中に入りドアを閉めたところで、うっかりポケットから出すのを忘れていた携帯が鳴ったので取り出してみた。
「……アザゼル?」
出ようとして、思い留まった…ふむ。
「……」
私はドアを開けると再び外に出た。
「さて…」
しばらく待ってみたが電話は鳴り続けている…これは…やはり出なきゃならんか…
「…ねぇ?あんた何してるの?」
「!?…何だ、お前か…」
私の正面から声が響き、携帯を見詰めていた顔を上げると、黒歌が立っていた…何で最近のお前は一々気配を消して私に近付くんだ…嫌がらせ…いや…無意識なのか?
「……アザゼルから?」
「ああ「何で出ないの?と言うか…何で外に出たの?」…落ち着けよ。ミリアの事があるだろ?今日の事情を伝えていないクレアとアーシアに聞かれるのは不味い内容かと思っただけさ…」
……紛れも無く今の私は浮気を糾弾されている立場だな…と言うかお前はもう私がアザゼルと肉体関係がある事は知ってるだろうに。
「……出ないの?」
……部屋に戻ってろ、と言ってもどうせ聞かないんだろうな…ま、こいつには聞かれても良いか。私は携帯のボタンを押した。
「もしもし…」
『もしもし…テレサか?』
「…これは私の携帯だが?何だ?間違い電話か?」
『…いや…俺が今用があんのはお前だよ。』
冗談に乗って来ない、と。ふむ…なるほど。
「…それで?何か用なのか?」
『今日お前…誰かに会わなかったか?』
……妙な聞き方をするものだ。
「誰かとは?今日、私は休日で余暇を家族と人の多いところで過ごしたからな…誰とも知れない奴とそれなりの回数すれ違っているが?」
『……』
思った通りの答えが得られなかったからって黙り込むな…どんだけ余裕が無いんだ…
「はぁ…悪かったよ。ミリアだろ?会ったよ。」
『……お前ら以外に会った奴は?』
「顔を合わせたのは私とオフィーリアとテレーズだけだよ…黒歌たちには事情は伝えているがな…」
『セラフォルーにもか?』
「悪いが言ってある。どうせ後で悪魔側に正式に紹介するつもりだったんだろ?事情を知ってる奴がこっちにいた方がお前も楽だろう?」
『…ま、そうだがよ…』
「お前がそんなに責任を感じる必要は無いさ。ミリアはそもそも他人を使わず一人で組織相手にスパイ紛いの事をやってた様な女だ…お前が行動を縛れなくても仕方無い。」
『もっと早くに知りたかったぜ…』
「…それならせめて私には言っておくべきだったな。ま、今日の事は貸しにしといてやるさ。」
『おい、さっき責任がどうとかって…』
「悪いが私個人のスタンスとしては違ってね…ミリアはああやって行動力が有り過ぎる以外はお前が匿ってる他の女よりは遥かにまともな性格でね…もう私にもお前にも迷惑はかけないだろうさ。」
『なら、何で「ミリアは向こうでオフィーリアと揉めた事があってな…最も非はオフィーリアにあるが」…察したよ、何か悪かったな…』
「今言ったろう?貸しにしといてやる、と。」
『…あんまり面倒な事は頼まねぇでくれよ?』
「その言葉…覚えてはおくさ。まだ何を頼むかも考えて無いしな…で?話はそれだけか?」
『おう。今回はこれだけだ…全く最近忙しくてたまんねぇぜ…早くお前に癒して貰いてぇよ。』
「…暇が出来たら連絡しろ。愚痴くらいは付き合うさ『俺はお前の包容力に期待してんだぜ?』…気が向いたら相手してやるよ。」
『そう言って何だかんだ俺の頼み、何時も聞いてくれるよな?』
「…そろそろ切るぞ?」
『ん?おい、ちょっと待…』
私はボタンを押し、電話を切った。
「…これで良いのか?」
「…ま、良いわ…いい加減部屋に戻りましょう。」
「ああ、そうだな。」