「なぁキリト、またあの話聞かせてくれよ?」
「…良いけどさ、お前また寝坊するんじゃないか?」
「大丈夫だって。…多分。」
「…おばさん、もし明日ラティが寝坊したら弁当無しで。」
「ええ、分かったわ。」
「ちょ!?キリト、それは無いだろ!?」
「毎朝お前起こすの大変なんだよ。」
「キリトが朝早すぎるだけだろ!?」
「…ラティ?キリト君は貴方を起こす一時間前には起きて鍛錬しに行ってるの知ってる?」
「…えっ!?嘘だろ!?」
「おばさんが嘘つく理由無いだろ。俺はいつも鍛錬行ってからお前を起こしに来てるんだぞ?」
「……」
「…キリト君、夜食いる?」
「…お茶だけお願いします。入れてさえくれれば自分でやりますから。」
「そう?遠慮しなくて良いのよ?」
「大丈夫ですよ。それが終わったら先休んでくれれば良いですから。後は俺がやります。」
「…ありがとう。ほら、ラティもキリト君を見習いなさい。」
「えっ!?」
ここはラティの家。自警団としての仕事が終わったら大体、四人でここに集まって反省会という名のだべりをするのが一日の最後のルーチンだ。…で、良い時間になったら明日も早いしドーンとミリーの二人は自分の家に帰るのが普通だ。俺はと言えば…
「…はい、お茶。」
「ありがとうございます。…あっ、俺運ぶんで良いですよ。」
「…ありがとう。貴方は昔からいい子ね。」
苦笑いをする…この世界に来てから俺はラティのお袋さんと親父さんに世話になりっぱなしだ。昔から良くこの家に泊まりに来てた縁、というか自分の家もあってなんだかんだ身内のいた二人と違い、俺はある程度自分の事が出来るようになった今でも良くこの家で過ごす事が多い…そのおかげでこの人には昔から頭が上がらない。怒ると怖いしな……
「キリト君?」
「…はい!?何ですか!?」
「…余り夜更かししないようにね…?」
「…はい。」
……照れくさいけど俺にとっては三人目の母親みたいな人だ。
「…で、何処まで話したっけ?」
「…キリトが全ての元凶ヒースクリフの正体を暴いた所までだぜ。俺続き聞くのずっと楽しみにしてたんだよ!」
「…そうか、じゃあ続きを話すぞ、魔王ヒースクリフの正体を暴いた勇者キリトは……」
…俺はあの頃の事を良くおとぎ話としてラティに話している。…辛く思い出したく無いことも多いし、楽しくても人に話すには抵抗のある恥ずかしい出来事も今では客観的に見る事が出来るようなったから…
「…キリトは凄いよな…その英雄を目指してるんだろ?」
「…どうかな?確かに俺の剣技はその話に出て来るのを元にしたものだけど。」
目指すと言うか本人なんだけどな…ラティは俺の話を目を輝かせて聞いてくれる。娯楽が少ないせいもあるだろうが、この何時までも初々しい反応が嬉しくてつい、要らん事まで話してしまう。
「…そう言えば、キリトとアスナってその…そういう事してたのか?」
何を聞きたいかは分かる…だけどな…
「…どうだろうな…親父からはそんな話聞かされてないけど。…所詮おとぎ話だしな。」
「…そっか、そうだよな……」
……何時ものやり取りだ。そういうのがつい気になるお年頃ってか。
「…何かキリトって時々雰囲気がジジ臭いよな。」
「…失礼な。大人っぽいと言え。」
そんなこんなで夜は更ける。