あの子に初めて会ったのはもう十年以上前になる…。
あの人がこの町を彷徨いていたというあの子を保護したと言って家に連れて来た。
…当時私はあの子を見て首を傾げた。父親とはぐれたと言うあの子はどう見ても息子と同じぐらいにしか見えなかったけどまだ甘えたがりの息子と違い父親と離れ離れになったというのに戸惑いこそあれど特に悲しんだりする事も無く、理知の宿るその目は子供の目というよりまるで大人のそれだった。しかも彼は南門からクラトスの町に入って来たのをあの人が確認しているという…
……南門から先は海で町や村は無い。本人は海を渡った記憶は無いと言う。不自然ではあったけどどう見ても子供は子供。自力で父親を探すと言う彼を直に日も暮れるからと言って半ば強引に家に引き止め泊まらせた。
その日から自警団の仕事を休みあの人が彼の父親を探したけど何も手がかりは見つからなかった。クール村の先のメトークス山にも行ってみたらしいけど見つからなかったと。……メトークス山を越えれば更に町や村があるけど彼がこの町に現れた以上それほど遠くに行っているとはさすがに考えにくい…。
結論としてはどちらも最悪のパターンだが何らかの理由で亡くなったか、彼を捨てて何処かへ行った可能性が高い…。
前者はともかくどういう理由があれ子供を捨てるのは私は理解出来なかった。私たちの養子にならないかという誘いをやんわり断り彼は町の中にあった空き家に一人で住み始めた。
さすがに子供が一人では…と思い家に泊まらせたのが何度も思い出される…。最もキリト君は人に好かれるタイプの様で私たち以外にもこの町のほとんどの大人が彼の世話を焼いていた。…その度にあの子は苦笑いを浮かべていた。……一体何があったらこんな年端もいかない子供がこんな顔をするようになるのかと本気で心配した。…今思えばお節介だったかもしれない…。でも後にあの子はそれについて聞くと照れくさそうに笑いながらこう言った。
「俺はおばさんはもちろん、この町の人たちを誰一人鬱陶しく思った事は無いですよ。ここは俺にとってもう一つの故郷なんです。」
その言葉を証明するかのようにあの人が亡くなった後、あの子は息子と友人のドーン君と共にあの人の後を継いで自警団に所属した。
嬉しかった。それ程までこの町を好きでいてくれてることが。
「…こんばんは。今日もお世話になります…。」
「今更遠慮すんなよ、キリト。」
「そうよ、何時でも遊びにいらっしゃい。」
貴方は私にとって二人目の息子も同然だから…。