「テレサの友だちの人、もう帰っちゃったの?」
リビングにいたクレアに聞かれ、横にいた黒歌の方を見れば相変わらずアイコンタクトで答えが返って来た。
『あんた、そもそも自分が本当はどう言う存在なのかクレアにはちゃんと説明してないでしょう?そう言うしか無かったの…』
そう…私は未だに自分が半人半妖で、同じ種族たちがいる世界から来たと言う嘘(全部がそうでは無いが)は伝えても自分がそいつらとはまた別のところから来たと言う真実をクレアに伝えていない…アーシアにはもう言ってあるが。
「…友だち?」
そして何時帰って来たのか、リビングのソファで寝転がって…と言うか、ソファに座るクレアの太ももの上に頭を乗っけていた小猫がノロノロと身体を起こしながらそう呟く…そう言えばこいつにもまだ言ってなかったな…さて、どう答えるべきか…大体、別にミリアは友人じゃないんだが…そもそもあいつの事を下手に広げていいものか…こいつらが言い触らす事は無いだろうが、サーゼクスに伝わるのは不味い…
ミリアの言った通りなら、アザゼルは恐らく正式な場を設けて三人を紹介するつもりだろう…どうするか…
『何を悩んでるのか、想像はつくわよ?少なくとも二人は念を押せば誰にも言わないと思う…と言うか、まだ言わないつもりなの?白音はともかく、クレアとは私より長いでしょ?』
『まだ…早い気がするんだ…』
『早いも遅いも無いわよ…結局あんたが言うか言わないだけ…二人はそれで今更あんたに対して何かが変わる訳でも無いでしょうに…』
私はそこで黒歌を見るのを止めた。
「…ああ、ま、今度来た時に紹介するよ…あいつら、今はアザゼルのところにいてな…」
「え?アザゼルおじさんのところに?」
「そうだ…サーゼクスも同席した場で会ってからでないと会わせるのは難しいんだ…悪かったな…」
「ううん…分かった…また来てくれるんだよね?」
「ああ…」
多分、な…
「あの…それはどう言う…?」
…クレアはこの説明で黙るが、小猫は当然聞いてくるよな…仕方無い、か…
「小猫…ちょっとこっちに来てくれ…」
結局私の正体を教える以外に無い…まさか、今更になって教える事になるとはな…
「…それが貴女の正体ですか…?」
「ああ…」
小猫に全て伝えた…私が今の様になる前、男だった事以外は…と言うかコレに関して知ってるのはテレーズだけの筈だがな…
「姉様は…知ってたんですか?」
「ごめん…言うタイミングが無かったにゃ… 」
嘘だ。言うタイミングなら今まで何度もあった…と言うか、この様子だとはなから怪しんでいただろう…そもそもテレーズが私の中にいた別人格などと言う説明は会合の場でされたが…誰が聞いても怪しい…私たちの事を知れば知る程、そんな程度の関係では無いと気付く筈だ…
何にしても…さっき黒歌が言った通り全ては私が言うか言わないかそれに尽きる訳だ…私は庇ってくれた黒歌に内心謝罪しつつ、小猫の言葉を待った…
「じゃあテレーズさんは…」
「本来のテレサだ…恐らくはな。」
最も、本来はそれこそ居る筈の無い存在だが…
「…そう、ですか…分かりました。」
そう言って小猫が口を閉じる…ん?
「小猫…怒ってないのか…?」
「何を、ですか…?」
「それは…」
「…黙っていた事に関して思うところが無い訳じゃないです…それどころか、この家で知らないのが私とクレアちゃんだけだったと言う事も…でも…怒れません…私がテレサさんの立場だったら…多分、言えませんから…」
「そうか「だけど…許せない事なら一つあります」…何だ?」
「どうしてクレアちゃんに言ってあげないんですか?姉様より、ずっと前から一緒にいるんですよね?」
「ああ。付き合いは…本当に長いよ…」
「言わないんですか?」
「まだ…言うつもりは無い…」
「じゃあ、何時ですか?」
「何れは…言う…」
「……分かりました、じゃあ私からは今回の件についてはもう何も言わないです…それでその、今日来た友人の事ですけど…」
「お前の考えてる通りだ…友人じゃない…ただ、あいつがクレイモアであると言う事だ…」
「クレアちゃんが会って…大丈夫な人ですか…?」
「ああ、大丈夫だ。保証する…それとも私の言葉はもう信用出来無いか…?」
「…いえ、信じます…信じられないならいくら姉様がいるからって初めから同じ家に住んだりなんてしません…信じます。」
「そうか…それで今回の事は「言いません。クレアちゃんはもちろん…部長にも」…ありがとう。」
リアスに言えば…サーゼクスには言ってしまうだろうな…
「それじゃ私は戻ります…」
「ああ、先に部屋に入っててくれ。」
万一にもクレアに聞かれない為に、外で話していたんだが…私と違い、部屋着では小猫は少し寒そうだな…本当に悪い事をした…しかも私が黒歌と話そうとしてるのまで察するとはな…
私はドアを開けて部屋に入って行く小猫を見送った…