」
「…生きている、と言って良いのかしらねぇ…少なくともあっちではちゃんと死んだと思うわよ?クレアに負けてね…」
「それで…何故ここに…?」
「分からない。」
「……ふざけているのか?」
「そんな事言われてもねぇ…分からないものは分からないのよ…それじゃ、聞くけど…貴女は何故ここにいるの?」
「……分からない、気が付いたらここに…」
「ほ~ら。私と大して変わらないじゃない」
「おい、あんまりからかうな。」
「別にからかって無いわよ、正論を言っただけ。 」
全くこいつは…!
「取り敢えずこいつはお前が思っているよりは丸くなっている…だがまあ…この通り性格が悪辣なのはあんま変わって無くてな…あまり気にしないで貰えるとこっちも助かる…」
「…納得は出来無いが、取り敢えず分かった…」
「で、話を続けるが…と、その前に…お前何処かの勢力に属しているか?」
「この世界で目を覚ましてすぐに堕天使のアザゼルを名乗る男に拾われた…他の二人と一緒にな。」
なるほど…だから最近何度か忙しいと愚痴の電話があいつから来るのか…ん?
「…アザゼルの事はよ~く知ってるが…二人?」
「ああ、私以外にヘレンとデネブの二人が…どうした?」
私は今、そうとう酷い顔をしているのだろうな…
「いや…お前がこの場に二人を連れて来なくて良かったと思っただけだ…」
「…私たちの事は本当に物語として読んだんだな…」
「ああ、不快に思うかも知れないが事実だから仕方無い…とにかく二人を連れて来なくて本当に良かった…」
「…なるほど。私はまだ納得出来無くも無いが、二人からは相当の反発が予想されるな…」
「…私もこれでも平和ボケし始めていてな…それは非常にめんどくさい…テレーズは今戦えんし…」
「さっきから思っていたんだが…テレ…テレーズのその腹は…」
「ああ、妊娠している…さっきも言ったがあいつの身体は純粋な半人半妖としての身体じゃなくてね…子供を宿す事が出来るのさ…ちなみに言い忘れていたがアザゼルの作った身体だ…」
「お前たちの事は…軽くアザゼルからは聞いていた…この世界に来たのもほんの数日前で会う場を整えるとの事だから詳しくは聞かなかったが…これ程複雑な事情だったとはな…安易に接触したのは間違いだったか…」
もっと複雑な事情もあるがな…
「あー…お前にはあまり関係の無い話だが、テレーズの子供はな「私との子よ!」チッ…テレーズ、ちゃんとそいつを抑えといてくれ…」
「無茶言うな、この身体だぞ?いくら今日は調子が良いとは言え、こいつが本格的に暴れ始めたら押さえ付けてなんていられるか。」
「ちょっと待ってくれ…どう言う事なんだ?」
「…言葉の通りだよ、この腹の中にいるのは…こいつと私の子だ…」
「そう言う事♪」
「……本当なのか?」
「詳しくは知らないが、アザゼルが何かしたらしい…少なくともオフィーリアは男体化したりはしてない…女性の身体だ…」
「聞きたいなら別に「「そんな生々しい話聞きたくない」」え~!?」
ミリアとハモってしまった…やれやれ…誰が他人の性事情を詳しく聞きたいと思うのか…
「アザゼルはあれでマッドなところがあるからな…ま、深くは気にしない方が良い…多少行き過ぎるところはあるが、付き合い方さえ間違わなければ良い奴だよ。」
「そう言う面倒な事を言わないでくれ…この後私はそいつのいるところに帰るんだぞ…」
「ちなみにあいつに何かされたりとかは?」
「…いや、今の所特には無い…寧ろ、私もヘレンもデネブも良くして貰っている…そう聞くと言う事は何かあるのか…?」
まぁ良いか…
「私とあいつは肉体関係がある。要するに半人半妖の身体に興奮出来る、と言う事だ…気にするかどうかはお前次第だ…誘われるかは別としてお前が嫌ならあいつは無理にはしないよ。」
「それは…そもそもどう言う経緯でそうなったんだ…?」
「…さて、成り行きの様なものかな…あいつとはそれなりに長い付き合いでね…」
「…なら、私たちは恐らく問題無いな。」
「ん?何がだ?」
「…推測になるが…アザゼルは半人半妖の身体が好きなのでは無く、お前が好きなんだろう…」
「お前までそう言うか…?」
「長い付き合いの辺りで…ほとんどの奴はそう予想すると私は思うがな。」
私は溜め息を吐いた…
「どうした?」
「いや…結局私が悪いのかも知れないが…好意を向けて来る相手が多くてな…」
「私たちの様な身体で抱くには贅沢な悩みだな。」
「そう思うか?」
「大いに思う。私たちの様な者はまともに男と恋愛など「いや、女性の方が多いんだ」…と言うと?」
「男性はアザゼルを含めて二人、後三人は女性なんだ…」
「ちなみに一時期私もその中にいたのよ♪」
「…テレーズ、話がややこしくなるから黙らせろ。」
「拒否する、面倒だからな。」
「……取り敢えずお前が見境が無いのは分かった。」
「そう言う納得の仕方は止めろ、全員私から手を出した事は無いんだ…」
セラフォルーの場合は微妙だが…向こうが求めて来たしな…
「受け身は勝手だが、その態度があまり続くようだと刺されるんじゃないか?」
「同感だな、寧ろこいつは一度はそうならないと分からないだろうと私は思っている…」
「だから…私から手を出した事は…「いや、確かに手は出して無いがどの例もお前の方が好かれる行動を積極的にしている…お前の中にいた私が断言してやる」……」
「言っておくが…これから先、そう言う誘いを断らない様ならまだまだ増えて行くぞ?」
「そう言うなよテレーズ…これ以上は増やす気は無いよ…」
「どうだかな…と、話が逸れたな。」
「…いや、聞きたい事は大体聞けた…アザゼルが後回しにしたのが良く分かったよ…相当にお前らの事情は複雑だ…」
「これから先、組織立って敵対する事は無いとは思うが…何せ既に和平も結んでるしな…だが、今はまだお互い大っぴらに会える間柄じゃないからな…本来ならば。」
「確かにな…取り敢えず今日の事はアザゼル「伝えた方が良いぞ?どうせ奴は知ってる」……監視か?」
「さてな、元々知れる筈の無い事を知っている事が多い奴ではあると言っておく。ま、そう警戒するな…堕天使総督は降りたとは言え…奴も立場、と言う物がある…監視を付けている可能性はあるがそれも仕方の無い事だ。」
サーゼクスが身内に極端に甘いだけだ…アザゼルも甘さは相当あるが、それ以上に甘い…
「分かった…ああは言ったが、正直今日は話せて良かった…では、これで失礼させて貰おう。」
「今度は回りくどい事をせず、プライベートで普通に会いに来い…実を言うと、お前に会わせたい奴ももう一人いる…」
私はこの世界に来てから出会った少女の顔を思い浮かべた…
「分かった、楽しみにしておこう。」