『それで、本当にやるのかな?』
『じゃなきゃ、あいつらは納得しないさ…向こうで戦う必要が無くなったとは言え…あいつらは戦士だったんだ。剣すら大っぴらに持ち歩けず、平和ボケ…した様に見える世界に否応無しに送り込まれ、挙句監視されているかの様な生活…鬱憤も溜まるだろう…私も少しは気持ちは分かるからな…』
『勝てるのかい?』
『……お前には言っておこうか。はっきり言おう、自信は無い。』
『それ程の実力者であると?』
『人柄は比較的まともだ、警戒の必要はあまり無い…だが、単純な話…そもそも私との相性が非常に悪い。』
『と言うと?』
『ヘレンは攻撃型の戦士だ。半覚醒の影響で、手足が自在に伸びる…そして本来なら伸ばした毎に強度が弱まる筈だがそれもほぼ無い…並の覚醒者なら縛り上げて完全に動きを封じる事すら可能だ…デネブは防御型。同じく半覚醒しており、再生が極端に早い…時間さえかければ覚醒しかねない致命傷すら治る程にな…そして何より…』
『何より?』
『…二人とも激高しやすい割に戦い方は上手い。元々コンビを組む事も多く、公私共に仲の良い二人のコンビネーションは非常に厄介だ…何時もの様に挑発などしようものなら逆に私は不利になる。』
『一人ずつ戦うと言うのは…』
『無理だろ、正直奴らの内どちらとやっても、仮に私が無傷で勝ったとした所でもう一方と戦う元気は無い…日を改めた所で最悪…今回の繰り返しになりかねん…二人一遍にやるしか無い…オフィーリアが来てくれたらこんなに悩まないで済むんだがな…』
今回の一件をオフィーリアに伝え、一緒に戦わないかと聞いた所…
『面倒だからパス。』
…と言う返事が返って来た。丸くなったと言えば聞こえば良いが、こんな時に協力してくれんとはな…
『ふふふ…』
オフィーリアのことを考えていたらサーゼクスが吹き出した…
『…何を笑っている?笑い事じゃないんだぞ?私はどうやってあの二人とやり合って勝つか考えるので『気が付いて無いのかい?』…何をだ?』
『嫌なら断れない事も無いし、何も本気でやる必要など無い筈だ…でも君は本気で彼女たちと戦い、何より勝つ気でいる…それどころか…』
『何だ?』
『君は今、とても良い顔をしているよ。本当は楽しみなんだろう?彼女たちと本気でぶつかるのが。』
『…チッ…まぁ良い。場所は用意してくれるんだろう?』
『元々私にも落ち度はある様だし、その程度ならお安い御用さ…存分にやってくれて構わない。後の事は全て私に任せてくれ。』
『…頼もしいな。何時もそうだと楽なんだが『何時もはそうでは無いと?』…自分の普段の行いを鑑みて見るんだな。』
それだけ告げてサーゼクスに背を向け…おっと、忘れる所だった。
『サーゼクス?』
『ん?何かな?』
『外部の者は呼べるか?』
『…構わないが相手による…アザゼル以外に誰か?』
『ああ…』
「さて、こうして場をセッティングした訳だが…感想は?」
「狭いな…」
「同感。やりにくいったら無いぜ。」
「…仕方無いさ。この世界で勝手に道端で私闘など出来無いからな、ま、ここはこの通り余計な障害物は無く逃げる場所は無い。ここなら思いっきりぶつかれる。」
「…戦いが見世物か、ここでは。」
「そういう事だ…生憎やれるだけマシだと思って欲しい。こういう闘技場でさえコネが無ければ使えないんだからな…さて、そろそろ始めるか?審判はいないからな、このコインが地面に落ちた瞬間から始めよう…行くぞ?」
手に持っていたコインを親指で弾く…そこで目を閉じる…集中しろ、相手の妖気を感じ取れ…先ずは先手を取らないとこの二人を獲るのは難しい…そしてコインが地面に落ちた音がはっきりと私の耳に届いた…